大阪大学大学院医学系研究科
呼吸器・免疫内科学
Department of Respiratory Medicine and Clinical Immunology, Graduate School of Medicine, Osaka University
肺野末梢病変の診断のためには、病変部位に到達して生検を行います。その手法の一つが気管支鏡です。しかし気管支鏡で標的に到達するためにはいくつもの分岐を正確に選択して進む必要があり、その正確性は診断率を左右します。
どのように分岐を選択するかを予測してプランを立てるため、気管支鏡検査の前にはCTを撮影して解析を行います。現在世界中の先進的な施設では仮想気管支鏡ナビゲーション(VBN)システムが導入され、この目的で使用されています。ただ、画像解析技術の進歩にも関わらず、VBNは肉眼であればCT上で確認できる気管支の一部しか利用することができません。
そこで当院では、スイッチオブリーク法という独自の手法でCTの解析を行っています。スイッチオブリーク法は原理上、VBNの性能に依存しません。そのカギとなっているのは「気管支の輪切り・縦切りに相当するオブリーク断面」という、これまでほとんど注目されてこなかった角度のCT断面です。
スイッチオブリーク法では肉眼で確認できる気管支を全て利用することができるので、VBNより精密な解析を行うことが(原理上)可能です。当院の検討では、VBNと比較してその1.5倍も深くまで気管支を解析することができました。さらにスイッチオブリーク法は単なる気管支の分岐情報にとどまらない多彩な情報を得ることが可能です。
スイッチオブリーク法は、さらに下記のようなメリットがあります。
スイッチオブリーク法は高度な最新技術というものではなく「ちょっとした工夫」に過ぎませんが、そうであるからこそ広くご活用いただけるのではないかと思っています。これまで学会口演などで発表の機会をいただいた際にはおおむね好評で、良い反響をいただいております。
私達はスイッチオブリーク法をさらにブラッシュアップして高い診断率を目指すとともに、さまざまな施設でご利用いただけるよう努めたいと考えています。
呼吸器内科 三宅浩太郎