免疫疾患の解説一覧

関節リウマチ Rheumatoid arthritis (RA)

概要

リウマトイド因子や抗CCP抗体の出現などの免疫異常を伴う末梢関節を中心とした多発滑膜炎で、朝方に強い関節のこわばり、関節の疼痛や腫脹にはじまり、炎症細胞浸潤による軟骨破壊や、パンヌス形成による骨びらんにより関節が破壊される。進行すると関節の変形、腱の損傷、関節脱臼、関節強直癒合などをきたし、関節機能が障害され、日常動作や日常生活を損なう。

病態に関与するサイトカインなどに対する抗体(あるいは阻害蛋白質)を人工的に合成し、これを投与して病気の活動性を抑える治療が普及している。こうした薬剤は細胞を用いて大量に合成されるので生物学的製剤ともよばれ高い治療効果を示す。関節リウマチの診療は疾患活動性の評価方法だけでなく、診断基準も新しくなり、早期診断、早期寛解をめざした治療が行われ21世紀になり大きく進歩した。

関節リウマチの概念図

疫学と成因

日本人の有病率は、0.3-1.5%程度である(患者数は約50万-100万人)。男女比は約1:4で女性に多く、好発年齢は30-50才。

発症には遺伝因子と環境因子の両方が重要とされる。遺伝要因として特定のHLA型、T細胞活性化関連遺伝子、NF-κB関連遺伝子、シトルリン化関連遺伝子などが指摘されており、環境要因としては、喫煙習慣、歯周病をおこす菌であるPorphyromonas gingivalisの感染、腸内細菌叢の変化などとの関連が指摘されている。ある種の遺伝的背景を持った人に環境因子が加わることにより免疫寛容が破綻して発症すると考えられる。

病態

臨床的な関節炎の発症に先立ち、自己抗原のシトルリン化、免疫寛容の破綻による抗シトルリン化蛋白抗体(ACPAまたは抗CCP抗体)が出現し自己免疫が成立する。

B細胞による自己抗体産生、T細胞分化と活性化、特にTh17細胞への分化誘導とTreg細胞への分化抑制により炎症が促進されやすい環境となる。さらにインターロイキン6(IL-6)などの炎症性サイトカインの刺激を受け、滑膜の慢性炎症と増殖によりパンヌス(pannus)が形成される。pannusは、TNFα、IL-1、IL-6等の炎症性サイトカインを産生し、軟骨を破壊するMMP-3のような蛋白分解酵素や、破骨細胞の分化誘導を担うRANKLなどの発現を誘導し関節を破壊していく。

さらに関節破壊による物理的刺激によりさらなる関節破壊の悪循環が生じ、関節が変形、固定化、関節の強直に至る。関節で産生された炎症性サイトカインは血流にのって全身に伝達され、肝臓での急性期蛋白質の産生(CRP、血清アミロイドA蛋白、フィブリノーゲン、炎症性貧血を引き起こすhepcidin、血小板産生を促すThrombopoietinなど)や、脂質代謝異常、インスリン抵抗性、動脈硬化、骨粗鬆症など様々な慢性炎症に関連する合併症を引き起こす。

また血清アミロイドA蛋白が高値で持続することにより続発性アミロイドーシスの合併を生じることがある。炎症による細胞損傷から放出されダメージ信号を伝えるdanger-associated molecular patterns (DAMPs)なども炎症の持続に関与すると考えられている。

症状

1 関節症状

末梢の小関節、特に手指MCP関節、PIP関節、手関節、足趾MTP関節などに好発する多発関節炎である。左右対称性に侵されることが多い。朝方の関節のこわばりを自覚したり、天気が下り坂になるときに関節症状の悪化を訴えることが多い。

進行した関節変形として、手指のスワンネック変形やボタンホール変形、尺側偏位、足趾の外反母趾、内反小趾がみられる。脊椎は通常は障害されないが、頸椎の環軸関節には滑膜が存在するため障害されることがある。併発する骨粗鬆症の進行で椎体変形をきたすことがある。

