大阪大学大学院医学系研究科
呼吸器・免疫内科学
Department of Respiratory Medicine and Clinical Immunology, Graduate School of Medicine, Osaka University
近年様々な薬が登場し免疫疾患の治療成績を向上させてきたが、女性に多い免疫疾患患者の妊娠と授乳中の治療方針に関してはエビデンスが少なく臨床現場では判断に迷うことが多い。妊娠と授乳中の薬使用の許容に関する現時点の考えとして、2024年生殖、妊娠、授乳期での抗リウマチ薬使用のEULAR推奨と、2018年に本邦の研究班がまとめた治療指針についてまとめた。また、シクロホスファミドなどの生殖細胞や妊孕性(にんようせい)に影響を及ぼす薬剤使用時の妊孕性温存に関しても考慮する必要がある。
(2024年版 EULAR推奨が公表されたが、EUでのデータが中心であり、本邦では薬剤添付書の記載を考慮する必要がある)
妊娠ではマラリア薬、アザチオプリン、コルヒチン、シクロスポリン、スルファサラジン、タクロリムスなどは併用可能。NSAIDとグルココルチコイド(GC)は妊娠中の使用はより厳格にされる。全てのTNF阻害剤bDMARDは妊娠期間を通して使用可能で、non-TNF bDMARDも必要に応じて使用できる。
授乳ではマラリア薬、アザチオプリン、コルヒチン、シクロスポリン、GC、IVIG、NSAID、スルファサラジン、タクロリムスなどが併用可能。全てのbDMARDは授乳と併用可能。
男性ではマラリア薬、アザチオプリン、コルヒチン、シクロスポリン、IVIG、レフルノミド、MTX、MMF、NSAIDs、GC、シルデナフィル、スルファサラジン、タクロリムス、bDMARDsなどは併用可能。
母体にIgG型bDMARD投与の場合、新生児の生ワクチン接種は半年延期するべき。
包括的原則
(A) 女性と男性の全患者は、生殖に関する健康と妊娠に関連した治療調整の必要性について早期かつ定期的なカウンセリングを受けるべきだ。
(B) 妊娠前、妊娠中、妊娠後のリウマチ性疾患および筋骨格系疾患の患者の治療は、寛解または疾患活動性の低下を目指すべきだ。
(C) 胎児や小児に対する薬物療法の潜在的リスクは、母体の疾患が治療されない場合のリスクと比較検討されるべきだ。
(D) 母乳育児の利点を考慮すると、女性は適合する薬剤を服用しながら授乳を妨げられるべきではない。
(E) 妊娠前、妊娠中、妊娠後の治療は、治療にあたる医療提供者と患者の間で共同で意思決定されるべきだ。
妊娠前と妊娠中の抗リウマチ薬 (括弧内は証拠レベルと 推奨グレード)
使用可能 |
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アザチオプリン(2a/B)、6-メルカプトプリン(2a/B)、クロロキン(2c/B)、コルヒチン(2b/B)、シクロスポリン(2a/B)、ヒドロキシクロロキン(2a/B)、スルファサラジン(2a/B)、タクロリムス(2b/B)、全てのTNFi bDMARD(2a/B) |
条件付きで使用可能 |
NSAIDsは29週以降中止。選択的COX2阻害剤のデータは限られており(2b/C)、半減期の短い非選択的NSAIDs(イブプロフェン、ジクロフェナクなど)を推奨(2a/B)。プレドニゾン、プレドニゾロン(2a/B)は可能な限り5mg/日以下まで漸減し、可能なら投与中止。高用量投与は母体・胎児合併症のリスクとのバランスを考慮する。 母体疾患の効果的な制御に必要なら、以下のnon-TNF bDMARDを使用できる:アバタセプト(4/C)、アナキンラ(4/C)、ベリムマブ(4/C)、カナキヌマブ(4/C)、イキセキズマブ(4/C)、リツキシマブ(4/C)、サリルマブ(4/C)、セクキヌマブ(4/C)、トシリズマブ(4/C)、ウステキヌマブ(2b/B) |
催奇形性があり妊娠前に使用を中止 |
