大阪大学大学院医学系研究科
呼吸器・免疫内科学
Department of Respiratory Medicine and Clinical Immunology, Graduate School of Medicine, Osaka University
頭皮から足趾までの全身が侵されうる自己免疫疾患で、多彩な症状と多臓器にわたる障害により、その診療には内科臨床全般にわたる知識と経験が要求される。病態は抗原と抗体が結合した免疫複合体の沈着によって引き起こされる補体による組織障害(Gell&CoomsのIII型アレルギー)が中心とされる。
好発年齢は20~40歳台であり、男女比は1:10で若い女性が多い。「衛生行政報告書」によれば、特定疾患事業により難病の認定を受けた全身性エリテマトーデス患者総数は2010年現在5万7千人であり、難病疾患の中では潰瘍性大腸炎、パーキンソン病に次いで多い。
多彩な自己抗体が検出されることが多く、病態の中心は抗二本鎖DNA抗体による免疫複合体の形成と補体による組織障害である。組織障害の発生場所は個々の症例によって異なるが、”全身性”の名前のとおり、腎臓、皮膚、肺、脳など多様な臓器に障害が発生する。患者の多くは妊娠可能な年齢の女性であり、女性ホルモンと病因との関連が疑われている。一卵性双生児において一方がSLEである場合の他方のSLE有病率は50%を超えるとする報告があり、また、北米では黒人女性の方が白人女性より有病率が高いとされており、遺伝的素因の存在が疑われる。
降圧薬ヒドララジン(アプレゾリン)、α-メチルドーパ(アルドメット)、抗不整脈薬のプロカインアミド (アミサリン)、抗てんかん薬のヒダントイン、抗精神病薬クロルプロマジン(ウィンタミン、ベゲタミン)など様々な薬剤を長期服用することにより薬剤性ループスと呼称されるSLEと同様の症状を惹起することがあり、未だ特定されていない外的誘因の存在も懸念される。高齢者など好発年齢をはずれてのSLE様病態の発症は、まず薬剤性ループスを疑う。パルボウイルスB19感染症でもSLE様の症状を呈することがあり、小児~児童間で感染するリンゴ病(伝染性紅班)患者と接触がなかったか問診し、パルボウイルスB19に対するIgM抗体価を検討する。
ループスエリテマトーデス:ループスは狼を意味するラテン語である。蝶形紅班や円板状皮疹が狼の咬傷を想起させることから由来するされる。皮膚症状から皮膚科を初めに受診されることも多い。
頬部紅斑(蝶形紅斑):頬骨部から鼻梁に広がる両翼を広げた蝶の形に類似した紅斑で、蝶形紅斑と呼称されることも多い。小児の皮膚筋炎においても同様の外観を呈することがあり鑑別を要する。
円板状皮疹(discoid lupus):慢性の鱗屑を伴う円板状皮疹は次第に周囲が肥厚し中央が陥没様になっていく。
日光過敏:肌の露出部位において紫外線暴露後に発赤や水泡形成などの反応を示す日光過敏が観察されることがある。
口腔内潰瘍:通常は無痛性の口腔内潰瘍で、典型的発生部位は硬口蓋である。医師の口腔内診察で初めて気づかれることがある。
環状紅斑:環状の紅斑局面である環状紅斑がみられることがある。
凍瘡様皮疹:手指末梢に凍瘡のような外観を呈することがある。爪周囲に紅斑が観察されることもある。
レイノー症状:SLEに特異的ではないが、寒冷刺激によって手指の色調が白色化・青紫色化するレイノー症状が観察される。
リベドー疹:四肢に淡褐色の網目状皮疹が見られることがある。SLEに特異的ではないが、リベドー疹と呼ばれ、観察された場合は血管炎もしくは腎炎の存在に留意する。
脱毛:頭皮に紅斑が形成され局所的な脱毛局面が形成される場合と。皮疹を伴わずびまん性の脱毛が発生する場合とがある。
深在性ループス:皮下脂肪組織に炎症が発生し、脂肪組織が自壊、瘢痕形成に至る。脂肪組織が豊富な顔面頬部や臀部などに好発し、外観上は陥凹した局面を形成する。触診上、内部の瘢痕を硬結として触れる。治癒後も皮膚陥凹が残りやすく治療は急がれる。
発症時には多関節痛が多い。一般には、骨のびらん・破壊を伴わない非破壊性関節炎で、関節変形や強直は起こさない。例外的に、関節周囲の支持組織障害の結果、手指関節の亜脱臼があらわれるJaccoud関節症がある。
胸膜、心外膜、腹膜といった漿膜に炎症が発生し胸膜炎や心外膜炎をおこし、炎症性浸出液が貯留する例がある。SLEでは通常は血清CRPは上昇しないが、こうした漿膜炎を生じた場合、しばしばCRPの上昇が観察される。胸部レントゲンでの胸水貯留像、心胸郭比の拡大、エコーによる心嚢液や腹水貯留、腹部膨隆が観察される。