2 関節外症状

活動性の高い関節リウマチでは関節外症状がみられることがある。関節近傍伸側に見られる皮下結節であるリウマトイド結節や、肺病変がしばしば見られる。血管炎症状(潰瘍などの皮膚症状や眼強膜炎、末梢神経障害など)を合併する場合は、特にリウマトイド血管炎(本邦では悪性関節リウマチと呼称)として区別することがある。

検査所見

1 血液検査

血液検査として、リウマトイド因子(rheumatoid factor: RF)、抗CCP抗体(anti-cyclic citrullinated peptide antibody: ACPA)が診断に用いられる。抗CCP抗体の検査では環状シトルリン化ペプチドに反応する抗体を測定しており、複数のシトルリン化蛋白質を同時に検出している。他にも様々な自己抗体が報告されており、抗CCP抗体が陰性の場合でも抗カルバミル化蛋白抗体(anti-carbamylated protein antibody)が陽性であることが報告されている。疾患活動性の指標として、炎症を示す赤血球沈降速度(ESR)、CRP、血清アミロイドA蛋白 (SAA)の上昇があり、アルブミンの低下、炎症性貧血の進行、血小板数増加、IgG増加なども慢性炎症を反映する。マトリクスメタロプロテナーゼ3(MMP3)の値は、関節破壊と相関するといわれるが、腎障害があると上昇しやすく解釈に注意する。

2 画像検査

関節レントゲンにて、軟骨破壊による関節裂隙狭小化、骨びらんの有無を評価し、関節破壊を判断する。関節MRI撮影では、骨びらんがレントゲンより早く把握できること以外に、滑膜炎、骨髄浮腫などの単純レントゲンでは得られない情報が得られ、早期での病態把握に有効である。関節超音波法は、ベッドサイドで簡単に関節の評価が可能で、炎症を起こしている滑膜の血流をドップラー法で評価することにより、関節滑膜の質的な評価ができるため広まりつつある。

診断

旧来の1987年基準は早期診断に不向きであったが、2010年のACR/EULAR診断基準では関節破壊がなくてもスコアリングにより関節リウマチと診断できる。前提条件として臨床的に滑膜炎があるということと、他の疾患を除外することが必要になっている。複数の小関節 (PIP、MCP、2-5MTP、手関節)や大関節の症状、RF(リウマトイド因子)や抗CCP抗体といった異常抗体の出現、CRPや血沈の上昇(炎症反応の存在)、6週間以上の症状持続、などをスコア化し判断される。

関節リウマチは通常女性に多い(男女比1:4)が、高齢発症関節リウマチ(elderly onset rheumatoid arthritis; EORA)では男性にやや多く、リウマトイド因子や抗CCP抗体の陽性率が低い。リウマチ性多発筋痛症様の発熱や体重減少を伴い、大関節優位な少関節炎として発症することがあるためリウマチ性多発筋痛症との鑑別が難しい場合もある。

関節リウマチと鑑別すべき疾患には、リウマチ性多発筋痛症、RS3PE症候群、膠原病、脊椎関節炎、乾癬、痛風、偽痛風等がある。手指の腫脹硬化(全身性強皮症、混合性結合組織病)、筋肉痛(多発性筋炎、皮膚筋炎、混合性結合組織病など)を関節痛と訴えていないか、に注意する。膝のみ、手指のDIPのみの痛み・変形(ヘバーデン結節)は変形性関節症を疑う。炎症を伴わない全身性の痛みは繊維筋痛症を疑う。SLEで生じるJaccoud関節症により関節リウマチ様の関節変形をきたすことがある。

関節リウマチに進行しやすい特徴的関節症状

関節リウマチに進行しやすい関節痛には特徴があり、EULARから公表されている。特徴を有する場合16%で抗CCP抗体陽性、そのうち63%が1年以内に臨床的に関節リウマチを発症する。こうした特徴を有する場合は、定期的フォローやMRIによる滑膜炎、骨髄浮腫、腱鞘炎などの検出に努める。また、関節リウマチ発症による関節炎の持続や関節損傷への進展阻止には、初期相での介入がより有効であると考えられており、治療タイミングの検討が重要である。

