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臨床での疑問を研究に、研究の成果を臨床へ

小中 八郎(免疫内科 大学院1年)

私は大阪大学呼吸器・免疫内科の関連病院である大阪急性期・総合医療センターで初期・後期研修の5年間を過ごしました。後期研修の3年間は同センター免疫リウマチ科にてリウマチ・膠原病・アレルギーの専門的な研修を終了しました。その後大阪大学医学部付属病院免疫内科で1年間医員として勤務し、現在は熊ノ郷先生の下で大学院生活を送っています。

大学病院では入院患者の診療、他科からの診察依頼への対応、週1回の外来診療を行なっていました。忙しい日々ではありましたが、今振り返ると非常に充実した1年間だったと感じています。大学病院で働くことの最大の利点は、診断や治療だけにとどまらず基礎研究を通じた病態生理の解明にまで触れることができることにあると思います。私は大学病院で勤務するまでは臨床現場に興味が強く、病気や治療の「メカニズム」についてはそれほど深く考えてきませんでした。しかし大学病院勤務では、他の関連施設から集まった同世代の先生方や臨床・基礎の両分野において経験豊かなスタッフの先生方と、臨床的な知見・エビデンスのみならず「基礎免疫学的な観点」からも議論を重ね治療方針を決定していくという機会が非常に多く、臨床事実の背景にある基礎的なメカニズムを理解することが自身の視野を広げ、結果的に質の高い医療に結びつくということを実感しました。またそれと同時にこれまで漠然と抱えていた臨床現場における疑問点や問題点などを「自分の力で解決してみたい、取り組んでみたい」という気持ちも芽生えてきました。そうした気持ちを熊ノ郷先生へ伝え相談させていただいたところ、「臨床での問題点を研究に、研究の成果を臨床へ」という大阪大学呼吸器・免疫内科教室の話を伺うことができ、大学院進学を決意しました。

実験に関しては右も左もわからない完全な初心者で、当初は基本的な実験器具の使い方から学びました。慣れない環境に初めは戸惑いましたが、指導教官と大学院の上級生には懇切丁寧に指導していただき、現在では充実した大学院生活を送らせていただいています。また熊ノ郷教授は大変ご多忙にもかかわらず、大学院生全員に対して「毎月かつ個別」に直接ディスカッションする時間を設けて下さっており、随時細かい相談をすることができ、方向性を見失うことなく研究に取り組むことができています。

当研究室では同意が得られた通院患者さんの検体を検体バンクとして集積しています。また診療情報データベースの構築も進んでおり、それらを元にトランスレーショナルな研究を行うことができます。現在私も、当科で集積してきた臨床検体から得られた知見を元に基礎研究を行なっており、いつかは実臨床につなげられる研究に発展させることができればと考えています。

まだまだ大したことは出来ていませんが、臨床経験を踏まえた上での基礎研究というのは自身の動機が確固たる分、小さな発見にも大きな喜びを見出せ、やりがいを感じます。基礎研究に興味のある先生方はもちろんのこと、臨床現場で活躍されていた先生方にも是非当研究室に来ていただき、基礎と臨床の繋がりを体感していただければと思います。ともに仕事が出来る日を楽しみにしております。


それなら三内(免疫内科のこと)に来て神経内科をやればいいんじゃない?

辻本 考平(免疫内科 大学院1年)

免疫内科と神経内科で進路に迷っていた研修医の私は、熊ノ郷先生のその一言で免疫内科医として進むことを決意しました。その後、バリバリの京大系列として有名な北野病院で後期研修をさせて頂き、現在は大阪大学医学部の遺伝学教室(吉森研)にて大学院生活を送らせて頂いています。

このような経緯・経歴は普通の医局では到底ありえない事ではないかと思います。しかし、「やりたい事があれば全力で応援してもらえる」免疫内科ではそれほど珍しい事ではありません。東大から基礎研究がやりたくて単身大阪まで乗り込んできた人から完全に臨床志向の人まで、実に多様な同僚たちと刺激しあう毎日です。

私が今、オートファジーを専門とする基礎医学の教室で研究を行っています。そのきっかけは、数年前に免疫内科主催のスーパースター講演会で吉森先生がお話しされていたことでした。当時、内容は全く理解できませんでしたし、「なんかよく分からないけどすごい(気がする)」「なんとなく面白そう」くらいにしか感じていませんでしたが、分野を開拓されてきた超一流の研究者であられる吉森先生の雰囲気に、言いようのない憧れを感じたのだけは覚えていました。そこで大学院生として研究生活を始めるにあたり、熊ノ郷先生にも背中を押して頂く形で吉森研での研究をはじめることとなりました。