糸球体腎炎が基本である。シェーグレン症候群とは異なり、びまん性の間質性腎炎は少ない。様々な病理組織像がある。現在では国際腎臓学会の分類(ISN分類)が標準的である。1日尿蛋白3.5g以上のネフローゼ症候群を呈することがしばしばある。多くの場合、抗DNA抗体価は高く血清補体化は低値である。ループス腎炎ではISN分類における腎組織分類に基づいて治療が選択されることが多いため、腎生検による病理組織分類決定は強い禁忌がない限り行われることが望ましい。
痙攣や意識障害が現れたり、統合失調症様症状を呈する神経障害 neuropsychiatric SLE (NPSLE)症例がある。末梢神経の障害がない場合 central nervous system lupus (CNS Lupus)という病名も用いられるが、両者の使い分けは必ずしも厳密ではない。血清の抗リポゾームP抗体、髄液のIL-6上昇を認めることがあり、診断の補助となる。末梢血中に抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントが検出される抗リン脂質抗体陽性例では多発脳梗塞を示すことがある (APS合併例)。
間質性肺炎を合併することがある。肺胞出血は予後不良であり積極的な治療が必要となる。肺動脈性高血圧症は、混合性結合組織病や強皮症に比べると頻度は少なくなるが観察される例もある。
しばしば肝機能障害を伴う。抗ミトコンドリアM2抗体陽性の胆汁うっ滞性肝硬変症 (PBC)や抗LKM-1抗体陽性の自己免疫性肝炎 (AIH)の合併もあるが、これらがない症例でも生化学データでのASTやALTといった肝逸脱酵素が上昇することがある。
頻度は少ないが膀胱壁の線維化がおこり膀胱容量が減少することがある。膀胱壁は肥厚しコンプライアンスが不良になる。1回尿量が150mL程度になり、著しい頻尿になる。
腸炎による下痢・吸収不良・腹痛(ループス腸炎)、血小板減少による皮下出血や紫斑、赤血球減少(貧血)による動悸・息切れ、などが見られることがある。
白血球減少(4,000/mm3未満)、リンパ球減少(1,500/mm3未満)、血小板減少(100,000/mm3未満)、溶血性貧血(網状赤血球増加、ハプトグロビン低下)が観察されるが、これらはウイルス感染症でもしばしばみられる。発熱患者において白血球減少がみられた時、SLEの診断を誤って下すことを避ける目的で、アメリカリウマチ学会1997年診断基準では、”血球異常が2回以上観察されること”という付帯条件が付記された(on 2 or more occasions)。
ループス腎炎のACR criteriaでは、持続的尿蛋白>0.5g/日または3+以上、かつ/または 細胞性円柱(RBC、hemoglobin、granular、tubular、mixed)でループス腎炎を定義する。尿蛋白量は、随時尿で尿蛋白/尿クレアチニン比>0.5でも可能。細胞性円柱は、活動性所見(非感染症下で>5 RBC/hpf 又は >5 WBC/hpf、又は赤血球円柱か白血球円柱)でも可能。
抗核抗体陽性のみで専門外来を紹介受診されることがあるが、抗核抗体陽性のみではSLEを示唆する訳ではなく、症状、理学所見、その他の検査異常を参考に、SLEを疑うこととなる。peripheral (shaggy) typeのパターンは抗DNA抗体を反映している。
抗2本鎖DNA抗体(抗ds-DNA抗体)は比較的疾患特異度が高いとされるが、抗1本鎖DNA抗体の場合は薬剤性ループスの可能性がある。抗DNA抗体以外に、抗Sm抗体、抗SS-A抗体、抗U1-RNP抗体、RF、抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント、ACL-β2GPIが陽性に検出されることがある。抗SS-A抗体はシェーグレン症候群の多くで、抗U1-RNP抗体は混合性結合組織病や強皮症でも検出され、特異性は低い。
SLEの活動性を反映して補体低値(C3, C4, CH50)を示すことが多い。免疫複合体が組織に沈着すると補体が動員・消費され、末梢血中の補体が減少する。障害臓器の組織検査では補体の沈着が観察される。腎生検におけるC1qの沈着はSLEに比較的特徴的である。漿膜炎や感染症併発などでCRP高値の場合は、補体低下が、炎症による補体の産生増加によって打ち消されることがある。こうした炎症状態では、補体が正常値であっても補体が消費されていないとは言えない。
SLEの活動性による発熱や腎炎などが顕著でも、CRPなどの急性期蛋白質の上昇はみられないことがしばしばあり、こうした陰性所見もSLEを疑う所見となる。胸膜炎や心外膜炎などの漿膜炎症状を呈した場合はCRP上昇が観察されることが多い。感染症併発時にも、CRPは上昇しうる。