他疾患ではなく、また、他の疾患として説明がつかない、臨床的関節炎はないが関節痛を訴える患者に対して以下の7項目を考慮し、4つ以上あれば特異度93.6%以上(3つであれば74.4%)で関節リウマチのリスクがある関節痛とされる。

病歴 ・1年未満に現れた関節症状
・MCP関節に症状がある
・1時間以上続く朝方のこわばり
・早朝に最も症状が強い
・親子兄弟に関節リウマチ患者がいる
所見 ・拳が握りにくい
・MCP関節のスクイーズテスト陽性(MCP関節全体を握ると痛みが生じる)
ACR/EULAR 2010年分類基準
適応対象集団
1ヶ所以上の関節に明確な臨床的滑膜炎がみられる
滑膜炎をより妥当に説明する他の疾患がみられない(SLE, 乾癬, 痛風などの除外)
スコア(A~Dを合計)
A: 罹患関節
大関節1ヶ所 0 * 肩、肘、股、膝、足
大関節2~10ヶ所 1  
小関節1~3ヶ所 2 * PIP,MCP,2-5MTP,Wrist
小関節4~10ヶ所 3  
11ヶ所以上(1ヶ所以上の小関節) 5 * 顎・胸鎖・肩鎖関節を含めてよい
B: 血清学的検査
RF(-)、抗CCP抗体(-) 0
いずれか低値陽性 2
いずれか高値陽性 3 * 正常上限の3倍を超える
C: 急性期反応物質
CRP正常、ESR正常 0
いずれかが異常 1
D: 症状の持続
6週未満 0
6週以上 1

* スコア6/10以上で、RAと分類してよい

過去に用いられてきた基準 (ARA1987年分類基準)
項目
1: 朝のこわばり(1時間以上)
2: 同時に、3領域以上の関節炎(左右の、PIP、MCP、手、肘、膝、足、MTPの計14)
3: 手、PIP、MCPの少なくとも1領域以上の関節炎
4: 対称性の関節炎(2:で定義した領域において)
5: リウマトイド結節
6: RF陽性
7: X線変化(手/指関節の骨びらん、近傍の脱石灰化)
鑑別を要する疾患

頻度、類似性、2010年ACR/EULAR分類基準スコア偽陽性の頻度などを総合して、鑑別しなければならない疾患を、鑑別の難易度高・中・低の3群に分類している。(日本リウマチ学会)

鑑別難易度
ウイルス感染に伴う関節炎(パルボウイルス、風疹ウイルスなど)、全身性結合組織病(シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、皮膚筋炎/多発性筋炎、全身性強皮症)、リウマチ性多発筋痛症、乾癬性関節炎
変形性関節症、関節周囲の疾患(腱鞘炎、腱付着部炎、肩関節周囲炎、滑液包炎など)、結晶誘発性関節炎(痛風、偽痛風など)、血清反応陰性脊椎関節炎(反応性関節炎、掌蹠膿疱症性骨関節炎、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患関連関節炎)、全身性結合組織病(ベーチェット病、血管炎症候群、成人スティル病、結節性紅斑)、その他のリウマチ性疾患(回帰リウマチ、サルコイドーシス、RS3PEなど)、その他の疾患(更年期障害、線維筋痛症)
感染に伴う関節炎(細菌性関節炎、結核性関節炎など)、全身性結合組織病(リウマチ熱、再発性多発軟骨炎など)、悪性腫瘍(腫瘍随伴症候群)、その他の疾患(アミロイドーシス、感染性心内膜炎、複合性局所疼痛症候群など)

治療

治療の基本的な方針として、Window of opportuntity(早期の段階で治療)、Treat to target (T2T)(明確な治療目標で治療)、Tight control(厳密に管理する)が唱えられている。疾患活動性、予後因子の存在、年齢、併存症などを勘案し治療方針を決定する。低疾患活動性または寛解を目標とし、達成できなければ1~3ヶ月ごとに治療方法を見直すことが大切である。

1 抗リウマチ薬(disease modifying anti-rheumatic drugs: DMARDs)