オートファジーは2016年に大隅先生がノーベル賞を受賞された事で記憶されている方も多いと思います。かつては単なる飢餓をしのぐための機構と思われていましたが、その後、不良タンパク質の分解や傷ついたミトコンドリアなどのオルガネラの分解を介して細胞内の品質維持に大きな役割を果たしている事がわかり、疾患との関連に大きな注目が集まっているHOTな研究領域です。教授の吉森先生は大隅先生らと共にこの分野を開拓されてきた第一人者であり、そのため普通のラボでは考えられないような恵まれた(恐らく世界最高水準の環境と言っても過言ではない)環境で研究させていただいています。MDだけではなく将来の基礎研究者の卵であるPhDの学生らと切磋琢磨する環境は非常に厳しい反面、刺激になっています。

吉森研に在籍しながらも(免疫内科では修行と呼ばれます)、病棟のカンファレンスや病院での外来を通じて臨床的な視点を養うトレーニングもさせていただいております。研究面としても免疫内科側のメンターの先生との随時のディスカッションや月に一回の熊ノ郷先生とのディスカッションも通じて、免疫内科からのアドバイスも受けられる恵まれた環境にいます。

未だに謎だらけのオートファジーの世界。まだまだ新たな治療法の確立が急務な免疫疾患。基礎医学教室の大学院生として、また臨床医学教室に所属する大学院生として両者の架け橋になれるよう日々研究に明け暮れています。


育児と研究の両立、女性医師の立場から

二見 悠(呼吸器内科 大学院2年)

私は初期研修終了後、呼吸器内科医として4年間臨床の場で経験を積んだ後、当教室の大学院に入学させて頂きました。短い臨床経験の中でも医学の進歩を感じながら、現在の医学では手に負えない病態、治癒を見込めない疾患が存在することを痛感しました。特に小細胞肺癌の治療については数十年前から標準治療が変わっていないというのが現状です。治療が一旦は劇的に奏功するにも関わらず、短期間で再発してしまう原因は何なのだろうか、何かを今の治療にプラスすればもっと予後が良くなるのではないだろうか、などという疑問がちらついていました。もともと基礎研究にとても興味があったわけではない私でしたが、熊ノ郷教授にお声をかけて頂き、一度違った視点から疾患を見るのも今後の医師としての生き方に役立つのではないかと考え大学院への進学を決意しました。そして、ありがたい事に興味のあった小細胞肺癌に関わる研究をさせて頂いております。入学当初、右も左もわからず初期研修医に戻ったような気持ちでしたが、指導医の先生や先輩方が丁寧に教えてくださったのは本当にありがたい事でした。教室内には呼吸器疾患、免疫疾患に関する様々なテーマを研究しているグループが混在しておりますが、全体を通じてオープンでアットホームな雰囲気ですので、質問や相談、ディスカッションのしやすい環境です。また実験機材なども十分に揃っており恵まれた環境で研究ができます。

現在、大学院2年目となり出産・産休を経て育児と研究の両立を目指し奮闘しているところです。女性医師としてのキャリアにもご配慮くださる熊ノ郷教授をはじめ、指導医の先生、研究室の先輩・後輩の先生方のご理解・ご協力、そして家族のサポートのおかげで、充実した毎日を過ごす事が出来ています。このような環境に身を置いて研究できる事に感謝しながら、医師として母としてステップアップできるよう日々励んでいます。これから大学院進学を考えておられる女性医師の方々に何か伝えられるような経験を積んでいく事ができればと思います。


世界トップレベル国際研究拠点での研究

川﨑 貴裕(免疫内科 大学院2年)

リウマチ性疾患は、他の領域に比べ診療の指針となる情報に乏しく、治療の手立ても限られることが多いですが、同時に関節リウマチに代表されるように基礎研究の成果が臨床現場に応用されて近年活況を呈している分野でもあります。私は初期臨床研修の終わりにトシリズマブで有名な阪大免疫内科に入局し、後期研修を経て大学院に進学しました。当教室には多くの大学院生が在籍していますが、教室内だけでなく外部の世界トップクラスの基礎研究室で研究されている方も多数います。私自身は、自然免疫学の第一人者である審良静男先生の研究室(大阪大学免疫学フロンティア研究センター;IFReC)へ修行に派遣していただきました。IFReCは国の世界トップレベル国際研究拠点(WPI)に採択されて発足した世界最高水準の研究機関です。審良拠点長をはじめとして岸本忠三先生、坂口志文先生など名だたる先生方が所属されています。外国人研究者が多く在籍し、英語のセミナーも頻繁に開催されているのも特色の一つです。私が属するグループでは、疾患モデルにおいてノックアウトマウスを用いた病態の解明、治療法の開発を目指しています。研究費や設備面で恵まれた環境のもと、学生や企業からの共同研究員など様々な背景をもつメンバーが集まっており、日々研究に励んでいます。先輩方の常に一流誌を目指して挑戦し続ける姿勢にはすさまじいものがあり、一般的な臨床系の研究室とは少し異なる雰囲気かもしれません。私自身はプロジェクトが始まったばかりですが、何か少しでも世の中のためになる成果が出せることを夢見て、これからも頑張っていきたいです。


