免疫疾患の解説一覧

全身性エリテマトーデス Systemic Lupus Erythematosus (SLE)

概要

頭皮から足趾までの全身が侵されうる自己免疫疾患で、多彩な症状と多臓器にわたる障害により、その診療には内科臨床全般にわたる知識と経験が要求される。病態は抗原と抗体が結合した免疫複合体の沈着によって引き起こされる補体による組織障害(Gell&CoomsのIII型アレルギー)が中心とされる。

好発年齢は20~40歳台であり、男女比は1:10で若い女性が多い。「衛生行政報告書」によれば、特定疾患事業により難病の認定を受けた全身性エリテマトーデス患者総数は2010年現在5万7千人であり、難病疾患の中では潰瘍性大腸炎、パーキンソン病に次いで多い。

病因

多彩な自己抗体が検出されることが多く、病態の中心は抗二本鎖DNA抗体による免疫複合体の形成と補体による組織障害である。組織障害の発生場所は個々の症例によって異なるが、”全身性”の名前のとおり、腎臓、皮膚、肺、脳など多様な臓器に障害が発生する。患者の多くは妊娠可能な年齢の女性であり、女性ホルモンと病因との関連が疑われている。一卵性双生児において一方がSLEである場合の他方のSLE有病率は50%を超えるとする報告があり、また、北米では黒人女性の方が白人女性より有病率が高いとされており、遺伝的素因の存在が疑われる。

降圧薬ヒドララジン(アプレゾリン)、α-メチルドーパ(アルドメット)、抗不整脈薬のプロカインアミド (アミサリン)、抗てんかん薬のヒダントイン、抗精神病薬クロルプロマジン(ウィンタミン、ベゲタミン)など様々な薬剤を長期服用することにより薬剤性ループスと呼称されるSLEと同様の症状を惹起することがあり、未だ特定されていない外的誘因の存在も懸念される。高齢者など好発年齢をはずれてのSLE様病態の発症は、まず薬剤性ループスを疑う。パルボウイルスB19感染症でもSLE様の症状を呈することがあり、小児~児童間で感染するリンゴ病(伝染性紅班)患者と接触がなかったか問診し、パルボウイルスB19に対するIgM抗体価を検討する。

症状

皮膚粘膜症状

ループスエリテマトーデス:ループスは狼を意味するラテン語である。蝶形紅班や円板状皮疹が狼の咬傷を想起させることから由来するされる。皮膚症状から皮膚科を初めに受診されることも多い。

頬部紅斑(蝶形紅斑):頬骨部から鼻梁に広がる両翼を広げた蝶の形に類似した紅斑で、蝶形紅斑と呼称されることも多い。小児の皮膚筋炎においても同様の外観を呈することがあり鑑別を要する。

円板状皮疹(discoid lupus):慢性の鱗屑を伴う円板状皮疹は次第に周囲が肥厚し中央が陥没様になっていく。

日光過敏:肌の露出部位において紫外線暴露後に発赤や水泡形成などの反応を示す日光過敏が観察されることがある。

口腔内潰瘍:通常は無痛性の口腔内潰瘍で、典型的発生部位は硬口蓋である。医師の口腔内診察で初めて気づかれることがある。

環状紅斑:環状の紅斑局面である環状紅斑がみられることがある。

凍瘡様皮疹:手指末梢に凍瘡のような外観を呈することがある。爪周囲に紅斑が観察されることもある。

レイノー症状:SLEに特異的ではないが、寒冷刺激によって手指の色調が白色化・青紫色化するレイノー症状が観察される。

リベドー疹:四肢に淡褐色の網目状皮疹が見られることがある。SLEに特異的ではないが、リベドー疹と呼ばれ、観察された場合は血管炎もしくは腎炎の存在に留意する。

脱毛:頭皮に紅斑が形成され局所的な脱毛局面が形成される場合と。皮疹を伴わずびまん性の脱毛が発生する場合とがある。

深在性ループス:皮下脂肪組織に炎症が発生し、脂肪組織が自壊、瘢痕形成に至る。脂肪組織が豊富な顔面頬部や臀部などに好発し、外観上は陥凹した局面を形成する。触診上、内部の瘢痕を硬結として触れる。治癒後も皮膚陥凹が残りやすく治療は急がれる。

関節炎

発症時には多関節痛が多い。一般には、骨のびらん・破壊を伴わない非破壊性関節炎で、関節変形や強直は起こさない。例外的に、関節周囲の支持組織障害の結果、手指関節の亜脱臼があらわれるJaccoud関節症がある。

漿膜炎

胸膜、心外膜、腹膜といった漿膜に炎症が発生し胸膜炎や心外膜炎をおこし、炎症性浸出液が貯留する例がある。SLEでは通常は血清CRPは上昇しないが、こうした漿膜炎を生じた場合、しばしばCRPの上昇が観察される。胸部レントゲンでの胸水貯留像、心胸郭比の拡大、エコーによる心嚢液や腹水貯留、腹部膨隆が観察される。

腎障害

糸球体腎炎が基本である。シェーグレン症候群とは異なり、びまん性の間質性腎炎は少ない。様々な病理組織像がある。現在では国際腎臓学会の分類(ISN分類)が標準的である。1日尿蛋白3.5g以上のネフローゼ症候群を呈することがしばしばある。多くの場合、抗DNA抗体価は高く血清補体化は低値である。ループス腎炎ではISN分類における腎組織分類に基づいて治療が選択されることが多いため、腎生検による病理組織分類決定は強い禁忌がない限り行われることが望ましい。

神経障害

痙攣や意識障害が現れたり、統合失調症様症状を呈する神経障害 neuropsychiatric SLE (NPSLE)症例がある。末梢神経の障害がない場合 central nervous system lupus (CNS Lupus)という病名も用いられるが、両者の使い分けは必ずしも厳密ではない。血清の抗リポゾームP抗体、髄液のIL-6上昇を認めることがあり、診断の補助となる。末梢血中に抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントが検出される抗リン脂質抗体陽性例では多発脳梗塞を示すことがある (APS合併例)。

肺障害

間質性肺炎を合併することがある。肺胞出血は予後不良であり積極的な治療が必要となる。肺動脈性高血圧症は、混合性結合組織病や強皮症に比べると頻度は少なくなるが観察される例もある。

