免疫内科

メトトレキサートの注意

メトトレキサート服用の注意

メトトレキサート(商品名、リウマトレックスカプセル、メトレート錠、メトトレキサート錠)は、関節リウマチの治療で最も使用されており、第一選択薬として使用されることの多い内服薬です。また、成人スティル病やリウマチ性多発筋痛症などの膠原病や膠原病類縁疾患においてもステロイドに併用される形で、使用される場合があります。

作用は、免疫を抑制することで、関節、皮膚、肺、腎臓など、それぞれの疾患でおこっている炎症をおこりにくくすることによります。病気に関連する免疫だけを抑えるわけではなく、身体のもつ免疫作用全体を抑えるので、免疫抑制状態つまり易感染性(いかんせんせい)状態となり、感染症の発症や重症化に注意が必要です。ここに述べる感染症に対する注意点は、メトトレキサートだけではなく、他の免疫抑制薬や生物学的製剤にもあてはまるものです。

メトトレキサート服用中の感染症

この薬剤を服用中に、風邪をひいたり、けがをして少し皮膚が膿んだりすることがありえるかと思います。風邪は、鼻腔・咽頭・喉頭・気管支の主にウイルス感染症です。このような場合は、その週にメトトレキサートを服用すべきかどうかの判断が必要になります。食事・睡眠が十分で、風邪の程度が軽い場合や治ってきている場合、皮膚の病変が軽い場合や拡大のない場合は、定期的なメトトレキサートを服用しても、感染症の治る経過に大きな問題を生じないことが多いかと思われます。

しかし、38℃以上など熱が高めである場合、咳がひどい場合、呼吸困難がある場合、感染部位が拡大傾向にある場合は、その週の内服をスキップし(服用しない)、風邪や気管支炎、皮膚炎の経過を慎重にみる、場合によっては肺炎を想定した抗生物質の治療を検討します。判断に迷われる場合は、次回外来を待たずに診察を受け、レントゲンや血液検査の必要性を判断し、必要な投薬を受けてください。もし経過が長びけば次週のメトトレキサートの内服もスキップすることもありえます。

このように、1、2週間(状況によってより長い)、メトトレキサートの内服をスキップすることは、問題ありません。

この考え方は、近年、関節リウマチでしばしば使用される生物学的製剤ではさらに重要で、感染症があるときは、風邪であっても、スキップすることを考えます。とくにもともと肺の病気がある場合(リウマチ性の肺合併症、肺気腫、COPD、肺線維症など)、高齢者、低体重などの栄養不良状態、糖尿病の合併では、さらに慎重に考える必要があります。

ステロイドも免疫を抑制するので、感染症を悪化させうる薬剤ですが、関節リウマチで使用される量が少なめであること(たいていはプレドニン5mg/日以下)、急に中止するとステロイド枯渇・不足となって、かえって全身状態が悪くなることもありますので、毎日の服用は続けていただいて、主治医と相談頂くのがよいと思います。

メトトレキサートの飲み方

この薬剤は、週のうち1日か2日を決めて内服し、残りの日は休薬します。関節リウマチや膠原病で使用される場合は、毎日の内服ではありませんので注意ください。1週間全体の量は、4mg~16mg、すなわち2~8錠(または2~8カプセル)となります。これを以下のパターンのいずれかにあてはめて服用します。

パターン 第一日 第二日 第三~七日
アサ ユウ アサ ユウ
なし なし なし なし
なし なし なし
なし なし
なし

定期的な検査が必要です

メトトレキサートを服用していると、肝機能障害、白血球減少、貧血、血小板減少が見られることがありますので、定期的な血液検査でチェックを行います。これらが見られた場合、減量することがあります。また口内炎など消化器症状がひどい場合も、メトトレキサートの濃度が高い場合があるので、減量を検討します。また、副作用を緩和する葉酸というビタミンの一種(商品名、フォリアミン)を2日ほど遅れて(上の表の第三日または第四日に)服用する対策をとる場合があります。

腎機能障害があると、メトトレキサートが体内に残りやすくなるので、少なめの量を投与することになります。血液のクレアチニンの値が上昇しているような、やや進行している腎機能障害の場合は、メトトレキサートをかなり少なめの量にするか、使用しない場合もあります。末期腎不全または人工透析中の場合は禁忌とされています。腎機能障害は、高齢、高血圧、糖尿病など多くの方に見られますので、注意が必要です。

B型肝炎の既往感染者では(B型肝炎は治ったので心配いらないといわれている場合でも)、B型肝炎ウイルスが再出現していないことを時々確認しますし、結核既往感染や濃厚接触者では、慎重な診察と場合によってはレントゲン検査や喀痰の検査で確認します。またメトトレキサート自体が肺障害をきたすことも稀にはあるので、風邪でもないのに咳や呼吸困難が持続する場合は、単純レントゲンやCTで検査します。

妊娠について、熱中症のとき

催奇形性がありえるので妊娠に際しては服用を中止する必要があります。男女とも計画的な妊娠の少なくとも3ヶ月前には服用を中止すること、さらに女性では服用の終了後少なくとも1回の月経周期を経ることが推奨されています。授乳時にも服用を避けるようにします。

脱水が著しい場合(夏季の熱中症など)は薬剤の濃度がかなり高くなりえるので、脱水状態が改善されるまでは服用を避けたほうがよいと思われます。とくに熱中症になりやすく腎機能の低下していることの多い高齢の方は注意が必要です。

最後に

副作用や心配すべきことばかり書きましたが、メトトレキサートは、全体としてみれば継続性がよい、すぐれた薬剤です。効果が確かで、かつ安全に服用できている方がほとんどであるということです。服用の仕方、副作用の発見などに注意して、上手に使用していくことが、重要です。

参考文献

2017/Jan, 2014/Dec