疾患の経過を変えうる。免疫抑制作用および免疫調節作用により効果が発現するが、作用機序が明確ではないものもある。葉酸代謝拮抗剤であるメソトレキサート(Methotrexate: MTX、リウマトレックス、メトレート、メトトレキサート)の間欠投与(週1~2日のみ内服)は標準的治療薬でありアンカードラッグ(anchor drug)とされ有効性が高い。間質性肺炎、骨髄抑制、肝障害などの副作用に留意が必要、特に腎機能低下では注意を要する。他に、サラゾルルファピリジン(Salazosulfapyridine)、ブシラミン(Bucillamine)、イグラチモド(Iguratimod)、タクロリムス(tacrolimus)などがある。

2 非ステロイド系抗炎症薬(nonsteroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs)

アラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(cyclooxygenase: COX)を阻害し、疼痛・発熱物質であるプロスタグランジン産生を抑制する。恒常的に発現しているCOX1と炎症時に発現誘導されるCOX2がある。COX1阻害作用の強いものは消化性潰瘍が起こり易く、COX2選択的阻害剤(セレコキシブなど)の使用が望ましい。免疫反応そのものは改善させず、疾患活動性の改善効果や関節破壊の抑制効果には乏しい。

3 ステロイド(steroid)

関節痛の抑制だけでなく免疫抑制により、疾患活動性も抑制できる強力な薬剤である。1948年に関節リウマチに投与され、初めてその抗炎症作用が知られるようになったが、投与量と投与期間によって、感染症、骨粗鬆症、胃潰瘍、中心性肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧さらには心血管イベントの増加を含む多彩な副作用リスクが増加する。短期間(できれば半年以内)の活動性抑制の目的で関節内投与や内服薬で使用される。

4 生物学的製剤(biologics)

病態に関与する重要な分子に対して、抗体や受容体細胞外領域を利用して阻害する。その劇的な効果により、使用が増加している。炎症性サイトカインであるTNFαを阻害するTNF阻害薬は、最初に開発された生物学的製剤であり現在では多くの種類があり(infliximab,etanercept,adalimumab,golimumab,certolizumab)、一部では値段の安い後発製剤(バイオシミラー)も登場している。効果発現が早く、とくにMTX併用では高い寛解導入率が期待できる。MTXが使用できない場合は、MTX非使用でも十分な効果が得られる非TNF阻害薬(tocilizumab,abatacept)もある。生物学的製剤は分子量が大きく点滴や皮下注射として使用される。

5 JAK阻害剤(JAK inhibitor)

各種インターロイキンやエリスロポエチンやG-CSFなどの造血因子、インターフェロンなどの各種サイトカインが細胞に信号を伝える時に細胞内のチロシンキナーゼであるJAK(Janus kinase)が活性化される。JAKにはJAK1、2、3、Tyk2の4つの分子があり、各種サイトカインによって活性化されるJAKの種類が異なる。2013年にJAK1とJAK3やや弱くJAK2を阻害するトファシチニブ(Tofacitinib)が承認、2017年にJAK1とJAK2を阻害するバリシチニブ(Baricitinib)が承認された。トファシチニブは主に肝代謝で、バリシチニブは主に尿から排泄される。注射薬の生物学的製剤と同程度の効果を内服薬で達成できる。しかし、JAKを活性化する多数のサイトカイン信号を抑制する可能性があり造血障害や感染症とくに帯状疱疹に留意する。生物学的製剤使用時と同様、投与開始前に肝炎や結核などの感染症の有無や感染症のリスクを評価して慎重に投与する。

免疫抑制剤や生物学的製剤、JAK阻害剤を開始する際には、活動性の感染症が存在する場合はその治療を優先する。高齢者、呼吸器疾患罹患者、6mg/日以上のステロイド内服、糖尿病などは、重篤な感染症のリスク因子である。tocilizumab投与時は、感染症の診断に頻用するCRPの上昇がみられないことがあり、慎重な判断を要す。MTXや生物学的製剤の治療によって肝炎ウイルスの再活性化がおこりえるため、治療前にHBs抗原、HBs抗体、HBc抗体、HCV抗体を測定し、陽性の場合は肝臓専門医に相談する。結核発症のリスクがある場合や潜在結核が疑われる場合にはINHの予防内服を行う。