肝障害

しばしば肝機能障害を伴う。抗ミトコンドリアM2抗体陽性の胆汁うっ滞性肝硬変症 (PBC)や抗LKM-1抗体陽性の自己免疫性肝炎 (AIH)の合併もあるが、これらがない症例でも生化学データでのASTやALTといった肝逸脱酵素が上昇することがある。

ループス膀胱炎

頻度は少ないが膀胱壁の線維化がおこり膀胱容量が減少することがある。膀胱壁は肥厚しコンプライアンスが不良になる。1回尿量が150mL程度になり、著しい頻尿になる。

その他

腸炎による下痢・吸収不良・腹痛(ループス腸炎)、血小板減少による皮下出血や紫斑、赤血球減少(貧血)による動悸・息切れ、などが見られることがある。

検査所見

血液異常

白血球減少(4,000/mm3未満)、リンパ球減少(1,500/mm3未満)、血小板減少(100,000/mm3未満)、溶血性貧血(網状赤血球増加、ハプトグロビン低下)が観察されるが、これらはウイルス感染症でもしばしばみられる。発熱患者において白血球減少がみられた時、SLEの診断を誤って下すことを避ける目的で、アメリカリウマチ学会1997年診断基準では、”血球異常が2回以上観察されること”という付帯条件が付記された(on 2 or more occasions)。

検尿異常

ループス腎炎のACR criteriaでは、持続的尿蛋白>0.5g/日または3+以上、かつ/または 細胞性円柱(RBC、hemoglobin、granular、tubular、mixed)でループス腎炎を定義する。尿蛋白量は、随時尿で尿蛋白/尿クレアチニン比>0.5でも可能。細胞性円柱は、活動性所見(非感染症下で>5 RBC/hpf 又は >5 WBC/hpf、又は赤血球円柱か白血球円柱)でも可能。

抗核抗体

抗核抗体陽性のみで専門外来を紹介受診されることがあるが、抗核抗体陽性のみではSLEを示唆する訳ではなく、症状、理学所見、その他の検査異常を参考に、SLEを疑うこととなる。peripheral (shaggy) typeのパターンは抗DNA抗体を反映している。

自己抗体

抗2本鎖DNA抗体(抗ds-DNA抗体)は比較的疾患特異度が高いとされるが、抗1本鎖DNA抗体の場合は薬剤性ループスの可能性がある。抗DNA抗体以外に、抗Sm抗体、抗SS-A抗体、抗U1-RNP抗体、RF、抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、ACL-β2GPIが陽性に検出されることがある。抗SS-A抗体はシェーグレン症候群の多くで、抗U1-RNP抗体は混合性結合組織病や強皮症でも検出され、特異性は低い。

低補体血症

SLEの活動性を反映して補体低値(C3, C4, CH50)を示すことが多い。免疫複合体が組織に沈着すると補体が動員・消費され、末梢血中の補体が減少する。障害臓器の組織検査では補体の沈着が観察される。腎生検におけるC1qの沈着はSLEに比較的特徴的である。漿膜炎や感染症併発などでCRP高値の場合は、補体低下が、炎症による補体の産生増加によって打ち消されることがある。こうした炎症状態では、補体が正常値であっても補体が消費されていないとは言えない。

陰性所見

SLEの活動性による発熱や腎炎などが顕著でも、CRPなどの急性期蛋白質の上昇はみられないことがしばしばあり、こうした陰性所見もSLEを疑う所見となる。胸膜炎や心外膜炎などの漿膜炎症状を呈した場合はCRP上昇が観察されることが多い。感染症併発時にも、CRPは上昇しうる。

生検による病理所見

皮膚生検の組織を蛍光抗体で染めると表皮真皮境界部に免疫グロブリンの沈着を認めることがあり「ループスバンド」と呼ばれる。ループス腎炎を合併する時は、強い禁忌がない限り腎生検を行なう。これはループス腎炎の病理組織分類に基づいて治療方針を決めるためである。国際腎臓学会(ISN)によるループス腎炎の分類を別に掲載する。

分類基準

2019 EULAR/ACR分類基準

2019 EULAR/ACR SLE分類基準は、少なくとも1回は抗核抗体80倍以上陽性が必須とされ、7臨床項目(全身症状、血液、神経精神、皮膚粘膜、漿膜、筋骨格、腎臓)、3免疫項目(抗リン脂質抗体、補体、SLE自己抗体)に分け、臨床項目一つを含み2~10点で重みづけされた点数合計が10点以上でSLEと分類する。本基準は感度96.1%、特異度93.4%で、2012SLICC分類と同程度の感度、1997ACR分類と同程度の特異度となっている。

エントリー基準として抗核抗体80倍以上(HEp-2を用いるか、同等の検査)の検出が一度はある場合に適応される。

SLE以外で説明される場合は加点しない。症状は一度でも出現すれば含める。少なくとも一つ以上の臨床所見を含む10点以上でSLEと分類する。同時に出現する必要はない。各項目で高い方の点を合計する。


全身症状 38.3度をこえる発熱(2)
血液所見 4000/μl未満の白血球減少(3)、10万/μl未満の血小板減少(4)、自己免疫性溶血(4)
精神神経 せん妄(2)、精神障害(3)、痙攣(5)
皮膚粘膜 非瘢痕性脱毛(2)、口腔内潰瘍(2)、亜急性皮膚ループスや円板状ループス(4)、急性皮膚ループス(蝶形紅斑や斑状丘疹状皮疹)(6)
漿膜 胸水又は心嚢液(5)、急性心外膜炎(6)
筋骨格 関節症状(6)
腎臓 0.5g/日以上の尿蛋白(4)、腎生検でクラスIIまたはVのループス腎炎(8)、クラスIIIまたはIVのループス腎炎(10)

