教室員

岡 芳弘Oka Yoshihiro MD, PhD

mail: yoshi@imed3.med.osaka-u.ac.jp

略歴

1973年 大阪府立天王寺高等学校卒業
1980年 大阪大学医学部卒業
1980年 大阪大学医学部付属病院 研修医(第3内科)
1981年 大阪府済生会富田林病院内科 医員
1983年 大阪大学医学部付属病院 医員(輸血部・第3内科)
1992年 Basel Institute for Immunology (スイス) Scientific Member
1995年 大阪大学医学部第3内科(現、呼吸器・免疫内科学) 助手
2006年 大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・免疫アレルギー内科学(現、呼吸器・免疫内科学) 講師
2014年 大阪大学大学院医学系研究科 癌免疫学共同研究講座(大塚製薬) 特任教授
2017年 大阪大学大学院医学系研究科 癌幹細胞制御学寄附講座 寄附講座教授

資格

医学博士、総合内科専門医、血液専門医

所属学会

日本内科学会、日本血液学会、日本癌学会、日本がん免疫学会、日本バイオセラピィ学会、日本免疫学会など

研究・臨床などの主な活動

1983年に、大阪大学医学部第3内科血液研究室で、大学人としての研究・臨床活動を開始しました。その血液研究室では、Abelsonマウス白血病ウイルスの温度感受性変異株の単離(これが医学博士の学位取得のテーマです)やそれを感染させて作成したマウス未熟Bリンパ球株を用いたBリンパ球の分化機構の解析を基礎研究として行いつつ、臨床的には、主に造血器腫瘍の治療に携わり、特に、その頃広まりつつあった造血幹細胞移植の阪大病院への導入やその確立にグループをあげて注力しました。造血幹細胞移植は、ドナー由来リンパ球が患者さんに残存する悪性腫瘍細胞を非自己と認識し攻撃する癌免疫療法であり、その頃に、癌免疫療法への志向性・親和性が築かれたと思います。

1992年に、当時の第3内科教授であられた岸本忠三先生のご紹介で、スイスのBasel Institute for ImmunologyのFritz Melcher先生のもとで研究する機会を得ました。バーゼルでは、Melcher先生の研究分野でもある、そして私が大阪大学で行っていましたBリンパ球の分化に関する研究を継続して行いました。そこでは、PhDの先生方との交流で多くのことを学ぶことができました。

1995年に第3内科に帰局してからは、同じ免疫学ですが研究分野を変更しました。つまり、自ら興味を持っていた(前述)、そして、臨床と密接な関係を持つ可能性のある癌免疫の研究を開始しました。ちょうど、WT1が白血病や種々の固形癌で発現していることが我々のグループにより見出されつつあり、WT1を標的(癌抗原)とした抗腫瘍免疫療法の開発を目指した研究に特化し、それに関する基礎研究を、前に述べました学位取得時に御指導いただきました杉山治夫先生(現、癌免疫学共同研究講座(大塚製薬)・特任教授)、さらには、坪井昭博先生(現、癌ワクチン療法学寄附講座・寄附講座教授)、尾路祐介先生(現、機能診断科学講座・教授)らの先生方とともに開始しました。そして、やっと2000年に、ヒトWT1特異的cytotoxic T lymphocyte (CTL) を誘導できるWT1-CTL epitopeペプチドの同定と、in vivoでのWT1を標的にした抗腫瘍免疫療法の有効性を強く示唆するマウス実験の結果を、論文発表することができました。2001年には、仲間とともにWT1ペプチドワクチンの臨床試験を開始し、2003年には、世界で初めてのWT1ワクチンによる臨床反応例(MDS症例におけるleukemic blastの減少)を報告しました。その後は、我々のグループのメンバーだけでなく、他科や他施設(海外も含む)の多くの先生方と共同研究を行い、基礎研究、あるいは、臨床研究・臨床試験を進めています。

このように、WT1ペプチドワクチンは我々が世界に先駆けて研究開発してきたもので、この癌ワクチンで治療された患者さんは500例以上にのぼります(その中には、「再発必至、あるいは、きわめて難治性」と考えられたが治癒したであろうと思われる患者さんもおられます)。臨床試験の進展に伴い、WT1という単一抗原を標的に癌免疫治療を受けられた多くの患者さんから得られた血液サンプルが蓄積されています。これらは、ヒトの癌免疫応答を解析するために大いに役立つと考えられ、実際、その検体を用いた免疫学的・分子生物学的解析を、マウス実験と並行して、精力的に行っています。

今まで述べてきました研究・臨床活動の間に、医学部の講座再編成が行われ、それに伴い、血液研究室は癌免疫研究室と名前を変え、当時、講師となった私がグループヘッドとして活動していましたが、2014年に癌免疫学共同研究講座(大塚製薬)の特任教授に就任しました後は、西田純幸先生に呼吸器・免疫内科学の癌免疫研究室のグループヘッドを引き継ぎました。そして、現在も、熊ノ郷教授が主催されていますその呼吸器・免疫内科学の先生方とともに研究・診療活動を継続して行っています。

重要な論文の例