免疫疾患の解説一覧

RS3PE症候群

概要

1985年にMcCarty DJらが、高齢男性8名(59歳から82歳)、高齢女性2名(65歳と66歳)の、(1) 予後の良い (Remitting)、(2) リウマチ因子陰性 (Seronegative)、(3) 対称性 (Symmetrical)、(4) 手背足背の圧痕浮腫を伴う滑膜炎 (Synovitis With Pitting Edema)、の頭文字をとって、RS3PEを記載した。
R=remitting, S3=seronegative, symmetrical, synovitis, PE=pitting edema

高齢発症の血清反応陰性の多関節炎のなかで、末梢の圧痕性浮腫を伴う場合は本疾患を考える必要がある。リウマチ性多発筋通症の鑑別、悪性腫瘍の除外などが重要である。HLA-B7, CW7, DQW2陽性率が高いとされ病態との関連が示唆されるものの、確からしい病因は不明である。

症状

比較的急な発症の、左右対称性の手指・手の関節・滑膜炎炎、手の圧痕性浮腫が典型である(ボクシンググローブハンドと呼ばれることもある)。肘・肩・膝・足に関節症状が出現することもある。RS3PEの27例の報告では、多発関節炎の部位は、中手指節関節(MCP)81.5%、近位指節間関節 (PIP)70.4%、手首55.5%、肩48%、肘11.1%、膝33.3%、足首25.9%であった。炎症に伴う全身倦怠感や微熱を認めることがある。

検査所見

通常、レントゲン検査で関節炎の部位に骨びらんなどの破壊像をみとめない。MRIでは手の腱鞘滑膜炎の所見がみられる。自己抗体は通常陰性である。非特異的炎症所見であるCRP上昇や血沈亢進がみられる。

治療

比較的少量のステロイド(プレドニン10~15mg/日)によく反応し、疾患は改善傾向を示す。多くの場合寛解する。通常ステロイドのみで治療経過はよくステロイドの減量・中止が可能であるが、一部に治療抵抗性である場合があって、MTXなどの免疫抑制薬が検討される。難治性である場合、悪性腫瘍の鑑別が重要である。

paraneoplastic RS3PE (腫瘍随伴性RS3PE)

末梢の対称性の圧痕を伴う浮腫が悪性腫瘍の初期症状であることがある。前立腺癌、胃癌、大腸癌が多く、他に悪性リンパ腫、CLLでもみられた。発熱、悪液質、体重減少などの全身症状の出現をみる場合は (paraneoplastic RS3PE 50%に対してisolated RS3PE 9%)、悪性腫瘍の検索が必要である。また、paraneoplastic RS3PEではステロイドに対する反応性が悪いことが多い。

参考文献

2014/Nov, 2012