皮膚生検の組織を蛍光抗体で染めると表皮真皮境界部に免疫グロブリンの沈着を認めることがあり「ループスバンド」と呼ばれる。ループス腎炎を合併する時は、強い禁忌がない限り腎生検を行なう。これはループス腎炎の病理組織分類に基づいて治療方針を決めるためである。国際腎臓学会(ISN)によるループス腎炎の分類を別に掲載する。
2019 EULAR/ACR SLE分類基準は、少なくとも1回は抗核抗体80倍以上陽性が必須とされ、7臨床項目(全身症状、血液、神経精神、皮膚粘膜、漿膜、筋骨格、腎臓)、3免疫項目(抗リン脂質抗体、補体、SLE自己抗体)に分け、臨床項目一つを含み2~10点で重みづけされた点数合計が10点以上でSLEと分類する。本基準は感度96.1%、特異度93.4%で、2012SLICC分類と同程度の感度、1997ACR分類と同程度の特異度となっている。
エントリー基準として抗核抗体80倍以上(HEp-2を用いるか、同等の検査)の検出が一度はある場合に適応される。
SLE以外で説明される場合は加点しない。症状は一度でも出現すれば含める。少なくとも一つ以上の臨床所見を含む10点以上でSLEと分類する。同時に出現する必要はない。各項目で高い方の点を合計する。
臨 床 |
全身症状 | 38.3度をこえる発熱(2) |
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血液所見 | 4000/μl未満の白血球減少(3)、10万/μl未満の血小板減少(4)、自己免疫性溶血(4) | |
精神神経 | せん妄(2)、精神障害(3)、痙攣(5) | |
皮膚粘膜 | 非瘢痕性脱毛(2)、口腔内潰瘍(2)、亜急性皮膚ループスや円板状ループス(4)、急性皮膚ループス(蝶形紅斑や斑状丘疹状皮疹)(6) | |
漿膜 | 胸水又は心嚢液(5)、急性心外膜炎(6) | |
筋骨格 | 関節症状(6) | |
腎臓 | 0.5g/日以上の尿蛋白(4)、腎生検でクラスIIまたはVのループス腎炎(8)、クラスIIIまたはIVのループス腎炎(10) | |
免 疫 |
抗リン脂質抗体 | 抗カルジオリピン抗体、または、抗β2GP1抗体、または、ループスアンチコアグラント(2) |
補体 | C3かC4どちらか低下(3)、C3とC4両方低下(4) | |
SLE自己抗体 | 抗dsDNA抗体、または、抗Sm抗体(6) |
11項目 | |
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1. | 頬部紅斑(Malar rash) |
鼻梁から鼻唇溝へ広がる紅斑、平坦なことも隆起していることもある Fixed erythema, flat or raised, over the malar eminences, tending to space the nasolabial folds |
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2. | 円板状皮疹(Discoid rash) |
Erythematous raised patches with adherent keratotic scalling and follicular plugging; atrophic scarring may occur in older lesions | |
3. | 日光過敏(Photo-sensitivity) |
日光に対する過敏な反応による皮疹 Skin rash as a result of unusual reaction to sunlight |
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4. | 口腔潰瘍(Oral ulcers) |
口腔、鼻咽頭の潰瘍、通常無痛性 Oral or nasopharyngeal ulceration, usually painless |
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5. | 関節炎(Arthritis) |
2ヵ所以上の末梢性の非破壊性関節炎で、痛み・腫れ・関節液貯留を伴う Nonerosive arthritis involving 2 or more peripheral joints, characterized by tenderness, swelling, or effusion |