シクロホスファミド(2a/B)、MTX(2a/B)、MMF(2a/B) MTXは1〜3ヶ月前、MMFは1.5ヶ月前、シクロフォスファミドは3ヶ月前に中止。 |
妊娠中の安全使用に関するデータは限定的か全くない。これらは妊娠中に使用できる他の薬剤で母体疾患を効果的に制御できない場合のみ使用 |
アニフロルマブ(5/D)、エクリズマブ(4/C)、グセルクマブ(5/D)、メポリズマブ(4/C)、リサンキズマブ(5/D) |
妊娠中の安全性データが不十分で、さらなる証拠が得られるまで使用を避けるべき |
アプレミラスト(5/D)、アバコパン(5/D)、バリシチニブ(5/D)、ボセンタン(5/D)、フィルゴチニブ(5/D)、レフルノミド:妊娠前に半減期の5倍(3.5か月)投与中止するか、加速排泄法(コレスチラミン)を使用する(2b/B)、メパクリン(4/C)、トファシチニブ(4/C)、ウパダシチニブ(5/D)、ボクロスポリン(5/D) |
授乳中の抗リウマチ薬
使用可能 |
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アザチオプリン(2a/B)、メルカプトプリン(2a/B)、セレコキシブ(4/C)、クロロキン(4/C)、コルヒチン(2a/B)、シクロスポリン(2a/B)、ヒドロキシクロロキン(2a/B)、IVIG(2a/B)、メチルプレドニゾロンパルス(2a/B)、非選択的NSAIDs(例:イブプロフェン)、プレドニゾン(2a/B)、プレドニゾロン(2a/B)、スルファサラジン(2a/C)、タクロリムス(2a/B) |
bDMARDは物理化学的特性と薬物動態的特性で母乳移行が最小限であり、乳児の授乳による吸収も限られていることが示されている。TNFiやnon-TNF bDMARDは授乳と両立可能 |
全ての TNFi bDMARD(2a/B)、アバタセプト(4/C)、アナキンラ(2a/B) 、アニフロルマブ (5/D)、ベリムマブ(4/C)、カナキヌマブ(2a/B)、エクリズマブ(5/D)、グセルクマブ(5/D)、イクセキズマブ(5/D)、メポリズマブ(5/D)、リサンキズマブ(5/D)、リツキシマブ(2a/B)、サリルマブ(4/C)、セクキヌマブ(5/D)、トシリズマブ(4/C)、ウステキヌマブ(2a/B) |
以下の薬は母乳中濃度が非常に低く、授乳中の乳児への悪影響も示されてないため、代替薬剤がない場合は授乳中の投与を検討してよい |
ボセンタン(4/C)、シルデナフィル(4/C)、MTX ≤25 mg/週(4/C) |
授乳中の女性は以下の薬の使用を避け代替薬剤を検討すべき |
アプレミラスト(5/D)、アバコパン(5/D)、バリシチニブ(5/D)、シクロホスファミド(4/D)、エトリコキシブ(5/D)、フィルゴチニブ(5/D)、イロプロスト(5/D)、レフルノミド(5/D)、MMF(5/D)、トファシチニブ(4/D) 、ウパダシチニブ(5/D)、ボクロスポリン(5/D) |
妊娠希望の男性の抗リウマチ薬
以下の薬剤は、妊娠希望の男性患者で臨床的に有意な影響は認められておらず、継続投与できる |
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アザチオプリン(2b/B)、メルカプトプリン(2b/B)、コルヒチン(2c/C)、シクロスポリン(2b/B)、ヒドロキシクロロキン(2c/C)、クロロキン(2c/C)、IVIG(5/D)、レフルノミド(2c/C)、MTX ≤25 mg/週(2b/C)、MMF(2b/C)、NSAIDs(2b/C)、プレドニゾン(2b/B)、プレドニゾロン(2b/B)、シルデナフィル(4/C)、スルファサラジン(2b/C)(精子の質に可逆的な影響を及ぼす可能性がある。妊娠しにくい場合は、他の不妊原因調査と併せて中止を検討)、タクロリムス(2b/B)、全てのTNFi bDMARD(1b/B)、アバタセプト(4/C)、アナキンラ(4/C)、ベリムマブ(5/D)、カナキヌマブ(4/C)、イセキズマブ(4/C) 、リツキシマブ(4/C)、サリルマブ(5/D)、セクキヌマブ(4/C)、トシリズマブ(4/C)、ウステキヌマブ(2b/C) |