抗リン脂質抗体 抗カルジオリピン抗体、または、抗β2GP1抗体、または、ループスアンチコアグラント(2)
補体 C3かC4どちらか低下(3)、C3とC4両方低下(4)
SLE自己抗体 抗dsDNA抗体、または、抗Sm抗体(6)
ACR基準1987: Updating the American College of Rheumatology revised criteria (1997)
11項目
1. 頬部紅斑(Malar rash)
鼻梁から鼻唇溝へ広がる紅斑、平坦なことも隆起していることもある
Fixed erythema, flat or raised, over the malar eminences, tending to space the nasolabial folds
2. 円板状皮疹(Discoid rash)
Erythematous raised patches with adherent keratotic scalling and follicular plugging; atrophic scarring may occur in older lesions
3. 日光過敏(Photo-sensitivity)
日光に対する過敏な反応による皮疹
Skin rash as a result of unusual reaction to sunlight
4. 口腔潰瘍(Oral ulcers)
口腔、鼻咽頭の潰瘍、通常無痛性
Oral or nasopharyngeal ulceration, usually painless
5. 関節炎(Arthritis)
2ヵ所以上の末梢性の非破壊性関節炎で、痛み・腫れ・関節液貯留を伴う
Nonerosive arthritis involving 2 or more peripheral joints, characterized by tenderness, swelling, or effusion
6. 漿膜炎(Serositis)
次のいずれか:胸膜炎-胸痛・胸膜摩擦音・胸水、心膜炎-心電図・心膜摩擦音・心のう水
Pleuritis-pleuritic pain, rub heard by a physician or pleural effusion / Pericarditis- ECG, rub or pericardial effusion
7. 腎障害(Renal disorder)
次のいずれか:尿蛋白-0.5g/日以上または3+以上、細胞性円柱
Persistent proteinuria greater than 0.5 grams per day or greater than 3+ / Cellular casts- may be red cell, hemoglobin, granular, tubular, or mixed
8. 神経障害(Neurologic disorder)
次のいずれか:痙攣、精神症状(薬剤、尿毒症、ケトアシドーシス、電解質異常を除く)
Seizures or Psychosis- in the absence of offending drugs, uremia, ketoacidosis, or electrolyte imbalance
9. 血算異常(Hematologic disorder)
次のいずれか:溶血性貧血、白血球減少 (<4000/mm3)、リンパ球減少 (<1500/mm3)、血小板減少 (<100,000/mm3)
Hemolytic anemia / Leukopenia (<4000/mm3) / Lymphopenia (<1500/mm3) / Thrombocytopenia (<100,000/mm3) on 2 or more occasions
10. 免疫異常(Immunologic disorder)
次のいずれか:抗DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体
Anti-DNA, Anti-Sm, antiphospholipid antibodies (IgG or IgM anticardiolipin antibodies, lupus anticoagulant, false-positive test forTreponema pallidum)
11. 抗核抗体(Antinuclear antibody)
抗核抗体の陽性(薬剤によるものを除外)
Antinuclear antibody in the absence of drugs known to be associated with "drug-induced lupus" syndrome
2012 SLICC分類基準: The systemic lupus international collaborating clinics classification criteria for systemic lupus erythematosus (2012)
臨床11項目
1. 急性皮膚ループス(Acute cutaneous Lupus)
皮膚筋炎を除外。ループス頬部皮疹(頬部円板状皮疹は含まない)、水疱性ループス、SLEに伴う中毒性表皮壊死症、斑状丘疹状ループス皮疹、光線過敏ループス皮疹。あるいは、亜急性皮膚ループス(瘢痕を残さずに治る非硬化性の乾癬状あるいは標的状皮疹。炎症後の色素沈着異常や毛細血管拡張症を伴うことはある。)
2. 慢性皮膚ループス(Chronic cutaneous lupus)
古典的円板状皮疹:限局(頸部より上)あるいは全身(頸部ならびに頸部以下)、過形成(疣贅状)ループス、ループス脂肪織炎(深在性ループス)、粘膜ループス、慢性ループスエリテマトーデス、凍瘡状ループス、円板状ループスと扁平苔癬の重複。
3. 口腔潰瘍(Oral ulcers)
口蓋、頬部、舌、あるいは鼻腔潰瘍。ただし血管炎、ベーチェット病、ヘルペスなどの感染症、炎症性腸疾患、反応性関節炎、酸性食品など他の既知の病因を除く。
4. 非瘢痕性脱毛(Nonscarring alopecia)
びまん性に薄い、あるいは壊れた毛髪がみられる傷んだ毛髪。ただし円形脱毛症、薬剤性、鉄欠乏、男性ホルモンによる脱毛症など他の既知の病因を除く。
5. 滑膜炎(Synovitis)
2カ所以上の関節腫脹あるいは滑液貯留を伴う滑膜炎。または、2カ所以上の関節痛と30分以上の朝のこわばり。
6. 漿膜炎(Serositis)
一日以上続く典型的な胸膜炎、または胸水、胸膜摩擦音。一日以上続く典型的な心外膜痛(臥位で痛み、前かがみ座位で軽減する)、または心嚢液貯留、心外膜摩擦音、心エコーによる心外膜炎。ただし感染症、尿毒症、Dressler心外膜炎など他の既知の病因を除く。
7. 腎症(Renal)
尿蛋白/クレアチニン比(または24時間尿蛋白)で一日500mgの尿蛋白が推定される。または赤血球円柱。
8. 神経症状(Neurologic)
痙攣、精神障害、多発単神経炎(血管炎など他の病因を除く)、脊髄炎、末梢神経障害、脳神経障害(血管炎、感染症、糖尿病などの他の病因を除く)。急性錯乱状態(中毒、代謝疾患、尿毒症、薬剤性などの他の病因を除く)。
9. 溶血性貧血(Hemolytic anemia)
10. 白血球減少、リンパ球減少(Leukopenia or Lymphopenia)
少なくとも一回は白血球<4000/mm3。ただしフェルティ症候群、薬剤性、門脈圧亢進など他の病因を除く。あるいは、少なくとも一回はリンパ球<1000/mm3。ただしステロイドによるもの、薬剤性、感染症など他の病因を除く。
11. 血小板減少(Thrombocytopenia)
少なくとも一回は<100,000/mm3。薬剤性、門脈圧亢進症、血栓性血小板減少性紫斑病などの他の病因を除く。
免疫6項目
1. 抗核抗体
2. 抗dsDNA抗体
3. 抗Sm抗体
4. 抗リン脂質抗体
ループスアンチコアグラント陽性、迅速血漿レアギンテスト(RPRテスト)偽陽性、中~高力価の抗カルジオリピン抗体(IgA、IgGまたはIgM)、抗β2-glycoprotein I抗体陽性(IgA、IgGまたはIgM)
5. 低補体
6. 溶血性貧血がなく直接クームス陽性
溶血性貧血がない場合の直接クームステスト陽性(Direct Coombs' test in the absence of hemolytic anemia)