6 手術療法

関節破壊がおきると薬物療法では関節機能の改善は見込みにくく、手術による機能回復が必要となる。生物学的製剤の進歩で、関節破壊の抑制がかなりできるようになり、大関節の手術(膝関節、股関節などの人工関節置換手術)は減少傾向となっているが、手指などの小関節の機能改善手術はむしろ増加し、より高い関節機能の改善が目指されている。

2019年改訂EULAR recommendations

括弧内は(証拠レベル、推奨レベル、同意)

包括的原則
A 関節リウマチの治療は最善を目指し、患者とリウマチ医の間の共通の決定に基づかなければならない (-,-,9.7)
B 治療決定は、疾患活動性、安全性、併存症や構造的損傷の進行など患者の因子に基づく (-,-,9.8)
C リウマチ医とは主に関節リウマチ患者を診療する専門家である (-,-,9.9)
D 不均一な関節リウマチに対して異なる作用機序を持つ複数の薬物を必要とし、生涯で逐次に複数の治療を行う場合がある (-,-,9.9)
E 関節リウマチでは個人、医療費、社会に重い負担が生じ、診療ではこれら全てを考慮する (-,-,9.4)
推奨
1 関節リウマチと診断されたらできるだけ早くDMARDによる治療を開始する (1a,A,9.8)
2 すべての患者で持続的寛解または低疾患活動性の目標達成を目指す (1a,A,9.7)
3 疾患活動性がある場合は1~3ヶ月毎に診察し、治療開始後3ヶ月内で改善なければ、あるいは、6ヶ月までに目標達成しなければ治療を変更する (2b,B,9.3)
4 最初にMTXを含む治療を行なう (1a,A,9.4)
5 MTX禁忌(または早期不耐)ではレフルノミドまたはスルファサラジンで最初の治療を考慮する (1a,A,9.0)
6 csDMARD開始または変更時、様々な用量や投与法で短期ステロイドを考慮するが臨床的に可能な限り早期減量する (1a,A,8.9)
7 最初のcsDMARDで目標達成されない場合、予後不良因子なければ他のcsDMARDを考慮する (5,D,8.4)
8 最初のcsDMARDで目標達成されない場合、予後不良因子あればbDMARDまたはtsDMARDを追加 (1a,A,9.3)
9 bDMARDとtsDMARDはcsDMARDと併用する。csDMARDを併用できない場合はIL-6阻害剤とtsDMARDは他のbDMARDと比較して利点があるだろう (1a,A,8.9)
10 bDMARDやtsDMARDが失敗した場合、他のbDMARDやtsDMARDを考慮する (1b,A,8.9) 1つのTNF阻害剤療法が失敗した場合、別の作用機序の薬剤や別のTNF阻害剤を使用しても良い (5,D)
11 ステロイド漸減後も持続的寛解状態で、特にcsDMARD併用時はbDMARDやtsDMARDの漸減を考慮できる (1b,A,9.2)
12 持続的寛解状態であればcsDMARDの漸減を考慮できる (2b,B,9.0)