用量依存的に不可逆的不妊症の潜在的リスクと関連し、男性は治療開始前に妊孕性温存の選択肢についてカウンセリングを受ける必要がある |
シクロホスファミド(2b/B) 4000mg/m2以上では永久的な無精子症になる可能性がある。 |
以下の薬による男性治療の影響に関するデータは限定的か全くない。妊娠希望の男性患者には代替薬剤を検討 |
アニフロルマブ(5/D)、アプレミラスト(5/D)、アバコパン(5/D)、バリシチニブ(5/D)、ボセンタン(5/D)、エクリズマブ(5/D)、フィルゴチニブ(1/B-4/C)(精子の質に悪影響はないが、妊娠転帰に関するデータは非常に限られている)、グセルクマブ(5/D)、メポリズマブ(5/D)、リサンキズマブ(5/D)、トファシチニブ(4/C)、ウパダシチニブ(5/D)、ボクロスポリン(5/D) |
乳児のワクチン接種
生ワクチン以外のワクチンは、妊娠中に何らかのbDMARDに曝露された全ての乳児で接種できる |
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出産後6ヶ月以内の生弱毒化ワクチンの接種は、妊娠中の母体のbDMARDの曝露時期、bDMARDの胎盤通過、およびワクチン種類によって異なる |
ロタウイルスワクチンは、TNFi bDMARD (妊娠後期に何らかのTNFi bDMARDを投与された乳児)に対して、ワクチン接種スケジュールに従って接種できる(2b/B)。 妊娠後期にTNFi bDMARDを投与され、胎盤移行を伴う乳児(妊娠20週以降母体にアダリムマブ、ゴリムマブ、インフリキシマブを投与された乳児、妊娠32週以降母体にエタネルセプトを投与された乳児)に対して、BCGワクチン接種を6ヶ月延期する(2b/B)。 セルトリズマブは胎盤移行が殆どないか全くないため、乳児のワクチン接種スケジュールを変更する必要はない(2b/B)。 妊娠第2期および第3期にnon-TNF bDMARDに曝露された乳児における生弱毒化ワクチンに関するデータは限られているため、生ワクチンの接種は6ヶ月延期する必要がある(4/C-5/D)。 |
IgGベースのbDMARDは妊娠20週頃からFcRnを介した胎盤通過が起きるため、乳児の生ワクチン接種計画に影響を及ぼさないためには、IgG1(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、リツキシマブ)は20週までに中止。Fc融合薬(エタネルセプト、アバタセプト)は30〜32週までに中止。Fcのないセルトリズマブは妊娠期間中継続可能。
妊娠・授乳中での現時点でコンセンサスが得られた診断・治療が、SLE、RA、JIA、IBDの診療にあたる医師や合併妊娠に従事する医師を対象に示された。患者に及ぼす利益が不利益を相当程度上回りコンセンサスを得た内容が記載されている。推奨を実際に実践するかの最終判断や責任は利用者に帰属する。ここではSLE、RAに関する部分を中心にまとめたが、全文や詳細は原著を参考頂きたい(推奨度はA:強く勧められる、B:勧められる、C:考慮される。同意度は1~9点で表記)。
SLE、RA、JIA、IBD女性患者の妊娠希望に対する説明。 |
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疾患が活動期にある場合はまず寛解状態になってからの妊娠を勧める(A/9)。 妊娠前の病状によっては、妊娠中の増悪や妊娠合併症について、内科医、外科医、整形外科医と産婦人科医が連携し、双方の立場から情報提供することが望ましい(B/9)。 妊娠前から内科、整形外科と産婦人科の立場から情報提供し、妊娠後は両診療科で共同管理する(C/8)。 妊娠を積極的に考える場合、妊娠中に禁忌となる薬剤の切り換えを考慮する(B/8)。 |
SLE、RA、JIA、IBD患者の妊娠が容認される基準 |