臨床と研究の融合した刺激的な環境です

菅 泰彦(呼吸器内科 大学院2年)

私は名古屋大学を卒業後、地元の関西に戻り、市立伊丹病院で初期研修2年間を終え、その後呼吸器内科医として伊丹病院に残り3年間の後期研修を終えました。市民病院での後期研修では、一般内科として救急外来など急性期疾患に携わらせて頂くとともに、呼吸器疾患も喘息やCOPD、SAS、感染症、間質性肺炎や腫瘍等幅広く全般に診療を行わせていただきました。日々充実し、多くの臨床経験を積むことが出来、自分の医師としての原点となっており、お世話になった事を感謝しています。初期後期研修の診療を通し、腫瘍、膠原病などに合併する間質性肺炎、希少疾患等にも興味を持ち、医師6年目からより幅広い疾患や希少疾患と向き合える大阪大学医学部付属病院呼吸器・免疫内科へ移りました。

大阪大学呼吸器・免疫内科では、多くの呼吸器・免疫疾患専門医と活発な議論をする機会があり、深い知識を学ぶ機会が多い環境といえます。毎週月曜日・金曜日の臨床カンファレンスでは病棟の患者様一人一人に対し、呼吸器内科医で診断・治療に関し活発に検討し、意見が飛び交います。月曜日には呼吸器外科・放射線科医との合同カンファレンス、金曜日には免疫内科との合同カンファレンスもあります。月曜日・木曜日の気管支鏡検査では、スイッチオブリーク法なども駆使し診断確率の向上に努めるなど、日々知識・技術のupdateを目指している、学びのある環境といえます。

大学病院で1年間の病棟を担当した後は、医学系研究科の大学院へ進学するか、本人の希望があれば大学病院の病棟業務を継続し臨床の研究などより深く臨床と関わっていくことや、市中病院へ戻ることも自由で可能です。私は腫瘍の研究に興味を持ち、大学院を選択しました。大学院では基本的な実験器具の使い方や実験mindの初歩から、優しい指導教官と大学院の上級生に丁寧に教えていただき、大変感謝しています。

大阪大学呼吸器・免疫内科は、その長い歴史の中で、常に臨床と基礎研究の結びつきを非常に重視してきた教室です。そのため、日々の臨床での知見を研究の糸口にし、研究の成果を臨床に生かす事を念頭・目標に、両方の観点を大事に切磋琢磨しながら臨床・研究が行われており、研究室は常に熱気に溢れています。呼吸器グループ、免疫グループ、癌免疫グループ、感染病態グループがあり、医学部だけでなく、様々な学部から人も集まっていますが、とても仲良く一緒に議論する機会も多く、勉強になります。熊ノ郷教授は、医局員をとても大切にされる教授です。大変御多忙の中、大学院生全員に対して毎月、個別に面談・議論する時間を設けて下さいます。研究の問題点・改善点を相談でき、軌道修正を出来る貴重な時間を持つことができます。実験機器も充実しています。また、勉強会や講演会も豊富にあります。世界的に有名な研究者を招いての講演会では、一流の方の凄まじいエネルギーを、直接身に受けることが出来て刺激になりますし、研究の視野を広げるこの上ない貴重な機会にもなっています。私が申すのも恐縮ではあるのですが、本当にこれ以上ない恵まれた環境だと思います。日々充実して過ごさせて頂き、感謝しております。熊ノ郷教授は人と人の繋がりを大切にされて一人一人と真剣に向き合ってくださり、本当に恵まれています。本人のやる気次第でいくらでも、無限の可能性がある教室だと思います。百聞は一見に如かず、興味がある方は是非一度見学に訪れてほしいです。


大きな人の輪

長 彰翁(呼吸器内科 大学院3年)