1997年分類基準と比べると、多様な皮疹や神経症状が含まれた。免疫異常の項目を必ず一つ満たすことを条件としている。病因を反映させて低補体の項目が含まれた。また、ループス腎炎の規定を別に設けて独立させている。

臨床項目にある様々な皮疹はどのようなものか内科医には解りにくいものもあり、皮膚科医の協力が必要になろう。びらんを伴うSLEの関節炎が実際存在するため関節炎からは旧基準の「non-erosive」の文言を消している。

尿蛋白はテープ測定ではなくスポット尿、あるいは蓄尿測定が必要となった。血球系異常は溶血性貧血、白血球、血小板の3項目に細分された。自己抗体も抗dsDNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体の3項目に細分され、抗リン脂質抗体の定義は詳細になった。独立させたループス腎炎は国際腎臓学会(ISN)による組織分類に従う。


ループス腎炎

国際腎臓学会(ISN)によるループス腎炎の2003年分類
Ⅰ型: 微小メサンギウムループス腎炎
光学顕微鏡では糸球体は正常であるが、蛍光抗体法ではメサンギウムに免疫沈着物が観察される。
Ⅱ型: メサンギウム増殖性ループス腎炎
光学顕微鏡でメサンギウム細胞増殖(程度は問わない)もしくはメサンギウムに限局した基質の拡大が認められ、メサンギウムに免疫沈着物が認められる。蛍光抗体法あるいは電子顕微鏡において孤立性の上皮下ないし内皮下沈着物がわずかに認められる場合もあるが、光学顕微鏡では認められない。
Ⅲ型: 巣状ループス腎炎
活動性または非活動性、分節性または全節性、管内性または管外性、の巣状糸球体腎炎。病変は全糸球体の50%未満。典型例では巣状の内皮下免疫沈着物が認められ、メサンギウム変化は伴っても伴わなくてもよい。
Ⅲ(A) Active, 活動性病変(=巣状増殖性ループス腎炎)
Ⅲ(A/C) Active/Chronic, 活動性および慢性病変(=巣状増殖性および硬化性ループス腎炎)
Ⅲ(C) Chronic, 糸球体瘢痕を伴う慢性非活動性病変(=巣状硬化性ループス腎炎)
Ⅳ型: びまん性ループス腎炎
活動性または非活動性、分節性または全節性、管内性または管外性のびまん性糸球体腎炎。病変は全糸球体の50%以上。典型例ではびまん性の内皮下免疫沈着物が認められ、メサンギウム変化は伴っても伴わなくてもよい。病変を有する糸球体の50%以上が分節性病変を示すびまん性分節性ループス腎炎(Ⅳ-S)と、病変を有する糸球体の50%以上が全節性病変を示すびまん性全節性ループス腎炎(Ⅳ-G)とに分けられる。
Ⅳ-S(A) Sで活動性病変(=びまん性分節性増殖性ループス腎炎)
Ⅳ-G(A) Gで活動性病変(=びまん性全節性増殖性ループス腎炎)
Ⅳ-S(A/C) Sで活動性および慢性病変(=びまん性分節性増殖性および硬化性ループス腎炎)
Ⅳ-G(A/C) Gで活動性および慢性病変(=びまん性全節性増殖性および硬化性ループス腎炎)
Ⅳ-S(C) Sで糸球体瘢痕を伴う慢性非活動性病変(=びまん性分節性硬化性ループス腎炎)
Ⅳ-G(C) Gで糸球体瘢痕を伴う慢性非活動性病変(=びまん性全節性硬化性ループス腎炎)
Ⅴ型: 膜性ループス腎炎
光学顕微鏡により、あるいは蛍光抗体法ないし電子顕微鏡により、全節性または分節性の上皮下免疫沈着物、もしくはその形態学的遺残が認められる。メサンギウム変化は伴う場合と伴わない場合がある。Ⅴ型ループス腎炎はⅢ型もしくはⅣ型と複合する場合があり、その場合には両者を併記した診断名とする。Ⅴ型ループス腎炎は進行した硬化性病変を示す場合がある。
Ⅵ型: 進行した硬化性ループス腎炎
糸球体の90%以上が全節性硬化を示し、残存腎機能は認められない。

神経精神SLE (Neuropsychiatric SLE、NPSLE)

SLEに神経、精神障害を伴う病態の呼称に関してはcentral nervous system lupus(中枢神経ループス)、Lupus cerebritis(ループス脳炎)、CNS vasculitis(中枢神経血管炎)、Neurolupus(神経ループス)などの呼称があるが、神経と精神障害を含み、必ずしも炎症を伴わないこともありneuropsychiatric SLE(NPSLE、神経精神SLE)の一般名称が1999年に提唱され、19症状を分類した。

SLEの5%以上で脳血管障害やけいれんが見られるが、重度の認知障害、大うつ病、末梢神経障害などは稀である。NPSLEの既往や抗リン脂質抗体の存在はNPSLEのリスクを5倍以上に上げる。鑑別として2次性精神神経障害としてのステロイド精神病、その他の薬剤によるもの、腎障害による尿毒症、糖尿病性神経障害、心因反応、あるいは感染症などの鑑別が必要であり、場合によっては精神科、神経内科などの専門医の意見も求める。

Neuropsychiatric SLE(NPSLE)のACR分類(1999)
中枢神経系
無菌性髄膜炎(Aseptic meningitis)
脳血管障害(Cerebrovascular disease)
脱髄症候群(Demyelinating syndrome)
頭痛(Headache)
運動障害(舞踏病)(Movement disorder)
脊髄症(Myelopathy)
発作性疾患(Seizure disorders)
急性錯乱状態(Acute confusional state)
不安障害(Anxiety disorder)
認知障害(Cognitive dysfunction)
気分障害(Mood disorder)
精神病(統合失調症様精神症状)(Psychosis)
末梢神経系
急性炎症性脱髄性多発神経根炎(ギランバレー症候群)(Acute inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy)
自律神経障害(Autonomic disorder)
単・多発単神経炎(Mononeuropathy, single/multiplex)
重症筋無力症(Myasthenia gravis)
脳神経障害(Neuropathy, cranial)
神経叢障害(Plexopathy)
多発神経炎(Polyneuropathy)
髄液検査