それぞれの疾患が妊娠中に使用可能な薬剤でコントロールされており、寛解状態が維持されていることが妊娠容認基準の一つである(C/8)。 ループス腎炎症例での妊娠許容基準 1 非活動性ループス腎炎 2 尿蛋白が0.5g/日以下。 3 GFR区分でG1(≧90 ml/min/1.73m2)またはG2(60~89 ml/min/1.73m2)。 4 妊娠中に使用可能な薬剤で腎炎が安定している。以下の薬剤を使用していないことを確認する(MMF、ミゾリビン、シクロホスファミドなどの免疫抑制剤。ARBやACE阻害剤が使用されていないことが望ましい。腎保護作用による有益性が高いと考えられる場合は、妊娠後に他の薬剤に切り替える) 1~4を全て満たす場合は妊娠を許容できる。その他の場合はリスクを十分に説明したうえで、患者の意思を尊重し高次医療機関で管理する。ただし、重症の肺高血圧症(肺動脈収縮期圧>50mmHgあるいは有症状)、NYHA分類III~IV度の心病変がある場合は、原則として妊娠は勧められない。妊娠初期の高血圧、蛋白尿、妊娠前のeGFR<90のループス腎炎で妊娠高血圧腎症にリスクがあがるとの報告がある。 関節リウマチでは寛解状態、少なくとも低疾患活動性維持が望ましい。MTXは1ヶ月以上の休薬が必要。 炎症性腸疾患では妊娠中使用可能な薬剤で寛解状態であることが望ましい。 |
SLE、RA、JIA、IBDと不妊症との関連性 |
それぞれの疾患が寛解状態であれば、不妊症との関連性は低い(C/8)。 SLEではシクロホスファミドの30歳以上での投薬や6ヶ月を超えるパルス療法、累積投与量7g以上である場合は卵巣機能不全のリスクが高まる。抗リン脂質抗体症候群では妊娠直後より低用量アスピリンとヘパリンカルシウム(5000IUx2/朝夕皮下注)との併用を考慮する。 関節リウマチでは寛解状態では不妊症との関連性は低く、疾患活動性に関連した妊孕性の低下が報告されている。MTXは流産、催奇形性のリスクとなり、妊娠希望では薬剤変更を考慮する。 |
SLE、RA、JIA、IBDの妊娠中・産褥期の活動性 |
SLEは妊娠中・産褥期に病態が悪化する可能性がある(B/8)。 RAは妊娠中に寛解する場合と増悪する場合があるが、産褥期に再燃することが多い(B/8)。 IBDは寛解期であれば妊娠中に増悪する可能性は低く、活動期であれば増悪する可能性がある(B/8)。 |
SLE、RA、JIA、IBDの妊娠管理での検査と必要情報 |
SLEの患者情報:治療薬、既往妊娠分娩歴(流・死産、早産、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全を含む)、前児の新生児ループスの有無、先天性房室ブロック(CHB)の有無、血栓症既往の有無、ループス腎炎の有無、再燃歴の有無とその際の臨床症状(B/8)。 SLEの検査:血圧、検尿、尿沈渣、血清Cr(eGFR)、尿蛋白/尿Cr、血算、C3、C4、抗dsDNA抗体、抗リン脂質抗体、抗SSA抗体(B/8)。 抗SSA抗体陽性妊婦ではCHB早期発見のため妊娠16~34週までの2週間毎の超音波検査を努力目標とするが、デキサメタゾンのIII度ブロックへの進行予防効果も実証されていないため一つの目安である。HCQは前児がCHB症例で、次児のCHB発症を有意に減少させたとする報告がある。 |
SLE、RA、JIA、IBD合併妊娠の診療機関について |
SLE合併妊娠、ステロイドや生物製剤を使用しているRA合併妊娠、JIA合併妊娠、活動期のIBD合併妊娠は高次医療機関での管理が推奨される。ただし、疾患活動性の低いRA合併妊娠、IBD合併妊娠では産婦人科と関連各科が密に連携が取れている場合はこの限りではない(C/8)。 |
SLE、RA、JIA、IBD患者の分娩方法について |
それぞれの疾患では通常の分娩管理で良い(C/8)。 |
妊娠中の薬剤の禁忌と許容。 |
