初期研修
大阪大学医学部附属病院初期臨床研修プログラムは大阪大学コース(2年間阪大病院)、協力型研修病院・大阪大学コース(1年目市中病院、2年目阪大病院)、小児科重点コース、産科婦人科重点コースの4プログラムを設けています。初期臨床研修プログラムでは呼吸器内科、免疫内科をローテーションされることをお勧めします。
大阪大学医学部附属病院における呼吸器内科初期研修
Ⅰ.研修目的
医師としての必要な呼吸器領域の基礎的研修目的を修得する。
Ⅱ.教育(研修)課程
- 一般教育目標(General Instructional Objectives:GIOs)
- 緊急対応を要する呼吸器疾患の初期診療に関する基本的臨床能力を身につける。
- 主要な呼吸器疾患の診断、治療、生活指導ができるための基本的な知識、技術、態度を修得する。
- 個別的、具体的行動目標(Specific Behavioral Objectives:SBOs)
- 肺および呼吸の形態、機能、病態生理を理解する。
- 病歴および胸部理学的所見を的確にとり、記録できる。
- 呼吸器疾患の診断に必要な検査計画をたて、実施できる。
- 必要に応じて動脈血ガス分析を実施し、結果を解明できる。
- 以下の検査を適切に選択・指示し結果を解釈できる。
- 痰採取法と検査法:細胞診、細菌学的検査
- 血液一般検査および生化学
- 免疫学的検査(皮膚反応検査を含む)
- ウイルス学的検査
- 胸部X線診断法:単純撮影、肺血管造影、肺CT
- 核医学的診断法:肺血流スキャン、骨シンチ、FDG-PET
- 肺機能検査(含血液ガス分析)
- 気管支鏡検査
- 肺生検(経気管支的、経皮的)
- 以下の治療法についてその適応を決定し実施できる。
- 薬物療法:気管支拡張剤、鎮咳、去痰薬、ステロイド剤、抗生物質、抗癌剤
- 酸素療法
- 吸入療法
- 放射線療法(合同カンファレンスにて検討のうえで)
- 以下の治療法について指導医の指導のもとにその適応を決定し実施あるいは介助できる。
- 人工呼吸(侵襲的、非侵襲的、nasal CPAP)
- 体位ドレナージ
- 気管内挿管
- 胸腔ドレナージ
- 下記の呼吸器疾患の典型例の理解ができる。
- 呼吸器感染症
- 肺癌
- COPD
- 気管支喘息
- びまん性肺疾患(間質性肺炎など)
- サルコイドーシス
- 気管支拡張症
- 胸水貯留
- 縦隔腫瘍
- 教育に関する行事
- オリエンテーション:研修の最初に病棟の諸規則、施設設備の概要と利用法、制度などについて、一連のオリエンテーションがある。
- レクチャー:研修期間中に、指導医から、主要呼吸器疾患の診断方法、治療法についてのレクチャーが随時ある。
- 症例検討会・病棟回診:毎週金曜日の午後に呼吸器内科入院中の症例について検討会を行っており、受け持ち症例のプレゼンテーションを行う。その後、教授による病棟回診がある。
- 勉強会、抄読会:毎週金曜日の午後に、呼吸器領域の勉強会、抄読会を行っている。
- 肺癌、呼吸不全検討会:毎週月曜日の午後6時30分より、呼吸器内科、呼吸器外科、放射線診断科、放射線治療科による合同カンファレンスを行っている。
Ⅲ.診療科の特徴
呼吸器疾患は、多種多様な病態からなっている。腫瘍性疾患(肺癌、中皮腫、縦隔腫瘍など)、感染性疾患(細菌、真菌、抗酸菌など)、COPD、アレルギー性疾患、間質性肺炎などが主な病態であるが、その他にも全身疾患の一部として現れるもの(膠原病、サルコイドーシスなど)があり、全身を診る視点が重要である。また、疾患の経過も急性疾患から慢性疾患まで幅広く、時間的多様性を理解する視点も必要である。尚、これらの疾患は、今後ますます増加すると予想されており、呼吸器内科医の社会的需要は増える一方であることも特徴として挙げられる。