合併症を有する関節リウマチの治療

合併症を有する高リスクの関節リウマチ患者の治療に関してエビデンスレベルは低いが専門家の意見として2015年ACRから公表されており参照されたい。

中等度~高度疾患活動性関節リウマチで高リスク合併症を有する場合の推奨
1 うっ血性心不全
TNF阻害剤より、DMARDsの組み合わせ、又は非TNF阻害剤、又はトファシチニブを使用する(moderate to very low )。TNF阻害剤治療中に心不全が増悪する場合には他のTNF阻害剤に変更するより、DMARDsの組み合わせ、又は非TNF阻害剤、又はトファシチニブを使用する(very low )。
2 B型肝炎(HBsAg陽性HBsAb陰性)
有効性のある抗ウイルス療法中あるいは療法後であれば、通常の関節リウマチと同様でよい(very low)。未治療の慢性B型肝炎では免疫抑制療法開始前に抗ウイルス療法を導入する。既往感染(HBsAg?、HBsAb+、HBcAb+)では定期的にウイルス量をモニターしながら通常の関節リウマチの治療を行なう。
3 C型肝炎(HCV陽性、HCVRNA陽性)
近年有効性の高い抗ウイルス剤が登場し、有効性のある抗ウイルス療法中あるいは療法後であれば、通常の関節リウマチと同様の治療でよい(very low)。有効性のある抗ウイルス療法を行なっていない場合はTNF阻害剤よりMTXやレフルノミド以外のDMARDs(スルファサラジンなど)を使用する(very low)。
4 治療の既往、又は未治療の悪性腫瘍に関しての証拠レベルは低く、主に専門家の意見や経験による治療既往又は未治療の皮膚癌では、生物製剤やトファシチニブよりDMARDsを使用する(very low)。
リンパ増殖性疾患の既往がある場合は、TNF阻害剤よりリツキシマブを使用する(本邦では保険適応なし)(very low)。あるいは、DMARDs、アバタセプト、トシリズマブを使用する(very low)。
固形癌の治療既往では、通常の関節リウマチと同様でよい(very low)。
5 重篤な感染症の既往
重篤な感染症の既往がある場合はTNF阻害剤よりDMARDsの組み合わせを使用する(very low)。TNF阻害剤からアバタセプトに変更して感染症リスクが減少したという報告もある(very low)。
関節リウマチ患者のワクチン接種に関して

不活化ワクチン(肺炎球菌、インフルエンザ、B型肝炎)や組換えワクチン(ヒトパピローマ)はDMARD単剤、DMARD複数併用、TNF阻害剤、非TNF阻害剤使用中でも接種を推奨する。50歳以上の関節リウマチ患者に生物製剤やトファシチニブを開始する前に水痘ワクチン接種(弱毒生ワクチン)を条件付きで推奨するが、水痘ワクチン接種後2週間は生物製剤を開始しない。TNF阻害剤や非TNF阻害剤使用中は水痘ワクチンを接種しない。(本邦では成人の予防接種に関しては通常は保険診療でない。またワクチン接種に際してはアレルギーの既往や他の合併症の有無にも注意が必要である。)

関節リウマチの呼吸器合併症

関節リウマチの呼吸器系の合併症として、中枢気道病変である気管支拡張症、末梢気道病変である細気管支炎、さらに間質性肺炎と器質化肺炎がある。これらは関節リウマチによる免疫異常の関節外病変と考えられており、関節リウマチと診断された早期から胸部CTや肺機能検査でスクリーニングを行ない、その後の呼吸器感染症や呼吸器合併症のリスク評価をしておくことが勧められる。

1 中枢気道病変-気管支拡張症(bronchiectasis)

気道の慢性炎症により、気管支壁の肥厚と内径拡大を特徴とする気管支拡張症をきたし、細菌感染症の基礎疾患となる。早期では単純レントゲンでは見落とされやすいが、HRCT(high resolution CT)検査では30~40%に気管支拡張症が見られ、滑膜炎と類似の慢性炎症が気管支壁を破壊すると考えられている。画像上は気管支の内径が伴行する肺動脈径よりも太い場合に気管支拡張症と診断するというNaidichらの定義が広く認められている。
気管支拡張症では気道感染の反復と菌の定着がみられ、生物学的製剤投与での肺炎リスクは非合併患者と比べて8.7倍に上昇するとの報告がある。これは緑膿菌、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌などの菌の定着が起こりやすいためと考えられる。非結核性抗酸菌症(NTM: nontuberculous mycobacteria)は気管支拡張症と関連するとされる。
治療は、無症状では治療を行わないことも多い。去痰剤や気流閉塞があり息切れがある場合は気管支拡張剤を投与する。発熱、喀痰増加など急性増悪時には抗菌薬を投与する。

2 末梢気道病変-細気管支炎(bronchiolitis)

関節リウマチの免疫異常により、中枢気道病変とともに末梢気道病変(small airway disease)が生じると考えられる。関節リウマチ患者の肺機能検査で、30%に末梢気道閉塞がみられ、剖検では61%と報告されている。病理学的には4つの亜分類が提唱されている。

細胞性細気管支炎: cellular bronchiolitis
濾胞性細気管支炎: follicular bronchiolitis
閉塞性細気管支炎: obstructive bronchiolitis
細胞性破壊性細気管支炎: cellular and destructive bronchiolitis