感染症を鑑別するために重要。細菌性、結核性、クリプトコッカス髄膜炎などの鑑別、単純ヘルペス、JCウイルスのPCRを行う。髄液の軽度異常は40-50%でみられるがNPSLEに特異的ではない。また、無菌性髄膜炎、血管炎、横断性脊髄炎などを除いて一般髄液検査では正常を示すことが多い。しかし、髄液中の抗DNA抗体、IgGオリゴクローナルバンド、免疫複合体、IL-6高値、IgG index上昇など、髄液でのB細胞の活性化を示唆するマーカーがみられ、あるいは、髄液中の抗ニューロナル抗体、血清中での抗リボゾーマルP抗体 (MBLで測定可)などの自己抗体検出がNPSLEの診断の補助となる。抗DNA抗体の一部がNR2グルタミン酸受容体(NMDA)を認識して神経細胞を障害し、抑うつとの関連が指摘されており興味深い。

画像検査

MRIは有効な画像検査で、活動期NPSLEに対する感度は57%。しばしば神経精神症状のない病変をとらえることもある。85名のNPSLEでのMRI画像の報告では、正常(34%)、前頭葉や頭頂葉の白質での点状のT2強調での高信号病変(60%)、灰白質から白質での多発梗塞像(21%)、その他に体積減少(43%)、出血(5%)、コントラスト増強(9%)、diffusion 異常(18%)であった。FLAIRや、diffusion weighted image (DWI)での高信号領域は塞栓症、微小血管障害、炎症性血管炎などの存在を示唆する。MRIが正常の場合でもmagnetisation transfer imaging、SPECT、PET-CTや他の画像検査で情報が得られることがある。

脳波検査

発作性疾患の鑑別に重要。脳症ではびまん性徐波、痙攣や局所神経症状では局所での異常波形が出現しうる。しかし、無症状のSLE患者でも異常波形がみられることがあり、神経精神SLEに対する診断特異性は劣る。


NPSLE診療のEULAR recommendations(2010)
推奨度
A 無作為比較試験など強い証拠に基づく
B 無作為でない試験など
C ケーススタディなど
D 専門家の意見

NPSLEは、SLEの診断以前や経過後にも生じるが、50~60%は診断後1年未満で、SLEの活動性が存在する時におきやすい(B)。脳血管障害やけいれんが5~15%、重度の認知障害や大うつ、急性錯乱、末梢神経障害は1~5%、精神病、脊髄炎、舞踏病、脳神経障害、無菌性髄膜炎は1%未満である(B)。リスク因子は、SLEの一般的活動性、NPSLE(特に認知障害とけいれん)の既往、抗リン脂質抗体などである(B)。

診断

神経障害、精神障害のタイプよって、腰椎穿刺、脊髄液検査(主に感染症の鑑別のため)、脳波、認知機能の神経精神学的評価、神経伝導試験、MRI画像検査などを実施する(D)。脳、脊髄のMRI検査は通常検査(T1、T2、FLAIR)、DWI、ガドリニウム造影T1を行う(A)。

治療

ステロイドや免疫抑制剤(アザチオプリン、シクロフォスファミド)は、症状(急性錯乱状態、無菌性髄膜炎、脊髄炎、脳神経障害、末梢神経障害、精神病)がSLEと関連する免疫異常や炎症過程に起因するときに適応がある(A)。抗血小板薬、抗凝固療法は、血栓症による脳血管障害などの症状が、抗リン脂質抗体に関連するとき適応がある(B)。抗けいれん薬や抗うつ薬などの対症療法、悪化要因(感染症、高血圧、代謝異常)に対する治療を行う(D)。SLE患者で抗リン脂質抗体が持続陽性、中~高力価のときは予防として抗血小板薬を考慮する(D)。

各分類ごと
脳血管障害

動脈硬化性/血栓性/塞栓性の脳血管障害はSLEでよく見られる。脳出血は稀で、血管炎による脳血管障害はさらに稀。従って免疫抑制剤の適応は少ない。抗リン脂質抗体症候群の基準を満たす場合、再梗塞の予防に長期にわたる抗凝固療法がなされるべき(C)。SLEの活動性が高い状態以外の脳血管障害のリスク因子として、中~高力価の抗リン脂質抗体、心臓弁膜症、高血圧、高齢が挙げられる。MRI、MRA、CT血管造影などで診断する。

認知障害

軽~中等度の認知障害はSLEではよく見られる。重度の認知障害は一般的ではないため専門家とともに神経精神学的評価を行うべき(B)。心理的学習支援により認知障害の進行を予防できる(C)。

けいれん

単発性のけいれんはSLEに一般的にみられ、疾患の活動性と関連する。しかし、けいれん再発は一般集団のリスクと変わらない(B)。MRIや脳波で脳の構造的障害、炎症、代謝疾患を鑑別する必要がある(D)。けいれん後のMRIや脳波で異常がなければ、単発性のけいれんに対する抗てんかん薬の中止を考慮するが、再発性の場合は長期使用を考慮する(D)。疾患活動性がない殆どのSLEでは免疫抑制療法はけいれんの再発予防に対して適応はない(D)。抗リン脂質抗体陽性のSLEでは抗凝固療法を考慮する(D)。

運動障害(舞踏病)

運動障害がみられる場合は対症療法(ドーパミン拮抗剤)に加えて、抗リン脂質抗体陽性では抗血小板剤を考慮する(D)。SLEの疾患活動性が高く、血栓症が見られる重篤なSLEの場合はステロイド、免疫抑制剤、抗凝固療法を考慮する(D)。

急性錯乱状態

SLE以外の疾患、特に感染症を鑑別するために脊髄液検査やMRI検査を行うべき(D)。重篤な場合はステロイドや免疫抑制剤の使用を考慮する(D)。

うつ状態や精神病

SLEのみに起因する大うつ病が見られることは比較的稀で、ステロイドに起因する精神病も生じうる(D)。血清検査や脳画像検査が大うつ病の診断に有効であるとういう強い証拠はない(D)。SLEに関連した精神病、とくに疾患活動性があるときにはステロイドや免疫抑制剤を考慮する(D)。

SLEに伴う精神病は妄想、幻覚が特徴的。ステロイド精神病は1mg/kg以上の高用量の使用の場合で10%に現れるが症状は精神病より気分障害が多い。血清抗リボゾーマルP抗体陽性と精神病との関連(感度25%、特異度75%)が報告されている。SLEの活動性があるとき、治療はステロイドと免疫抑制剤(シクロフォスファミドで導入、アザチオプリンで維持)の併用で60~80%有効。2~4週で改善することが多い。難治例にリツキシマブが著効した報告がある。