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6. | 漿膜炎(Serositis) |
次のいずれか:胸膜炎-胸痛・胸膜摩擦音・胸水、心膜炎-心電図・心膜摩擦音・心のう水 Pleuritis-pleuritic pain, rub heard by a physician or pleural effusion / Pericarditis- ECG, rub or pericardial effusion |
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7. | 腎障害(Renal disorder) |
次のいずれか:尿蛋白-0.5g/日以上または3+以上、細胞性円柱 Persistent proteinuria greater than 0.5 grams per day or greater than 3+ / Cellular casts- may be red cell, hemoglobin, granular, tubular, or mixed |
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8. | 神経障害(Neurologic disorder) |
次のいずれか:痙攣、精神症状(薬剤、尿毒症、ケトアシドーシス、電解質異常を除く) Seizures or Psychosis- in the absence of offending drugs, uremia, ketoacidosis, or electrolyte imbalance |
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9. | 血算異常(Hematologic disorder) |
次のいずれか:溶血性貧血、白血球減少 (<4000/mm3)、リンパ球減少 (<1500/mm3)、血小板減少 (<100,000/mm3) Hemolytic anemia / Leukopenia (<4000/mm3) / Lymphopenia (<1500/mm3) / Thrombocytopenia (<100,000/mm3) on 2 or more occasions |
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10. | 免疫異常(Immunologic disorder) |
次のいずれか:抗DNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体 Anti-DNA, Anti-Sm, antiphospholipid antibodies (IgG or IgM anticardiolipin antibodies, lupus anticoagulant, false-positive test forTreponema pallidum) |
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11. | 抗核抗体(Antinuclear antibody) |
抗核抗体の陽性(薬剤によるものを除外) Antinuclear antibody in the absence of drugs known to be associated with "drug-induced lupus" syndrome |
臨床11項目 | |
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1. | 急性皮膚ループス(Acute cutaneous Lupus) |
皮膚筋炎を除外。ループス頬部皮疹(頬部円板状皮疹は含まない)、水疱性ループス、SLEに伴う中毒性表皮壊死症、斑状丘疹状ループス皮疹、光線過敏ループス皮疹。あるいは、亜急性皮膚ループス(瘢痕を残さずに治る非硬化性の乾癬状あるいは標的状皮疹。炎症後の色素沈着異常や毛細血管拡張症を伴うことはある。) | |
2. | 慢性皮膚ループス(Chronic cutaneous lupus) |
古典的円板状皮疹:限局(頸部より上)あるいは全身(頸部ならびに頸部以下)、過形成(疣贅状)ループス、ループス脂肪織炎(深在性ループス)、粘膜ループス、慢性ループスエリテマトーデス、凍瘡状ループス、円板状ループスと扁平苔癬の重複。 | |
3. | 口腔潰瘍(Oral ulcers) |
口蓋、頬部、舌、あるいは鼻腔潰瘍。ただし血管炎、ベーチェット病、ヘルペスなどの感染症、炎症性腸疾患、反応性関節炎、酸性食品など他の既知の病因を除く。 | |
