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バーミンガム血管炎活動性スコアThe Birmingham Vasculitis Activity Score (BVAS) version 3

1994年に全身性血管炎の疾患活動性の評価のため作成され、その後BVAS version 2に改定され、主にANCA関連血管炎の臨床試験で使用された。9臓器の66症状で、診断時のスコアは予後と相関し、簡易なFive Factor Score (FFS)とも強い相関がある。BVAS version 3では9臓器56症状になり全身性血管炎として高安血管炎、結節性多発動脈炎、多発血管炎性肉芽腫症、顕微鏡的多発血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、IgA血管炎、クリオグロブリン血管炎、皮膚血管炎、ベーチェット病、中枢血管炎、リウマトイド血管炎がコホートに登録された。

巨細胞性動脈炎は、BVAS項目で測定される異常が限られ、BVASには適さず、活動性の巨細胞性動脈炎でBVAS=0となることもある(J Rheumatol 2016. 43(6)1078-1084.)。

BVASで上げられた評価項目の症状を有する場合、それが血管炎の活動性に由来するものではないか検討する必要がある。

BVAS採点ルール

  1. 疾患症状は「活動性血管炎に起因」する場合のみ採点する。症状が、感染症、薬剤、併存疾患など他の病因が考えられる場合は採点しない。
  2. 異常な症状が活動性血管炎によるが、新規発症や悪化でなければ、「持続」にチェック。
  3. 一部の項目は、専門医の意見や臨床検査、画像検査が必要だが、これらを除き診察時に全項目を記入する。
  4. 血清Cr値の変動幅は、初回診察時のみ採点する。
  5. (*)の症状は、「持続性」とはならず、活動性血管炎によるものであれば、常に新規または悪化を示唆する。

3ヶ月以上持続している所見はBVASで点数化するのではなく、vasculitis damage index (VDI)として治療に反応しない永続的な障害として別に考える。
3ヶ月未満~4週間以前からある症状の採点(持続0~33点)と、4週間以内の新規/悪化した症状(新規/悪化 0~63点)を分けて点数化し、合計点数を算出する。

    持続 新規/
悪化
1 全身症状 最大スコア 2 3
筋痛 筋肉の痛み 1 1
関節痛/関節炎 関節の痛みまたは関節の炎症 1 1
発熱 38℃以上(口腔/腋窩) 38.5℃以上(直腸) 2 2
体重減少 2kg以上 食事制限なしでの乾燥体重の減少 2 2
2 皮膚病変 最大スコア 3 6
梗塞 組織壊死または線状出血の領域 1 2
紫斑 外傷のない皮下または粘膜下出血 1 2
潰瘍 皮膚の連続性の断裂 1 4
壊疽 広範囲の組織壊死 2 6
他の皮膚血管炎 網状皮斑、皮下結節、結節性紅斑など 1 2
3 粘膜/眼病変 最大スコア 3 6
口腔潰瘍/肉芽腫 アフタ性口内炎、深部潰瘍、イチゴ状歯肉増殖 1 2
陰部潰瘍 性器または会陰部の潰瘍 1 1
唾液腺炎/涙腺炎 唾液腺または涙腺の炎症 2 4
眼球突出 眼球が2mm以上突出 2 4
上/強膜炎 強膜の炎症 1 2
結膜炎/眼瞼炎/角膜炎 結膜、眼瞼、または角膜の炎症(ただし、ドライアイ症候群によるものではない) 1 1
視力低下 以前の視力またはベースラインからの低下 2 3
突然の失明 急性の視力低下 * 6
ぶどう膜炎 ぶどう膜(虹彩、毛様体、脈絡膜)の炎症 2 6
網膜変化(血管炎、血栓症/滲出物/出血) 網膜血管の被覆または蛍光眼底造影検査で網膜血管炎所見;血栓性網膜動脈閉塞または静脈閉塞;軟性網膜滲出液(硬性滲出液を除く)/網膜出血 2 6
4 耳鼻咽喉病変 最大スコア 3 6
鼻出血/痂皮形成/鼻腔内潰瘍/肉芽腫 鼻腔鏡で認める、血性、粘液膿性の鼻汁、頻繁に鼻腔閉塞する淡褐色または濃褐色の痂皮、鼻潰瘍または肉芽腫性病変 2 4
副鼻腔病変 副鼻腔の圧痛または疼痛(画像検査で確認) 1 2
声門下狭窄 喉頭鏡検査で認める声門下炎症や狭窄による、喘鳴または嗄声 3 6
伝音性難聴 中耳病変による難聴(聴力検査で確認) 1 3
感音性難聴 聴神経または蝸牛の損傷による難聴(聴力検査で確認) 2 6
5 胸部 最大スコア 3 6
喘鳴 臨床診察で喘鳴が認められる 1 2
結節または空洞 画像検査で新たな病変が認められる * 3
胸水/胸膜炎 臨床評価で胸膜痛および/または摩擦音を認める。画像で胸水認める。 2 4
浸潤影 胸部X線またはCTで認められる 2 4
気管内の病変 気管内の偽腫瘍/潰瘍病変 注:平滑狭窄性病変はVDIに含め、声門下病変は耳鼻咽喉病変で記載 2 4
大量喀血/肺胞出血 移動性肺浸潤を伴う重度の肺出血 4 6
呼吸不全 人工呼吸管理を必要とする 4 6
6 心血管病変 最大スコア 3 6
脈拍消失 四肢いずれかで末梢動脈拍動消失 1 4
心弁膜症 A弁/M弁/P弁に臨床または心エコーで認める 2 4
心外膜炎 臨床評価で心膜痛/摩擦音が認められる 1 3
狭心痛 心筋梗塞や狭心症に至る典型的な胸痛の病歴 2 4
心筋症 心エコーで心室壁運動低下と心機能障害 3 6
うっ血性心不全 病歴または臨床検査による心不全 3 6
7 腹部 最大スコア 4 9
腹膜炎 腹膜炎を示唆する典型的な腹痛 3 9
血性下痢 最近発症したもの 3 9
虚血性腹痛 腸管虚血を示唆する典型的腹痛を画像や手術で確認 2 6
8 腎病変 最大スコア 6 12
高血圧 拡張期血圧 >95 mmHg 1 4
尿蛋白 尿検査で1+以上、または24時間尿蛋白排泄量 >0.2g 2 4
血尿 >1+又は≧10RBC/hpf(通常、RBC円柱伴う) 3 6
血清Cr 1.4~2.79mg/dL(最初の評価のみ) 2 4
血清Cr 2.8~5.69mg/dL(最初の評価のみ) 3 6
血清Cr ≧5.7mg/dL(最初の評価のみ) 4 8
血清Cr増加>30%又はCCr低下>25% 腎機能の進行性悪化。腎機能が前回値から悪化している場合に、各評価時に適用可能。 * 6
9 神経系病変 最大スコア 6 9
頭痛 慣れない持続性の頭痛 1 1
髄膜炎 髄膜刺激症状の臨床的所見 1 3
器質性錯乱 代謝、精神医学的、薬理学的、中毒性の原因がないが見当識、記憶、その他の知的機能障害。 1 3
痙攣(高血圧性ではない) 脳の異常な電気活動を示す臨床的または脳波検査所見 3 9
脳卒中 中枢神経系の血管障害による24時間以上持続する局所神経症状 3 9
脊髄病変 脊髄障害を示す臨床的または画像的所見 3 9
脳神経麻痺 脳神経麻痺の臨床的所見 – 第VIII脳神経麻痺は感音性難聴でスコア 眼球麻痺が圧迫によるものはスコア化しない 3 6
感覚性末梢神経障害 非デルマトーム分布の客観的感覚障害 3 6
運動性多発性単神経炎 単一または複数の特定の運動神経麻痺 3 9