脊髄症

診断はガドリニウム造影MRIと脊髄液検査で行う(D)。高用量ステロイドとシクロフォスファミド点滴を速やかに行う(A)。再発予防のための維持療法では弱い免疫抑制剤を考慮する(D)。

SLEにともなう脊髄症は急速に生じる横断性脊髄炎として現れるが、虚血性の脊髄症も生じうる。灰白質(下位運動ニューロン)障害症状(弛緩、反射低下)、白質(上位運動ニューロン)障害症状(痙縮、反射亢進)が現れる。白質障害は視神経脊髄炎と関連することが多い。抗アクアポリン抗体陽性であれば視神経脊髄炎の診断の補助となる。横断性脊髄炎の脊髄液は強い炎症所見を呈し、感染症に類似するため抗生剤/抗ウイルス剤の使用を併用しながら、MRIによる確定を待たずに早期に高用量ステロイドを開始することがある。感染症が否定されればステロイドを継続する。ステロイド点滴+シクロフォスファミド点滴も早期に投与されれば有効である。

視神経炎

両側で生じやすく、眼科的評価(眼底鏡、蛍光血管造影)、MRI、視覚誘発電位測定などで診断する(D)。視神経炎と虚血性の視神経障害を鑑別する必要がある。虚血性障害は特に抗リン脂質抗体陽性例で片側性に生じやすい(D)。ステロイド単独、又は免疫抑制剤と併用療法を行うべき(A)。

脳神経障害では内耳神経(VIII)、動眼神経(III)、滑車神経(IV)、外転神経(VI)が障害されることが多く、他に三叉神経(V)、顔面神経(VII)も稀に侵される。脳幹梗塞、髄膜炎の鑑別が必要。

末梢神経障害

末梢神経障害はしばしば他の神経精神症状とともに生じ、筋電図や神経伝導検査にて診断する(D)。重篤な場合はステロイドと免疫抑制剤の併用による治療を考慮する(A)。あるいは免疫グロブリン大量点滴、血漿交換、リツキシマブなどの使用報告もある。

SLEに伴う蛋白漏出性胃腸症

病態

蛋白漏出性胃腸症は血清蛋白質が消化管から漏出し、著しい低アルブミン血症をきたす疾患で、漏出する病変部位は胃から大腸まで存在しうる。漏出する機構としてはびらんや潰瘍に伴う消化管粘膜の損傷、消化管粘膜の透過性亢進、リンパ管閉塞によるリンパ液の漏出などが考えられている。尿中への蛋白漏出や蛋白摂取不足、重症肝臓疾患による蛋白合成低下などを鑑別除外してから蛋白漏出性胃腸症を疑う。

鑑別疾患としては、悪性リンパ腫、Whipple病(Tropheryma whipplei感染症)、腹部結核、サルコイドーシスなどの腸管リンパ管拡張症をきたす疾患、消化管アレルギー、アミロイドーシス、NSAIDs胃腸症、クローン病、潰瘍性大腸炎などの消化器疾患、三尖弁閉鎖不全症、心房中隔欠損症、収縮性心外膜炎などにより静脈圧上昇を伴う心不全がある。頻度は高くないがSLEに伴う蛋白漏出性胃腸症がある。また、抗リン脂質抗体症候群から門脈血栓症をきたし腸管浮腫から蛋白漏出性胃腸症に進展した報告もある。

症状と検査

SLEに伴う蛋白漏出性胃腸症は、下痢や吐気、体重減少、倦怠感、発熱とともに消化管からの蛋白漏出により浮腫、腹水、胸水、心嚢液貯留などの症状がみられ、血清中ではアルブミン低下以外にガンマグロブリン、フィブリノーゲン、α1アンチトリプシンなどの血清蛋白の低下をきたし栄養低下状態となる。補体低下が見られることがある。腸管からリポ蛋白が漏出すると低コレステロールとなるが、リポ蛋白が漏れない場合は腎臓でのネフローゼ症候群と同様に肝臓でのコレステロール合成が高まり高コレステロールとなる。

消化管粘膜生検では炎症細胞浸潤と腸絨毛の萎縮、粘膜下の浮腫が見られるが血管炎の所見はない。99mTc-ラベルヒト血清アルブミンシンチで消化管での漏出部位を確認する。放射線を用いない方法としてα1アンチトリプシン(α1AT)の腸管クリアランスを測定することでも蛋白漏出を証明できる。α1ATは消化酵素で分解されず、アルブミンと分子量が近い。α1ATクリアランスは「糞便中α1AT濃度mg/g x 一日糞便量g/day/血清α1AT濃度mg/ml」で表される。コントロールでは10ml/day以下であるが蛋白漏出性胃腸症では16.5-218ml/dayと報告されている。

治療

1970年から2001年のSLEに伴う蛋白漏出性胃腸症の症例をまとめた報告では、ステロイドで加療された30例のうち21例はステロイド単独、7例はcyclophosphamide併用、2例はazathioprine併用であった。いずれも治療に反応している。2001年以降のSLEに伴う蛋白漏出性胃腸症48例をまとめた香港の報告では平均年齢41歳、男女比 1対8.6とされている。死亡は1例だった。消化管粘膜は非びらん性の発赤とともに、63%で消化管粘膜固有層に炎症細胞の浸潤を認めている。貧血(96%)、白血球数低下(40%)、リンパ球数低下(35%)、CRP上昇(63%)、C3低下(94%)などの検査値異常頻度が報告されている。99mTc-ラベルヒト血清アルブミンシンチによるアルブミン漏出部位は、小腸(23%)、回腸末端/盲腸(33%)、上行結腸(23%)であった。寛解導入療法として63%がステロイドとazathioprine併用で行なわれ、その他 MMF、cyclophosphamide、tacrolimus、MTXなども使用されている。維持療法は69%がステロイドとazathioprine併用で行なわれた。蛋白尿の存在、過去の免疫抑制剤使用歴がある場合では導入治療の強化が必要となっている。蛋白漏出性胃腸症がSLEの初発症状だった例が44%あり、この場合は導入治療に対する反応性が良いようであった。