4. | 非瘢痕性脱毛(Nonscarring alopecia) |
びまん性に薄い、あるいは壊れた毛髪がみられる傷んだ毛髪。ただし円形脱毛症、薬剤性、鉄欠乏、男性ホルモンによる脱毛症など他の既知の病因を除く。 | |
5. | 滑膜炎(Synovitis) |
2カ所以上の関節腫脹あるいは滑液貯留を伴う滑膜炎。または、2カ所以上の関節痛と30分以上の朝のこわばり。 | |
6. | 漿膜炎(Serositis) |
一日以上続く典型的な胸膜炎、または胸水、胸膜摩擦音。一日以上続く典型的な心外膜痛(臥位で痛み、前かがみ座位で軽減する)、または心嚢液貯留、心外膜摩擦音、心エコーによる心外膜炎。ただし感染症、尿毒症、Dressler心外膜炎など他の既知の病因を除く。 | |
7. | 腎症(Renal) |
尿蛋白/クレアチニン比(または24時間尿蛋白)で一日500mgの尿蛋白が推定される。または赤血球円柱。 | |
8. | 神経症状(Neurologic) |
痙攣、精神障害、多発単神経炎(血管炎など他の病因を除く)、脊髄炎、末梢神経障害、脳神経障害(血管炎、感染症、糖尿病などの他の病因を除く)。急性錯乱状態(中毒、代謝疾患、尿毒症、薬剤性などの他の病因を除く)。 | |
9. | 溶血性貧血(Hemolytic anemia) |
10. | 白血球減少、リンパ球減少(Leukopenia or Lymphopenia) |
少なくとも一回は白血球<4000/mm3。ただしフェルティ症候群、薬剤性、門脈圧亢進など他の病因を除く。あるいは、少なくとも一回はリンパ球<1000/mm3。ただしステロイドによるもの、薬剤性、感染症など他の病因を除く。 | |
11. | 血小板減少(Thrombocytopenia) |
少なくとも一回は<100,000/mm3。薬剤性、門脈圧亢進症、血栓性血小板減少性紫斑病などの他の病因を除く。 | |
免疫6項目 | |
1. | 抗核抗体 |
2. | 抗dsDNA抗体 |
3. | 抗Sm抗体 |
4. | 抗リン脂質抗体 |
ループスアンチコアグラント陽性、迅速血漿レアギンテスト(RPRテスト)偽陽性、中~高力価の抗カルジオリピン抗体(IgA、IgGまたはIgM)、抗β2-glycoprotein I抗体陽性(IgA、IgGまたはIgM) | |
5. | 低補体 |
6. | 溶血性貧血がなく直接クームス陽性 |
溶血性貧血がない場合の直接クームステスト陽性(Direct Coombs' test in the absence of hemolytic anemia) |
1997年分類基準と比べると、多様な皮疹や神経症状が含まれた。免疫異常の項目を必ず一つ満たすことを条件としている。病因を反映させて低補体の項目が含まれた。また、ループス腎炎の規定を別に設けて独立させている。
臨床項目にある様々な皮疹はどのようなものか内科医には解りにくいものもあり、皮膚科医の協力が必要になろう。びらんを伴うSLEの関節炎が実際存在するため関節炎からは旧基準の「non-erosive」の文言を消している。
尿蛋白はテープ測定ではなくスポット尿、あるいは蓄尿測定が必要となった。血球系異常は溶血性貧血、白血球、血小板の3項目に細分された。自己抗体も抗dsDNA抗体、抗Sm抗体、抗リン脂質抗体の3項目に細分され、抗リン脂質抗体の定義は詳細になった。独立させたループス腎炎は国際腎臓学会(ISN)による組織分類に従う。
本邦のSLE診療の標準化を目指して、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業 自己免疫疾患に関する調査研究(自己免疫班)および日本リウマチ学会の合同で作成され南山堂から出版された。261ページからなる書籍からポイントのみ簡略したが、詳細は同書籍を参考にされたい。A~Dは証拠レベル:A (高い)、B (中)、C (低い)、D(非常に低い)、数字は合意度。
診断 | ACR基準、SLICC基準を参考に臨床症候と検査所見から総合的に行う。小児は「小児SLE診療の手引き」参照。 | 8.8 |
ループス腎炎 | 国際腎臓学会/腎病理学会(ISN/RPS)分類Class III~Vは免疫抑制療法適応。Class III/IVは蛋白尿や腎機能障害と関連、Class Vは治療抵抗性蛋白尿が多い。Class III/IV特にClass III+V/IV+Vは予後不良。 | 8.8 |
ステロイドは生命・腎予後を改善させるが、大量・長期で副作用あり免疫抑制薬を併用し必要最少・最短で投与。 | 8.7 | |