私は平成20年に大阪大学医学部を卒業し、大阪大学医学部附属病院で初期臨床研修医として2年、その後、市立豊中病院で後期臨床研修医として2年、呼吸器専門病院である大阪はびきの医療センターで医員として2年勤務した後、平成26年に大学に戻りました。大学の呼吸器内科で1年間の病棟勤務の後、平成27年に大学院へ進学しております。

私自身は呼吸器内科医であり、臨床の場で担当患者の診療にあたり、元気に退院していく姿や通院してくる姿を見て、主治医として患者と直接関わっていく日常診療にやりがいを感じておりました。その反面、全力で治療に取り組んだにも関わらず、肺癌や間質性肺炎といった難病を持つ担当患者の病状を改善させることができず、無力感を感じることもありました。呼吸器疾患は治療により完治しない疾患が多く、特に肺癌は治療の進歩にも関わらず、未だに予後不良の疾患となっております。呼吸器学、特に肺癌領域の研究を行い、その研究成果が新たな治療の発見の一助となり、患者の予後や症状の改善に少しでもつながればと思い、大学院への進学を決めました。

大学院へ進学した直後は右も左も分からない状態でしたが、指導教官や大学院諸先輩方の丁寧な優しい指導により、ストレスなく研究を進めることができました(結果が思うように出ず、ストレスがたまることはもちろんありますが、、、)。現在、肺癌の領域では抗PD-1抗体治療をはじめとした、癌免疫療法が非常に注目されており、私も大学院入学前から肺癌の免疫療法に興味があり、その領域の研究をしたいと考えておりました。幸運なことに大阪大学での私の所属科は呼吸器・免疫内科であり、呼吸器内科の優秀な指導教官だけでなく、熊ノ郷教授をはじめとした一流の免疫学者にも指導していただける環境にあります。また、熊ノ郷教授は非常にお忙しい中でも、全ての大学院生と月に1回、研究ミーティングの時間を個別にとってくださり、非常に恵まれた環境の中で研究生活を送ることができております。

教室主催のセミナーでは世界的に有名な研究者の講演を多数聞くことができ、最先端の研究、超一流の研究者の生の声に触れ、研究に対する視野を広げるチャンスもあります。大学に戻って一番良かった点は、現在大学に所属する同年代の医師が非常に多く、大きな人の輪を作ることができているのと、良きライバルと切磋琢磨しながら、楽しく研究を進めていることです。このように非常に恵まれた環境を用意していただいている熊ノ郷教授をはじめとし、指導教官の先生方や諸先輩方に感謝し、日々研究に励んでおります。


大学院生活は充実しています

仲谷 健史(呼吸器内科 大学院3年)

こんにちは。今年で医師11年目になる呼吸器内科の仲谷と申します。このページを見ている方は、これからこの呼吸器・免疫内科の研究室に来て研究する予定、あるいは考慮している人、臨床でやっていくつもりだが、研究の事が少し頭をよぎった人が多いかもしれません。そのような方々に向けて、今回は私がどのような経緯でこの研究室に来て、実際にどのような研究生活を送っているのかご紹介したいと思います。

私は初期研修、後期研修の5年間を大阪警察病院で過ごし、その後、間質性肺炎や希少疾患、結核診療を学ぶために堺にある近畿中央胸部疾患センターで2年間過ごしました。7年臨床現場で働くにつれ、日常臨床の診療は徐々に洗練されていきましたが、最初の頃のような日々新しいものに触れ、刺激を受けていた時間が少し減り、日々の日常業務をこなしていくような時間が増えたような感じを受けていました。そうした中で、全くこれまで触れたことがない研究の世界に一度触れてみようと思い、大学院に入学いたしました。

私は、大学生時代の基礎配属で研究の機会を与えていただきながら、真面目に取り組まなかったために、大学院に入学して初めてピペットを握るという、超ど素人の状態で研究生活がスタートしました。しかし、この研究室には、親切に指導してくださる指導教官や、上級生の方々がいらっしゃるので、多くの人に支えられ、今ではそれなりに実験ができるようになりました。また、気の合う同級生や後輩たちに囲まれ、楽しい研究生活が送れています。さらに熊ノ郷教授も気さくでフランクな先生なので、教室の雰囲気もかなり良いです。

大学院では、忙しい日常診療ではなかなかできなかった、じっくり腰を据えて、物事を考えるということができ、また研究に触れることによって、日常臨床においても違った側面で見ることができるようになるといったメリットがあると思います。

現在臨床をやっているけども、研究の事が少しでも頭をよぎった先生は、ぜひ研究に触れてみてはどうでしょうか。私は大学院に入学して研究に触れ、充実した日々を過ごしています。