治療は、少量マクロライド維持療法(エリスロマイシン400mg-800mg/day、無効ならクラリスロマイシン200mg/day投与することもあるが、長期投与でクラリスロマイシン耐性NTMを誘導する恐れがある)、悪化時には抗菌薬を投与する。症状が持続する場合は吸入ステロイドの使用で過剰な免疫を抑える。

3 間質性肺炎(interstitial pneumonia: IP)

HRCTでは関節リウマチ患者の20~30%に間質性肺炎が合併する。間質性肺炎を見た場合は、MTXなどによる薬剤性肺障害、ニューモシスチス肺炎 (PCP)、非定型肺炎などの感染症を鑑別する必要がある。組織学的分類は特発性間質性肺炎の組織分類に準じる。

通常型間質性肺炎: usual interstitial pneumonia (UIP)
非特異性間質性肺炎: nonspecific interstitial pneumonia (NSIP)
器質化肺炎: organizing pneumonia (OP)
びまん性肺胞障害: diffuse alveolar damage (DAD)
リンパ球性間質性肺炎: lymphocytic interstitial pneumonia (LIP)

高いエビデンスの治療法はないが、経験的にステロイドが投与されることが多い。ステロイド抵抗性であれば免疫抑制剤が併用される。蜂巣肺を呈するUIP症例の予後は不良とされる。経過中にPCPなどの感染症を契機に急性増悪し、DADとなり予後不良となることがある。

4 器質化肺炎(organizing pneumonia: OP)

咳嗽や発熱などの症状が亜急性に進行する抗菌薬不応性の肺炎である。主病変は肺胞腔にあり、病理組織では炎症性の滲出物に線維化が加わった病変が肺胞道や肺胞嚢を充填する肉芽様組織を特徴とする。以前はBOOP (bronchiolitis obliterans organizing pneumonia)と呼ばれていたが、細気管支まで炎症が及ぶことは少ないため 2002年にOP (organizing pneumonia)と改名された。胸部CTでは、多発性の浸潤影が典型である。抗菌剤に反応しない浸潤影を認めた時にはOPを疑う。

ステロイド(0.5~1mg/kg)に対する反応性はよく、線維化を残さず改善することも多い。ステロイド漸減後に関節リウマチの活動性が悪化した場合は、DMARDsや生物学的製剤の再開は支障ない。難治性の場合は悪性腫瘍との鑑別や、免疫抑制剤の併用が必要になることもある。

病期分類

Steinbrockerの病期分類
Stage 所見
Ⅰ: 初期 X線上、骨破壊像がない。
X線上、骨粗鬆はあってよい。
Ⅱ: 中期 X線上、骨粗鬆がある。軽度の軟骨下骨の破壊はあってもなくてもよい。軽度の軟骨破壊はあってもよい。
関節変形はない。関節可動域の制限はあってよい。
関節近傍の筋萎縮をみとめる。
リウマチ結節、腱鞘炎などの関節外軟部組織の病変はあってよい。
Ⅲ: 進行期 X線上、軟骨、骨破壊像がある。
亜脱臼、手の尺側偏位、関節過伸展などの関節変形がみられる。繊維性、骨性強直はみられない。
広範な筋萎縮がみられる。
リウマチ結節、腱鞘炎などの関節外軟部組織の病変はあってよい。
Ⅳ: 末期 繊維性、骨性強直がみられる。
Stage Ⅲの項目をみたす。
LarsenのX線のGrade分類
Grade 所見
0: 正常 辺縁部骨化など、関節炎と関係のない変化はあってもよい。
Ⅰ: 軽度変化 次のうち1つ以上が見られる
関節周辺部軟部組織腫脹
関節周囲の骨粗鬆
軽度の関節裂隙狭小化
Ⅱ: 明らかな初期変化 standard-X線にみられる侵食像と関節裂隙狭小化をみる。荷重関節の侵食像は除外する。
Ⅲ: 中等度破壊性変化 standard-X線にみられる侵食像と関節裂隙狭小化があり、侵食像はいずれの関節にもみられる。
Ⅳ: 高度破壊性変化 standard-X線にみられる侵食像と関節裂隙狭小化があり、荷重関節に骨変形をみるもの。
Ⅴ: ムチランス型変形 本来の関節構造が消失し、荷重関節に著しい変化を見る。
脱臼や骨性強直は二次的なもので, grade分類とは無関係である。
Steinbrockerの機能分類
Class 状態
Ⅰ: 不自由なし
Ⅱ: 制限はあるが、普通の活動はできる
Ⅲ: 仕事、身の回りの動作に大きな制限がある(要介助)
Ⅳ: 寝たきりか車椅子、身の回りのことがほとんどできない

