大阪大学大学院医学系研究科
呼吸器・免疫内科学
Department of Respiratory Medicine and Clinical Immunology, Graduate School of Medicine, Osaka University
2005年 | 大阪大学医学部医学科卒業 |
---|---|
2007年 | 市立堺病院初期臨床研修修了 |
2009年 | 市立堺病院後期臨床研修修了 |
2010年 | 市立堺病院呼吸器内科医員 |
2012年 | 大阪大学医学部附属病院呼吸器内科医員 |
2017年 | 大阪大学大学院医学系研究科医学専攻博士課程修了(神経遺伝子学講座) |
2017年 | 大阪大学医学部附属病院呼吸器センター特任助教(常勤) |
2018年 | 大阪大学大学院医学系研究科 総合地域医療学寄付講座 特任助教(常勤) |
2019年 | 大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学講座 助教 |
2020年 | 大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫内科学講座 助教 学内講師 |
日本内科学会、日本呼吸器学会、日本呼吸器内視鏡学会、日本肺癌学会、日本アレルギー学会、日本臨床腫瘍学会、日本分子生物学会、日本移植学会、日本レーザー医学会
2005年に医師免許取得後、初期臨床研修・後期臨床研修ともに市立堺病院で、総合診療を重視した熱心な臨床研修を受けました。2010年以降は呼吸器内科を専門とした診療に従事しております。
市立堺病院で勤務中には多くの肺癌患者さんの死に接し、既存の抗癌剤治療の限界を感じました。一方で、当時使われ始めていた分子標的薬の劇的な効果を目の当たりにし、癌の分子メカニズムを研究することの重要さを痛感しました。一方で2011年(卒後7年目)にオブリーク法という新しいCT画像解析技術を確立し、新しい技術を開発する面白さを経験させていただきました。
このように臨床現場で感じた疑問・課題を解決する手段として研究を行いたいと考えるようになりました。そして2011年に入局、2012年より大学に在籍し、臨床・基礎の両面で研究・技術開発を行ってまいりました。
2012年は医学部附属病院で診療に従事する傍ら、基礎的な実験技術のトレーニングを受けました。2013年から2016年の間は神経遺伝子学教室において、RNA研究で御高名な河原行郎教授のご指導の下でA-to-I RNA編集の生理的意義について研究を行いました (Kotaro Miyake et al. Cell Reports (2016))。
2017年からは呼吸器・免疫内科学講座に戻り、RNA修飾と疾患の関係について研究を行っております。特に注目したのは、癌細胞ではRNA修飾酵素にホットスポット変異が存在することです。2023年には、RNAメチル化酵素METTL14のR298P変異がm6A修飾モチーフの変化を引き起こし、癌細胞の増殖に複雑な影響を与えることを明らかにしました (Kotaro Miyake et al. Cell Reports (2023))。
これらの研究においては、ゲノム編集技術・RNA・タンパク質・トランスジェニックマウス・RIなどいわゆる“Wet”な実験系を扱うとともに、スーパーコンピューターを用いた情報解析(“Dry”な解析)も経験することができました。
肺癌は中枢型と末梢型に大別されますが、そのほとんどは肺の奥深くに発生する末梢型肺癌です。一方で、肺は先細りの気管支が無数に分岐する構造をしています。そのためたとえ体の中に入っていける内視鏡(気管支鏡)を用いたとしても、十分に末梢型肺癌に近づくことができず、診断および治療を精度高く行うことは困難でした。
私達は2011年にCT画像を分析する‘コツ’に気づき、オブリーク法と名付けました。オブリーク法はほんのちょっとした‘コツ’なのですが、従来の仮想気管支鏡ナビゲーションシステムの自動解析よりも飛躍的に多くの情報をCT画像から読取ることができることが分かりました。つまり内視鏡で末梢型肺癌にアプローチするための“道”が詳しく分かるようになったということです。私達はオブリーク法の特許を取得せず無償で公開しており、幅広い先生方にお使いいただいております。Covid-19の流行までは「3時間で覚える気管支鏡精密枝読みセミナー」を開催し、全国からご参加いただいておりました。また、2018年にはオブリーク法のコンセプトを組み込んだ次世代型の仮想気管支鏡ナビゲーションシステムの1号機が連携する企業から上市され、2022年には2号機も公開されました。さらに2023年には3号機もローンチされます。オブリーク法は2020年に日本呼吸器内視鏡学会の奨励賞を受賞しています。これらの活動をさらに前進させ、詳細なCT画像解析が様々な医療機関において簡単にご活用いただけるように努めてまいります。
一方でオブリーク法で末梢型肺癌までの道が分かっても、気管支鏡が末梢型肺癌まで到達できるわけではありません。その理由は、気管支が先細りになっているからです。これまでは、肺野末梢に入っていくために気管支鏡はどんどん細く設計されましたが、それでも十分に肺野末梢まで到達することはできませんでした。そこで私達は逆に、気管支を広げることで気管支鏡を末梢に進めるというアイデアを思いつきました。試しにブタの肺で心臓用のカテーテルを使ってこのアイデアを行ってみたところ、気管支鏡で胸膜(つまり肺の底)まで到達することに成功しました。我々が知る限り、同様の成果の報告は世界でも例がありません。こちらの技術については連携する企業に導出した上で、2023年から多施設共同で治験を開始しています(治験責任医師:三宅浩太郎)。この方法をBalloon Dilatation for Bronchoscopy Delivery (BDBD法、バルーン併用気管支鏡送達法)と呼ぶことにしました。