一般の出生児での先天性疾患頻度は3-5%であり、妊娠中の薬の投与によりこの頻度よりも上昇するかが問題となる。 妊娠中禁忌である薬:MTXやMMFはヒトにおける催奇形性がある(B/9)。レフルノミド、ミゾリビンは動物実験で催奇形性が示されている(C/8)。ARBやACE阻害剤は胎児・新生児死亡と関連がある(B/8)。 妊娠中許容される薬:抗TNFα抗体製剤、サラゾスルファピリジン、ヒドロキシクロロキン、メルカプトプリンは現時点で催奇形性が示されていない(B/8)。シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリンは病状がコントロール困難であれば許容される(B/8)。降圧剤ではヒドララジン、αメチルドパ、ラベタロールは安全性が示されている(B/8)。ステロイドは胎盤移行性の低いプレドニゾロンが推奨され(A/9)、10~15mg/日までで管理。ステロイドで口唇口蓋裂が500人に1人から3人に上昇するという報告がある。 NSIDsは妊娠後期(28週以降)では中止。コルヒチンの催奇形性は否定的、トシリズマブは限られた報告ではリスクは示されていない。 |
妊娠中の生物製剤使用時の注意 |
抗TNFα抗体製剤は、妊娠中の全期間において使用は可能だが、妊娠末期まで使用した場合は胎盤移行による児への影響が生後数ヶ月残存している可能性があり、出産後6ヶ月に達する前のBCGやロタウイルスワクチンなどの生ワクチン接種は控えた方が良い(B/8)。 |
新生児のケアの留意 |
抗SSA抗体を有するSLE合併妊娠やRA合併妊娠では、新生児ループスに留意する(A/9)。 母体が妊娠中に生物製剤を使用している場合、その影響が生後数ヶ月残存している可能性があり、児の生ワクチン(BCG、ロタウイルス)の接種において注意が必要である(B/8)。 新生児ループスの発症時期は出生直後から生後3ヶ月頃までに皮膚症状や汎血球減少がある。 |
薬剤使用中の授乳について |
MTXやレフルノミドは授乳は許容されない(B/8)。 抗TNFα抗体は乳汁移行が少なく消化管からの吸収も悪いため授乳は許容できる(B/8)。 ARBやACE阻害剤は許容できる(B/8)。 以下の薬剤も乳汁移行が少ないとされ授乳は可能である。プレドニゾロン(パルス療法中以外)、NSAIDs、シクロスポリン、タクロリムス、アザチオプリン(児の血球減少、肝障害に注意)、サラゾスルファピリジン(児の血性下痢の報告あり)、メルカプトプリン、メサラジン、ワルファリン、プロプラノロール、アムロジピン、ニフェジピン、ビスホスホネート。 |
なお、国立成育医療研究センターのホームページ妊娠と薬情報センターでは妊娠中の薬の相談の仕方が記載されおり、全国47都道府県にも「妊娠と薬外来」拠点病院が設置されている。
ループス腎炎、ANCA関連血管炎などの重篤で難治性病態では今なおシクロホスファミドが使用されることが多いが、治療が奏功した後には疾患活動性が落ち着いて妊娠中使用可能な薬剤で維持療法がなされ、疾患再燃がなく通常の生活が出来るようになる事も多い。
免疫疾患の治療における妊孕性保存のガイドラインはまだ作成されていないが、シクロホスファミドパルス療法など生殖細胞や妊孕性へ影響を及ぼすことがある治療が妊娠可能年齢患者に対して行われる場合には、癌治療と同様に妊孕性温存の医学的適応の考慮が必要となる。妊孕性温存は、男性では精子の凍結保存、女性では胚(受精卵)凍結(パートナーがいる場合)、未受精卵凍結、卵巣組織凍結などがあるが、本人の意志にもとづき、原疾患の治療実施に著しい不利益とならないときに考慮される。患者は妊孕性温存に関して正しい情報をもとに自己決定できるよう支援され、専門部門で情報を得た上で最終判断を行う。
日本癌治療学会で作成された「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン」2017年版(金原出版)が刊行されており、日本産婦人科学会からは「医学的適応による未受精卵子、胚(受精卵)および卵巣組織の凍結・保存に関する見解」の改訂(2019年5月)が承認されているので参照されたい。