免疫内科研究

免疫内科研究概要

セマフォリンの分子機構の解明と疾患における病態解析

Semaphorin分子の免疫系での作用、そしてヒトの疾患(関節リウマチ、血管炎症候群)の病態における役割を明らかにしてきた。さらに詳細なメカニズムの解明と、他の疾患の病態におけるSemaphorinの関与を解析する研究を行っている。これらを明らかにすることにより、疾患の病態の分子機構についての理解のみならず、診断や重症度との関連さらには新たな治療法の探索へとつながることを期待している。

新規の自己抗体の探索・同定とそれを基にした病態の解明

特発性(原因が不明)とされてきた間質性肺炎の一部にIFNγ関連分子に対する自己抗体(抗MX1抗体)が存在することを明らかにした。これによって自己抗体陽性型の間質性肺炎の新たなentitiyを考察することができ、病型の診断や予後の予測に有用である可能性がある。またベーチェット病において細胞接着に関わる分子に対する抗体の存在が見出された。皮膚や粘膜の病変が難治となりやすい本疾患において、病態との関連に興味が持たれる。このように新規の自己抗体の探索と同定は今もってさまざまな病態で解析でき、病態の理解や診断、予後予測に有用であることが期待される。さらに抗原分子の提示機構について検討を進めている。

SLEにおけるインターフェロン

SLEの病態におけるⅠ型インターフェロン(とくにIFNα)の役割は重要である(血中IFNα濃度上昇、IFN誘導遺伝子高発現、IFNα製剤の副作用としてのSLE様病態、Interferon regulatory factor5遺伝子多型など)。IFNα産生に関わる分子機構について解析を行い、薬剤などによる制御の可能性について検討を行う。

ヒト疾患における自然免疫の活性化と関与

組織障害や病原体に由来する分子(DAMPS、PAMPS)の刺激による自然免疫機構の活性化について、とくに自然免疫機構の関与が大きいと思われる疾患(ベーチェト病など)および病態に焦点をあて、症状の変化、治療経過、検体の解析を含めた検討を行う。

ヒト型抗IL-6受容体抗体の難治性疾患に対する有効性の検証

Interleukin-6の発見、シグナル伝達の解明、Il-6と疾患との関連の研究を基盤として、ヒト型抗IL-6受容体抗体製剤(Tocilizumab)を開発し、関節リウマチを含む複数の疾患で治療薬として広く使用されるに至った。未だ有効な治療法がない難治性の免疫疾患に対する本製剤の有効性を検証するための臨床研究(臨床試験)を継続する。

関節リウマチにおける基礎的・臨床的研究

発症や増悪の要因、自己抗体産生の機序についての基礎的研究を進める。臨床面では個々の患者で最適となる治療を選択し確実に寛解を目指す個別化治療(オーダメード医療)の構築が課題である。当科ならびに大阪大学整形外科、理化学研究所、京都大学、神戸大学、大阪医科大学、関西医科大学、奈良県立医科大学などとの共同研究を進め、最適化医療の構築、発症や再発の予防へむけた基礎的・臨床的研究を進める。

腸管フローラと腸管免疫・自己免疫疾患の関連

腸内細菌叢の存在と腸管免疫、さらに腸内環境が及ぼす体全体の免疫系・内分泌系への影響が注目されている。関節リウマチ患者において特定の腸内細菌が増加していること、そしてそれらが実験的に関節炎を誘導できることを示した。今後さらに、ヒトでの発症や疾患の増悪に関与するか否か、予防や治療目的での腸内細菌叢への介入が有効か否かなど、検討すべき課題である。

自己免疫疾患・膠原病の病態における制御性T細胞の関与

制御性T細胞の変化が免疫系の調整に重要な役割を果たしていることから、実際の疾患における制御性T細胞の量的・質的変化について解析を進める。臨床検体を用いた解析を行うとともに、これまでに広く行われてきた研究結果をmeta-analysis的手法を用いて解析し実験結果との統合を行う。

γグロブリン療法における標的分子の解析

大量γグロブリン療法は川崎病や血管炎において臨床的に有用とされている。この際に標的となりうる分子のスクリーニングを進め、その分子の動態を解析する。またそれら特定の分子に対する特異的治療が効果を有するか否かを検証し、大量γグロブリン療法における分子機構の解明を行う。

関節炎における破骨細胞の動態

破骨前駆細胞、破骨細胞の分化や活性化を、動的な観察法を用いて検証する。とくに関節リウマチの治療において骨破壊を抑制することが明らかとなった生物学的製剤のこれらの細胞へ与える影響について興味が持たれる。

SLEの患者QOLについての研究

オートファジーに関わる研究

アミノ酸センサーと免疫系の関連