大阪大学大学院医学系研究科
呼吸器・免疫内科学
Department of Respiratory Medicine and Clinical Immunology, Graduate School of Medicine, Osaka University
大阪大学医学部附属病院は大阪府豊能医療圏で重症新型コロナウィルス感染症(重症COVID-19)の重点医療機関です。
当院では呼吸器内科・集中治療部・救命センターがチーム医療にて診療にあたっております。
2023年2月7日現在250人以上の人工呼吸器装着した新型コロナウィルス感染症患者を診療にあたりました。呼吸器内科としては重症患者の豊富な診療実績を誇り、大阪府の感染爆発に対応しました。
「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)診療の手引き」に準拠した治療を行っています。
薬物療法としては「レムデシビルなどの抗ウィルス治療」「ステロイドやバリシチニブ、トシリズマブなどの抗炎症治療」人工呼吸療法としては集中治療部にて「腹臥位療法や筋弛緩剤を用いながら肺保護換気」「最重症例にはECMO(人工肺、人工心肺)を用いた管理」を行っております。
1)血中ウィルス陰性化できていない、リンパ球数が回復していない場合は再燃に注意
重症新型コロナウィルス肺炎ではステロイド治療で一旦改善後、「再燃」することが知られています。(「再燃(“recurrence”)や「リバウンド(“rebound”)」として報告されています。
当科では「人工呼吸器離脱後の再燃は「抗体が十分獲得できていない」「血中ウィルスPCRが陰転化していない」「重症病態で減少した末梢血リンパ球数が回復していない」という傾向を報告しました。(参考図)
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2)重症病態では抗炎症治療の影響も含めて、治療中は日和見感染に注意
重症新型コロナウィルス感染症治療2週間以降ではサイトメガロウィルス再活性化に注意が必要と発表しました。
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引用:J Med Virol. 2022 Mar;94(3):1067-1073. doi: 10.1002/jmv.27421. Epub 2021 Nov 3.
JMV-94-1067.pdf (nih.gov)
3)重症新型コロナウィルス感染症治療経過で腸管細菌叢の乱れが生じている
当講座と免疫制御学講座とで共同研究で行い、軽症及び重症COVID-19患者の便検体で腸管細菌叢を分析しました。重症COVID-19ではEnterococcusやLactobacillusが増加し、真菌の一種であるCnadidaの増加とも相関したいました。これらの腸管細菌叢の乱れ(dysbiosis)は半年経過しても残存していることもわかりました。この結果を踏まえ、我々はCOVID-19診療において腸管細菌叢の維持に留意しています。
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BMC Infect Dis. 2022 Jun 24;22(1):572. doi: 10.1186/s12879-022-07358-7.
Longitudinal alterations of the gut mycobiota and microbiota on COVID-19 severity (nih.gov)
(免疫内科・竹田潔研究室 前田先生の論文Figure引用)
4)新規治療法の開発(当院腎臓内科との共同研究)
当院腎臓内科にて新型コロナウィルスを吸着するカラムが開発されました。このカラムを用いた新型コロナウィルス吸着療法の臨床試験を共同で行い、その臨床効果を発表しました。
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http://www.protein.osaka-u.ac.jp/achievements/20221128/
我々、呼吸器・免疫内科は
「呼吸器内科・集中治療部・救命センター、各診療科」のオール阪大病院での診療チームの診療体制で治療にあたりました。
また、阪大病院だけでなく大阪府下の当科関連病院が診療だけではなく、患者検体や診療情報を共有しました。
この病院間ネットワーク(大阪大学臨床研究ネットワーク;OCR-net)と大阪大学の多くの研究室とタッグを組み、数多くの研究成果を発表しています。
オール阪大病院、オール阪大関連病院、オール阪大の強力なネットワークを築いて診療及び研究に挑んでいます。
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1)このOCR-netにより、当講座では血清エクソソームという小胞を単離・解析する手法で「血液一滴からCOVID-19の重症化を予測しうる蛋白」を見出し発表しました。
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https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2022/20221209_1
1)国際共同研究グループCOVID-19 Host Genetics Initiativeへの参加
当院は国内の共同研究グループ「コロナ制圧タスクフォース」に参加したいます。さらに世界最大のCOVID-19ゲノムワイド関連解析の世界最大規模の国際共同研究グループCOVID-19 Host Genetics Initiativeに参加することで世界規模でのCOVID-19患者の遺伝子解析に貢献しました。その結果は2021年7月8日にNature誌に発表されました。
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https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2021/20210729_2
2)コロナ制圧タスクフォースでは重症COVID-19の登録に大きく寄与し、その解析は本学遺伝統計学教室を中心に解析されました。
その結果COVID-19の重症化因子としてのDOCK2の発見し、重症化機序の解析を行い2022年8月8日Nature誌に発表されました。
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