疾患活動性の評価

1 CDAI (clinical disease acrivity index), SDAI (simplified disease acrivity index)
観察対象関節
肩関節 2
肘関節 2
手関節 2
手指(DIP除く) 20
膝関節 2
合計 28
疾患活動性 CDAI SDAI
22< 26<
中等度 ≦22 ≦26
≦10 ≦11
寛解 ≦2.8 ≦3.3
2 DAS28 (disease activity score 28 joints)
観察対象関節
肩関節 2
肘関節 2
手関節 2
手指(DIP除く) 20
膝関節 2
合計 28
TJC (/28) Tender joint count: 圧痛関節数
SJC (/28) Swollen joint count: 腫脹関節数
ESR (mm/時) Erythrocyte sedimentation rate: 赤血球沈降速度(赤沈)
CRP (mg/dl) C reactive protein: C反応蛋白
VAS (/100mm) Visual analogue scake: 患者の全般評価(アナログスケール)
3 ACRコアセット
観察対象関節
顎関節 2
胸鎖関節 2
肩鎖関節 2
肩関節 2
肘関節 2
手関節 2
手指(DIP除く) 20
手指(DIP) 8
股関節 2
膝関節 2
足関節 2
足根骨部 2
足趾(DIP除く) 20
コアセット項目
圧痛関節数
腫脹関節痛
患者による疼痛評価
患者全般活動性評価
医師による全般性活動性評価
身体機能評価
急性期反応物質 (ESR, CRP)

身体障害度の評価

HAQ (health assessment questionnaire)

難なくできる(0点) 少し難しい(1点) かなり難しい(2点) できない(3点)

カテゴリ 質問 0 1 2 3
[1] 衣類着脱、身支度 ・靴紐を結びボタンかけも含め自分で身支度ができますか?
・自分で洗髪できますか?
[2] 起床 ・肘なし、背もたれの垂直な椅子から立ち上がれますか?
・就寝、起床の動作ができますか?
[3] 食事 ・皿の肉を切ることができますか?
・茶碗やコップを口元まで運べますか?
・新しい牛乳パックの口を開けられますか?
[4] 歩行 ・戸外の平坦な地面を歩けますか?
・階段を5段登れますか?
[5] 衛生 ・身体全体を洗いタオルで拭くことができますか?
・浴槽につかることができますか?
・トイレに座ったり立ったりできますか?
[6] 伸展 ・頭上にある約2.3Kgの袋に手を伸ばして下に降ろせますか?
・腰を曲げて床にある衣類を拾えますか?
[7] 握力 ・自動車のドアを開けられますか?
・広口のビンのふたを開けられますか?
・蛇口を開けたり閉めたりできますか?
[8] 活動 ・用事や買い物ででかけることができますか?
・車の乗り降りができますか?
・掃除機をかけたり庭掃除など、家事ができますか?

頚椎病変のX線による評価

環軸椎前方亜脱臼(AAS: anterior(atlanto) axial subluxation)

a) 環椎歯突起間距離(ADI: atlanto-dental intervalまたは、ADD: atlanto-dental distance): 環椎前弓後縁と歯突起前縁との距離。3mm以上で環椎前方脱臼を疑う。

b) 脊髄余裕空間(SAC: space available for spinal cord): 歯突起後縁と環椎後弓前縁との距離。14mm以下で脊髄症状を起こしうる。

垂直亜脱臼(VS: vertical subluxation)

c) McGregor線(硬口蓋後縁と後頭骨外板最下縁を結ぶ線)より上方にでる歯突起の距離。男性0.7+-3.0mm、女性で1.6+-2.2mmが正常である。

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