腎障害における尿蛋白の選択性

分子量の違いから、クリアランス比にして、TransferinはIgGよりも5倍以上、腎排泄され易い(Tf; α分画、IgG; γ分画)。

Selectivity Index (SI) = Clearance (IgG) / Clearance (Transferin)
= { Urinary (IgG) x UV / Serum (IgG) } / { U (Tf) x UV / S (Tf) }
= { U (IgG) / Serum (IgG) } / { U (Tf) / S (Tf) }

とすれば、SIは、1:5よりひらく、すなわち、SI≦0.2が高選択性(正常)である。
SI>0.2は、尿蛋白の選択性の低下を示唆する。

Selectivity indexの計算ページ

CNSループスの評価:IgG indexの計算(中枢神経系でのIgG産生の指標)

中枢神経系での炎症性蛋白(免疫グロブリン)増加の指標。

IgG index = ( CNS-IgG / CNS-Alb ) / ( serum-IgG / serum-Alb )

と、アルブミン濃度との相対的比較をすれば、IgGのCNS局所での増加(CNS-IgG)は、IgG indexの増加として反映される。
正常は、<0.6であるが、>0.8で中枢神経系でのIgG増加が示唆される。

IgG indexの計算ページ

疾患活動性の評価(BILAG Index)

SLEの活動性によると判断されるものが対象で、薬剤、感染症、不可逆性のもの(骨壊死、皮膚硬化など)は対象としない。
各カテゴリーは、A(重症)~E(既往なし)に評価される(評価の基準は文献参照)。
総スコアは、カテゴリーA:9点、B:3、C:1、D:0、E:0、として合計する。

一般的全身症状
項目 定義
1 発熱 体温>37.5℃
2 体重減少 1ヶ月で>5%の体重減少。Lupusによるもので意図的なダイエットや合併症によるものでない。
3 リンパ節腫脹/脾腫 リンパ節腫脹:直径>1cmのリンパ節を触知
4 易疲労/全身倦怠/脱力 日常の活動が制限される重度のもの。日内変動する傾向がある。
5 食欲低下/嘔気/嘔吐 Lupus関連(薬物副作用、感染症などによるものは除く。
粘膜皮膚症状
項目 定義
6 斑状丘疹状皮疹-重症、活動性 体表面積の>2/9。瘢痕性又は身体障害をきたすもの
7 斑状丘疹状皮疹-軽症 体表面積の<2/9。瘢痕性でない/身体障害がない
8 活動性円板状皮疹-全身性、広汎性 体表面積の>2/9
9 活動性円板状皮疹-局所性 体表面積の<2/9、深在性狼創を含む
10 脱毛-重症、活動性 頭皮の炎症を伴った異常なびまん性脱毛
11 脱毛-軽症 限局性、比較的活動性は少ない、頭皮の炎症がほとんどない
12 皮下脂肪織炎 体温>広汎な有痛性紅斑性皮下結節、重層の円板状皮膚病変を伴う
13 血管浮腫(咽頭浮腫) 生命をおびやかす(喘鳴、舌あるいは口唇を高度におかす
14 広汎な粘膜潰瘍 重層、深達性、日常生活に支障をきたすもの
15 小粘膜潰瘍 アフタ性潰瘍が1つ以上(有痛または無痛性)
16 頬部紅斑  
17 皮下結節  
18 凍瘡様皮疹  
19 爪周囲紅斑  
20 手指の腫脹 損傷の場合は記録しない
21 手指に限局する皮膚硬化 損傷の場合は記録しない
22 皮下石灰化 損傷の場合は記録しない
23 毛細血管拡張 損傷の場合は記録しない
神経系症状
項目 定義
24 意識レベルの低下 薬剤、感染症、合併症によるものは除く
25 急性精神症状、せん妄、又は錯乱状態 妄想、幻覚、思考錯乱、明らかな非論理的思考、奇妙あるいは緊張性行動を特徴とする現実認識の重度の障害(薬物乱用、原発性精神障害に起因するものは除く)
26 けいれん大発作 他覚的に認めるもの
27 脳卒中/脳虚血症状 急性lupus炎症に起因するもの(動脈硬化、血栓塞栓、低血糖、血管奇形、腫瘍、膿瘍を除く)
28 無菌性髄膜炎 急性/亜急性の発現、頭痛、neck stiffness、発熱、髄膜刺激症状、脳脊髄液異常(蛋白上昇、リンパ球優位)
29 多発性単神経炎 炎症による複数の神経炎
30 上行性又は横断性脊髄炎 急速に進行する不全対麻痺、四肢不全麻痺、又は感覚レベル低下(髄内/髄外の占拠性病変によるものを除く
31 末梢または脳神経障害 急性の対称性の末梢又は中枢性の感覚及び/又は運動障害
32 視神経乳頭浮腫/綿花状白斑  
33 舞踏病 薬剤性によるものを除く
34 小脳性運動失調 他の中枢神経症状とは別のもの、脳幹梗塞によらない。通常、亜急性に出現
35 重度の持続性頭痛 3日以上の持続的頭痛で非麻薬性鎮痛薬では寛解しない(頭蓋内の占拠性病変、及び中枢神経系への感染によるものは除く
36 器質性うつ病 Lupusに起因。身体症状を伴い、抗うつ剤治療を要する重度のうつ状態
37 偽脳腫瘍を含む器質性脳症候群 代謝異常、精神病または薬物に起因しない見当識障害、記憶障害その他の知的機能の障害。臨床症状が短期に発現し、日内変動する傾向がある。a)集中力及び周囲への関心持続の低下を伴う意識混濁、b)①認知障害:誤解、錯覚又は幻覚、②会話錯乱、③不眠又は日中眠気、④精神運動活動の亢進又は低下、c)失見当識及び記名力低下
38 たまにみられる偏頭痛 Lupusに起因する再発性の頭痛(通常4-72時間持続)
筋骨格系
項目 定義
39 筋炎 以下の少なくとも3項目に該当:
・近位筋の筋力低下
・筋由来酵素の上昇(CPK)
・筋生検陽性所見
・筋電図異常所見
40 機能障害を伴う重度の多関節炎 2つ以上の活動性関節炎、関節可動域の低下
41 関節炎 1つ以上の活動性関節炎(圧痛、熱感、腫脹)で、可動域の低下を伴わない
42 腱炎 運動負荷によるものでない
43 軽度の慢性筋炎 上記39の基準の2又は3項目に該当または亜急性の炎症
44 関節痛 炎症所見を伴わない
45 筋痛 筋力低下やCPKの上昇を伴わない
46 腱拘縮および固定性変形 損傷(damage)の場合は記載しない
47 無菌性骨壊死 損傷(damage)の場合は記載しない
心血管系および呼吸器系
項目 定義
48 胸膜/心膜痛 呼吸により悪化する限局性の胸痛、圧痛なし
49 呼吸困難 労作時呼吸困難
50 心不全 Lupus心筋炎、心内膜または弁の非感染性炎症による心不全
51 心膜/胸膜摩擦音  
52 心嚢液または胸水貯留  
53 軽度または間欠性の胸痛 非特異的
54 進行性胸部X線変化(肺) Lupusによるもの
55 進行性胸部X線変化(心) Lupusによるもの
56 心膜炎または心筋炎の心電図所見  
57 不整脈、発熱を伴わない、>100/minの頻脈を含む Lupusによるもの
58 >20%の肺機能低下  
59 炎症性肺疾患の細胞組織学的所見 Lupusによるもの
血管炎
項目 定義
60 皮膚血管炎、潰瘍を含む 広汎な壊疽及び/または潰瘍形成
61 血管炎による重度の急性腹症 小腸または大腸、胆嚢などにおける画像診断及び/又は生検による診断
62 再発性血栓塞栓症(脳卒中を除く)  
63 レイノー現象  
64 網状皮斑(Livedo reticularis)  
65 浅部静脈炎  
66 軽度皮膚血管炎 爪周囲や指端の血管炎、紫斑、潰瘍、皮下梗塞、白血球破砕/過敏性血管炎など
67 血栓塞栓症(脳卒中を除く)、初発  
腎症
項目 定義
68 収縮期血圧  
69 拡張期血圧  
70 悪性高血圧  
71 尿蛋白定性  
72 1日尿蛋白  
73 >1g/日の尿蛋白の新たな出現  
74 ネフローゼ症候群 尿蛋白>3.5g/day、低アルブミン
75 クレアチニン  
76 クレアチニンクリアランス  
77 活動性尿沈さ 膿尿(>5WBC/HPF)、血尿(>5RBC/HPF)、または赤血球円柱
78 活動性腎炎の組織学所見(3ヶ月以内) WHO分類による活動性腎炎の所見、硬化性病変のみでは活動性腎炎の所見とみなさない
血液
項目 定義
79 ヘモグロビン Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘
80 白血球数 Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘
81 好中球数 Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘
82 リンパ球数 Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘
83 血小板数 Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘
84 溶血を示す検査所見 クームス試験陽性および溶血の所見(ビリルビン上昇、または網状赤血球数上昇、又はハプトグロビン減少)
85 クームス試験陽性 クームス試験陽性のみで溶血の所見なし
86 ループス抗凝固因子を示す検査所見 ループス抗凝固因子、抗カルジオリピン抗体、又は他の抗リン脂質抗体が陽性