私達の上記の技術は表裏一体です。すなわち末梢型肺癌までの道が分かっていても、気管支鏡でその道を進めなければ意味がありません。一方で気管支鏡で肺野末梢に行けても、道が分からなければ末梢型肺癌に到達できません。しかしこれらの技術は自動車に例えると「ナビと車(移動手段)」であり、双方が揃うことで呼吸器領域における「次世代のインフラ」になる可能性があります。まず、肺癌の生検の精度は大きく改善すると期待されます。冷凍生検や光治療・ラジオ波等の既存のさまざまな手技との組み合わせも有用と思われます。また、肺胞を気管支鏡の視野で直接観察することができれば、びまん性肺疾患の新しい診断法につながる可能性もありそうです。私達は共同研究者の先生方および連携する企業と協力させていただきながら、次世代の呼吸器診療の実現に向けて努力を続けます。
気管支鏡検査に関連して、これまでに当科が発表してきたアイデア・テクニックは下記の通りです。これらの技術をベースとして、末梢肺癌の診断・治療を飛躍的に向上させる技術の確立を目指して参ります。
2015年 | 第17回日本RNA学会年会ベストプレゼンテーション賞 |
---|---|
2016年 | 大阪大学大学院医学系研究科 博士課程優秀者 |
2020年 | 日本呼吸器内視鏡学会 奨励賞 |
2022年 | 日本呼吸器内視鏡学会 近畿支部会 優秀賞 |
2018年 | MEI Grant(グラントC) |
---|---|
2018年 | 科学研究費 若手研究「癌におけるRNA修飾異常の解明とエピトランスクリプトーム治療の開発」 |
2019年 | 内視鏡医学研究振興財団, 研究助成 |
2021年 | 大阪市イノベーション創出支援助成金 |
2022年 | 大阪難病研究財団 (代表: 佐藤慎吾先生) |
2022年 | 大阪市イノベーション創出支援助成金 |
2023年 | 科学研究費 若手研究「効果的かつ副作用の少ない老化細胞除去療法を光で実現する」 |
2024年 | 持田記念医学薬学振興財団研究助成金 |
2025年 | AmedシーズA「気瘻部位をピンポイントで可視化する低侵襲な画像検査法の開発」 |
2025年 | 科学研究費 基盤C「エアーリークポイントをピンポイントで可視化するCT撮影方法の確立」 |
2018年- | ザイオソフト株式会社, 気管支鏡ナビゲーションシステムの評価 (-2020) |
---|---|
2020年- | 株式会社カネカ, バルーン併用気管支鏡送達法の開発 |
2023年- | 株式会社カネカ, バルーン併用気管支鏡送達法 (治験責任医師) |
2024年 | 大阪大学産学連携プロジェクトMEET |
2025年- | ザイオソフト株式会社, CT画像解析ソフトウェアを用いた気管支径の解析を行う研究 |
2012年 | 日本呼吸器内視鏡学会学術集会 (ポスター発表、市立堺病院) : 独自の精密なCT画像解析法(オブリーク法)を初公開 |
---|---|
2013年 | 日本呼吸器内視鏡学会学術集会 (シンポジウム) : オブリーク法 |
2015年 | 日本呼吸器内視鏡学会学術集会 (シンポジウム) : オブリーク法 |
2017年 | Gordon Research Conference : RNA editing |
2019年 | 日本レーザー医学会 (シンポジウム) : バルーン併用気管支鏡送達法を初公開 |
2020年 | 日本呼吸器内視鏡学会学術集会 (奨励賞受賞講演) : オブリーク法 |
2020年 | 日本呼吸器内視鏡学会学術集会 (ワークショップ) : バルーン併用気管支鏡送達法 |
2021年 | 日本呼吸器内視鏡学会学術集会 (ランチョンセミナー): 新しい気管支鏡検体採取法の確立 |
2022年 | 日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医大会: オブリーク法 |
2022年 | 日本呼吸器内視鏡学会学術集会 (気管支鏡手技セミナー): オブリーク法 |
2022年 | 日本呼吸器内視鏡学会学術集会 (スポンサードセミナー): オブリーク法を搭載したZiostation REVORAS |
2022年 | 日本呼吸器内視鏡学会中部支部気管支鏡実技セミナー: オブリーク法 |
2023年 | 日本呼吸器内視鏡学会学術集会 (スポンサードセミナー): オブリーク法を搭載したZiostation REVORAS |
2023年 | 日本呼吸器内視鏡学会学術集会 (ワークショップ): オブリーク法を搭載したDirectPath (谷崎, 三宅ら) |
2023年 | 日本呼吸器内視鏡学会中部支部気管支鏡実技セミナー: オブリーク法/側臥位/VFPP |
2024年 | 日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医大会: オブリーク法 |
2024年 | 日本呼吸器内視鏡学会学術講演会(シンポジウム):バルーン併用気管支鏡送達法 |
2024年 | 日本呼吸器内視鏡学会学術講演会(教育講演):末梢病変診断UpToDate(側臥位、オブリーク法) |
2024年 | World Congress for Bronchology and Interventional Pulmonology (WCBIP):バルーン併用気管支鏡送達法 |
2025年 | American Thoracic Society (ATS) International Conference:バルーン併用気管支鏡送達法 |