BVAS version 3計算サイト

血管炎障害指標 Vasculitis Damage Index (VDI)

BVASが血管炎の活動性病変を記録するスコアであるが、VDIは3ヶ月以上持続する瘢痕、線維化、機能喪失などによる非可逆的損傷の指標である。活動性病変については、BVASを用いて記録する。血管炎の発症後に出現もしくは悪化した臓器損傷で、不可逆的と考えられ、3 カ月以上持続する症候の数を数える。血管炎発症前の障害は数えない。各症候には定義が付けられている(以下の表では略してある)。5以上では予後不良である。

Vasculitis Damage Index (VDI)

I.筋骨格 1.明らかな筋萎縮、筋力低下 2.変形や骨びらんを伴う関節炎 3.骨粗鬆症/脊椎圧迫骨折 4.無腐性骨壊死 5.骨髄炎
II.皮膚 1.脱毛 2.皮膚潰瘍 3.口腔潰瘍
III.耳鼻咽喉 1.難聴 2.鼻閉/慢性鼻汁分泌 3.鞍鼻/鼻中隔穿孔 4.慢性副鼻腔炎/X線による骨破壊所見 5.声門狭窄(未手術) 6.声門狭窄(手術後)
IV.呼吸器 1.肺高血圧 2.肺線維症 3.胸膜線維化 4.肺梗塞 5.慢性気管支喘息 6.慢性呼吸不全 7.呼吸機能異常
V.循環器 1.狭心症/冠動脈バイパス術後 2.陳旧性心筋梗塞 3.2 度目の心筋梗塞 4.心筋症 5.心弁膜異常 6.3 カ月以上続く心外膜炎、あるいは心外膜切除後 7.高血圧;拡張期血圧95mmHg、または降圧薬内服
VI.腎 1.予測または実測の糸球体濾過率(GFR)が50%以下  2.蛋白尿0.5g/日以上 3.腎不全末期
VII.消化器 1.腸管梗塞/腸管切除後 2.腸間膜動脈循環不全/膵炎 3.慢性腹膜炎 4.食道狭窄/上部消化管の手術
VIII.末梢循環 1.1 肢における脈の欠損 2.1肢における2回目の脈の欠損 3.2 肢以上の脈の欠損 4.大血管の狭窄 5.3 カ月超続く間欠性跛行 6.静脈血栓症 7.小さな組織欠損 8.大きな組織欠損 9.2回目の大きな組織欠損
IX.眼 1.白内障 2.網膜病変 3.視神経萎縮 4.視力低下・複視 5.1 眼の失明 6.もう 1 眼の失明 7.眼窩の破壊
X.精神神経 1.認知障害 2.主要精神障害 3.痙攣 4.脳血管障害 5.2 回目の脳血管障害 6.脳神経障害 7.末梢神経障害 8.横断性脊髄障害
XI.その他 1.性腺障害 2.骨髄障害 3.糖尿病 4.薬剤性膀胱炎 5.悪性腫瘍6.その他

(I~Xは血管炎による特異的臓器損傷、XIは治療に起因する損傷)

2026/May