疾患活動性評価(SLEDAI:SLE disease activity index)

Weight Descriptor
Definition
8 Seizure(痙攣)
Recent onset. Exclude metabolic, infectious or drug cause
8 Psychosis(精神症状)
Altered ability to function in normal activity due to severe disturbance in the perception of reality. Include hallucinations, incoherence, marked loose associations, impoverished thought content, marked illogical thinking, bizarre, disorganized, or catatonic behavior. Excluded uremia and drug causes.
8 Organic Brain Syndrome(器質的脳障害)
Altered mental function with impaired orientation, memory or other intelligent function, with rapid onset fluctuating clinical features. Include clouding of consciousness with reduced capacity to focus, and inability to sustain attention to environment, plus at least two of the following: perceptual disturbance, incoherent speech, insomnia or daytime drowsiness, or increased psychomotor activity. Exclude metabolic, infectious or drug causes.
8 Visual Disturbance(視力障害)
Retinal changes of SLE. Include cytoid bodies, retinal hemorrhages, serious exodate or hemorrhages in the choroids, or optic neuritis. Exclude hypertension, infection, or drug causes.
8 Cranial Nerve Disorder(脳神経障害)
New onset of sensory or motor neuropathy involving cranial nerves.
8 Lupus Headache(ループス頭痛)
Severe persistant headache: may be migrainous, but must be nonresponsive to narcotic analgesia.
8 CVA(脳血管障害)
New onset of cerebrovascular accident(s). Exclude arteriosclerosis.
8 Vasculitis(血管炎)
Ulceration, gangrene, tender finger nodules, periungual, infarction, splinter hemorrhages, or biopsy or angiogram proof of vasculitis
4 Arthritis(関節炎)
More than 2 joints with pain and signs of inflammation(i.e. tenderness, swelling, or effusion).
4 Myositis(筋炎)
Proximal muscle aching/weakness, associated with elevated creatine phosphokinase / aldolase or electromyogram changes or a biopsy showing myositis.
4 Urinary Casts(尿円柱)
Heme-granular or red blood cell casts.
4 Hematuria(血尿)
>5 red blood cells/high power field. Exclude stone, infection or other cause.
4 Proteinuria(蛋白尿)
>0.5gm/24hours. New onset or recent increase of more than 0.5gm/24 hours.
4 Pyuria(膿尿)
>5 white blood cells/high power field. Exclude infection.
2 New Rash(新たな皮疹)
New onset or recurrence of inflammatory type rash.
2 Alopecia(脱毛)
New onset or recurrence of abnormal, patchy or diffuse loss of hair.
2 Mucosal Ulcers(粘膜潰瘍)
New onset or recurrence of oral or nasal ulcerations
2 Pleurisy(胸膜炎)
Pleuritic chest pain with rub or effusion, or pleural thickening.
2 Pericarditis(心膜炎)
Pericardial pain with at least 1 of the following: rub, effusion, or electrocardiogram confirmation.
2 Low complement(低補体血症)
Decrease in CH50, C3, or C4 below the lower limit of normal for testing laboratory.
2 Increased DNA binding(抗DNA抗体上昇)
>25% binding by Farr assay or above normal range for testing laboratory.
1 Fever(発熱)
>38℃, Exclude infectious cause
1 Thrombocytopenia(血小板減少)
<100,000 platelets/mm3.
1 Leukopenia(白血球減少)
<3,000 WBC/mm3. Exclude drug causes.

SLEにおけるQOL評価

QOL評価(LupusPRO)

2019/Oct, 2019/May, 2014/Nov, 2012/Aug