免疫疾患の解説一覧

成人スティル病 Adult onset Still's disease (AOSD)

概要

1897年に英国のGeorge Frederic Still医師が、発熱、多発関節炎、肝脾腫、全身リンパ節腫脹、サーモンピンク疹などの全身症状を特徴とする小児疾患を報告した。1971年にE Bywatersが、16歳以上の成人でもこれとよく似た症状を呈する患者を成人スティル病として報告した。発熱、関節痛、皮疹が3主症状である。成人発症スティル病(adult onset Still's disease AOSD)、成人スティル病(adult Still's disease ASD)、あるいは単にスティル病などと呼ばれる。

16歳から35歳に多いとの報告もあるが、日本では67%が35歳以上であり、全年齢で考慮すべき疾患である。女性がやや多い(65-70%)。原因不明であるが、遺伝性の素因を持ったものが、何らかの感染症(EBウイルス、パルボウイルスB19、風疹、ムンプス、インフルエンザ、B型・C型肝炎ウイルス、サイトメガロウイルスなどのウイルス、マイコプラズマ、クラミジア、エルシニアなど)を誘因として生じた反応性の病態で、単一病因ではなく様々な病因から結果的に生じる疾患との考え方がある。血清中での高サイトカイン血症、特にIL-6、IL-8、IL-18、TNFα、IFNγ、sIL-2R、M-CSFなどの上昇が見られる。

症状

発熱、関節症状、皮疹が3主症状である。発熱はほとんどの症例で主たる症状で(頻度80~100%近い)、1日1~2回の一過性の39度以上の高熱がみられることが多い。関節痛・関節炎も大多数の症例でみられ(頻度70~100%)、膝・手・足などに多い。解熱時には軽減することもある。

本症には、定型的(典型的)な皮疹があり、”サーモンピンク疹”とよばれる。これは、色調がサーモンピンク調で、斑状、径数mm程度、丘疹状の発疹が体幹や四肢に見られる。発熱時に増強することが多い。組織学的には、リンパ球や組織球の浸潤した表皮血管周囲の炎症であり、補体や免疫グロブリンの沈着を認めることもある。

その他、咽頭痛(70%)、リンパ節腫脹(69%)、脾腫(65%)、肝腫大(48%)、筋肉痛(56%)、胸膜炎・心膜炎などがみられる。

検査所見

炎症を反映して、白血球増多(10,000/mm3以上)、CRP上昇、赤沈亢進、補体価上昇、免疫グロブリン増加がみられる。肝機能障害(85%)がしばしばみられる。本症の特徴として、血清フェリチンの上昇が重要である。1000ng/ml以上であれば診断に有力であるとされる(感度82%、特異度46%)。血清フェリチン値は、疾患活動性を反映する。しかし、血清フェリチン値の上昇は特異的ではないため、感染症や悪性疾患の鑑別が重要である。

フェリチンには糖鎖が付いたものと付かないものがあり、本症では糖鎖フェリチンの割合が20%未満となる一方、感染症や悪性腫瘍では糖鎖フェリチンの割合が20~40%とされている。糖鎖フェリチン割合が低下する理由は、細胞内フェリチンは非糖鎖フェリチンが主であることより、細胞崩壊による非糖鎖フェリチン割合が増加することが考えられている。(Fautrelらの診断基準に含まれる)

診断

まず発熱の原因となる他の疾患、すなわち感染症(感染性心内膜炎、膿瘍、伝染性単核球症など)、各種血管炎、悪性腫瘍(とくに悪性リンパ腫)を除外した上で診断基準を適応する。日本では山口(1992年)らによる分類基準が用いられている。菊池病、Sweet病、肉芽腫性疾患、血管炎などとの鑑別はしばしば慎重を要する。


AOSDの分類基準:Yamaguchiらの基準(1992年)

大項目
発熱(39℃以上、1週間以上)
関節痛(2週間以上)
典型的皮疹
白血球増加(10000/μl以上)および好中球増加(80%以上)
小項目
咽頭痛
リンパ節腫脹あるいは脾腫
肝機能異常
リウマトイド因子陰性および抗核抗体陰性

Fautrelらの分類基準(2002年)

大項目
1. spike fever (39℃以上)
2. 関節痛
3. 一過性紅斑
4. 咽頭炎
5. 好中球増加(80%以上)
6. 糖鎖フェリチン低下(20%以下)
小項目
1. 斑状丘疹状皮疹
2. 白血球増加(10000/mm3以上)

治療

軽症例はNSAIDsのみで軽快することもある(7~15%)が、通常ステロイド投与が必要となる。発熱・関節症状・皮膚症状にとどまる場合や軽度の臓器障害にとどまる場合は中等量以下(PSL 0.5mg/Kg程度かそれ以下)、高度の臓器障害(肝障害など)を伴う場合は大量(PSL 1mg/Kg程度)でステロイドを投与する。重篤な肝障害・血球貪食症候群などの場合は、ステロイドパルスを実施する。ステロイドの減量が困難な場合やステロイド抵抗性の場合は免疫抑制剤を追加する。

免疫抑制剤は、メトトレキサート(MTX)の使用報告が多い。他にシクロスポリン(cyclosporin)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)などが使用される。スルファサラジン(Sulfasalazine)は、成人スティル病では副作用が出やすく避けたほうがよい。MTXは、成人スティル病の関節症状に対して効果があるとされる。

ステロイド+MTXでも無効の場合は、インフリキシマブの使用を考慮する。再燃例では、免疫グロブリン輸注 IVIG(0.4-2g/kg/dayで2~5日間)の有効報告がある。トシリズマブの有効例も報告されている。汎血球減少や骨髄での血球貪食像を呈するマクロファージ活性化症候群へと進展し、治療抵抗性の場合には、血漿交換療法を治療選択肢として考慮する。なお、成人スティル病は薬剤アレルギーを生じやすい(頻度54%)とされており、疾患活動期には投薬を最少にする。

血球貪食症候群の合併

成人スティル病に、マクロファージ活性化症候群(MAS: macrophage activating syndrome)、反応性血球貪食症候群(HPS: reactive haemophagocytic syndrome)を合併することは珍しくなく、12%で見られたとの報告がある。また骨髄での貪食像が見逃されている可能性もあり、実際の頻度は高いと考えられている。発熱、肝脾腫、リンパ節腫脹、汎血球減少、著しい血清フェリチン上昇、糖鎖フェリチン割合の低下(20%以下)、トリグリセリド上昇、肝酵素上昇を伴っている。Tリンパ球とマクロファージの活性化と増殖により、高サイトカイン血症と血球貪食が引き起こされる。

成人スティル病と血球貪食症候群は、臨床像や検査異常が類似し、共通の機構が示唆される。免疫グロブリン大量療法、ステロイドとcyclosporinやcyclophosphamideなどの免疫抑制剤の併用、血漿交換療法などによって加療された報告がある。

参考文献

2014/Nov