大阪大学医学部附属病院における免疫内科初期研修
Ⅰ. 研修目的
免疫内科では免疫システムの破綻を病態の中心に捉える。肺、血液、腎臓、関節、皮膚、筋肉など免疫疾患によって冒される臓器は多岐にわたるため、常に多臓器全体に横断的に注意を払い、問診、診察、血液検査、画像検査、治療経過において“全身をしっかり診る”ことを意識して研修していく。これは内科の大切な基本姿勢であり、医師としての人生で特に重要な初期研修の時期に、しっかり身につけなければならない姿勢である。
Ⅱ. 研修内容
- 一般教育目標
- 各種免疫疾患(自己免疫疾患、リウマチ性疾患、膠原病、アレルギー疾患、免疫不全症)、免疫抑制状態での感染症について、各々の疾患、診断法、活動性評価、治療戦略を修得する。
- 個別的、具体的行動目標
- 関節評価、皮膚、筋力評価や神経学的所見を含めた身体評価と日常生活動性評価を行う。
- 血液、生化学、尿、免疫などの各種検査の意義を理解し適切な評価ができる。
- 胸・腹部、骨、関節レントゲン、胸腹部CT、関節エコー像を読影する。
- 腎、皮膚、唾液腺、筋生検に立ち会い、指導医の下での介助・検査の施行を行う。
- 予期しない発熱に対し対応策がとれる。
- 間質性肺炎患者の対応策がとれる。
- 気管支喘息発作、アナフィラキシーショックなどアレルギー急性期への対応策がとれる。
- 病像に応じた感染症を想起し、抗菌剤の使用手順を体得する。
- 不明熱の診断への手順をたてられる。
- ステロイド、免疫抑制剤、生物学的製剤の適応、副作用の知識と対策をたてられる。
- Universal Precaution がとれる。
- HIV 陽性等感染症患者への対応と配慮がとれる。
- 教育に関する行事
- オリエンテーション:研修最初に設備概要と利用法の説明、針刺し事故等事故発生時の対応方法、有感染因子の標記についてのオリエンテーションがある。
- レクチャー:関節の診察法とその記載法。腎・皮膚・唾液腺・筋生検が行われた際には病理組織の見方、重要論文の検索や論文読解の仕方など。
- 病棟回診:ジュニア、シニアライターとともに病棟患者を回診し、具体的指示を受ける。
- 症例検討:毎水曜日、全症例について教室員と検討会を行い、その後科長回診を共にする。
- 論文抄読会:週2回、臨床免疫と基礎免疫の論文を解説している。
- 指導体制
- ジュニアライターに直接の指導を受けるが、全体を統括するシニアライターとともに定期的に鑑別や治療方針を議論する。週一回の全教室員によるカンファで方針を確認する。
Ⅲ. 診療科の特徴
生体防御機構である免疫システムの異常に基づく疾患を診療対象とし、自己を攻撃する自己免疫疾患、炎症が持続する炎症性疾患、過剰応答によるアレルギー疾患、減弱による免疫不全症に分けられる。自己免疫疾患の中では全身性自己免疫疾患を主に診療対象とし、慢性炎症性疾患は血管炎症候群やベーチェット病など、アレルギー疾患では、気管支喘息、好酸球増多症など、免疫不全症では先天性や後天性免疫不全症などを診療している。免疫疾患は多関節痛などの全身症状を併発することが多く臨床的には「リウマチ性疾患」、炎症性変化から病理学的には「膠原病」とも呼ばれる。多くの全身性自己免疫疾患は、厚生労働省の難病特定疾患に指定され、専門性の高い診療分野でもある。病院ではシャーロック・ホームズのように活躍し、最終的に免疫疾患の診断に至ることも多い。
免疫システムの異常では単一臓器ではなく体全体を診療して確定診断を下す。若いSLEから高齢のリウマチ性疾患まで、急性期から慢性期まで、患者の人生に寄り添う診療を行なうことが特徴である。免疫学の進歩により免疫を制御する治療薬が登場し、良い治療結果が得られることが多いため医師としての充実感が得られるだろう。