ステロイドはSLEの全般的活動性を考慮し、尿所見と腎機能を定期モニタリングして可能な限り減量。 | 8.7 | |
腎炎寛解の定義は蛋白尿消失と腎機能正常が原則、長期的な正常腎機能保持のため早期寛解導入が重要。 | 8.4 | |
Class III/IV寛解導入:PSL 0.5~1 mg/kg±mPSL pulse+MMF又はIVCY(A)。状況に応じ免疫抑制薬併用(C)。 | 8.6 | |
Class V寛解導入:PSL 0.5 mg/kg+MMF(D)。必要に応じPSL増量(1 mg/kgまで)、IVCY、TAC(D)。 | 8.1 | |
Class III/IV維持:必要最少ステロイド+MMF、場合によりAZP(B)、TAC(C)。 | 8.3 | |
Class V維持:必要最少ステロイド+MMF、AZP、カルシニューリン阻害剤(C)。 | 8.3 | |
腎炎合併は非合併より予後不良、SLEは心血管合併症多く降圧、脂質低下、抗血栓療法など補助療法を。HCQを考慮(C)。 | 8.4 | |
NPSLE | 各病型に応じて画像検査を参考に総合的に診断・活動性評価・治療効果判定。局所症状ではMRI、精神症状ではMRIと一般的な髄液検査を参考に、その他の原因を十分除外して診断・評価する | 8.1 |
寛解導入:高用量ステロイドとIVCYを臨床症候と検査所見から総合的に判断(B)。APSに伴う脳血管障害鑑別に留意。 | 8.5 | |
寛解導入へのRTXは既存治療抵抗性の場合の選択肢(C)。 | 8.1 | |
維持:AZP(D)、又はMMF(D)。 | 8.1 | |
皮膚症状 | 活動性評価にCLASI(cutaneous lupus erythematosus disease area and severity index)を使用。 | 7.7 |
診断困難例はループスバンドテスト(皮疹部や上腕内側の無皮疹部へのIgや補体の沈着)を行う(D)。 | 8.0 | |
部位を考慮して適切ランク(頭部weak、体幹四肢mediumやstrong、手掌足底strongest)のステロイド外用薬(C)。 | 8.5 | |
部位を考慮してTAC外用薬(C)。 | 8.2 | |
重症、広範囲、高活動性はステロイド内服(D)、皮疹のみに対して長期投与せず可能なら速やかに減量中止(D)。 | 8.1 | |
皮膚症状のみの治療に対して外用薬で不十分はHCQ内服(A)。 | 8.2 | |
その他 | 関節炎:NSAIDs、少量ステロイド、HCQ、抵抗性はMTX(B)。MMF、TAC、AZPなど免疫抑制薬(D)、ベリムマブ(B)。 | 8.2 |
漿膜炎:中等~高用量ステロイド(C)、必要に応じIVCYなど免疫抑制薬併用(D)。 | 8.1 | |
溶血性貧血:高用量ステロイド(C)、抵抗例は種々免疫抑制薬(AZP、IVCY、MMF)やRTX(D)。 | 8.2 | |
血小板減少:ステロイドやHCQ(C)。種々免疫抑制薬(AZP、MMF、MTX、CyA、IVCY)やRTX、TPO作動薬、脾摘(D)。 | 8.1 | |
血栓性微小血管症(TMA):TTP(溶血、血小板減少、ADAMTS13活性<10%)では血漿交換とステロイド(C)、TTP以外では血漿交換やステロイド(D)。必要に応じIVCYなど免疫抑制薬やRTXを考慮(D)。 | 8.4 | |
間質性肺炎:急性はPSL 1 mg/kg±mPSL pulse、慢性進行性はPSL 0.5~1 mg/kg(D)。必要に応じ免疫抑制薬(IVCY、MMF)併用(D)。 | 8.1 | |
心筋炎:高用量ステロイド(C)、必要に応じ種々の免疫抑制薬(MMF、IVCY、AZP)併用(C)。 | 8.3 | |
動脈硬化性変化:原疾患加療+喫煙・高血圧・糖尿病・脂質代謝異常など一般的リスク因子の加療。SLEは心血管イベントリスクが高く治療目標設定する(D)。 | 8.5 | |
肺高血圧症:病初期のステロイドやCYを用いた免疫抑制療法(C)。必要に応じ選択的肺血管拡張薬を考慮(C)。 | 8.1 | |
肺動脈塞栓症:肺動脈塞栓症の標準治療に従う。疾患活動性・APS・血管炎の有無を総合評価し追加治療を考慮(C)。 | 8.3 | |
肺胞出血:mPSL pulse、必要に応じIVCY、血漿交換を併用(C)。びまん性肺胞出血は人工呼吸管理含む補助療法も(C)。 | 8.5 | |
ループス腸炎:PSL 0.5~1 mg/kg(C)、必要に応じCYなど免疫抑制薬を併用(D)。 | 8.4 | |
膀胱炎:高用量ステロイド(C)、不十分ではmPSL pulseや種々の免疫抑制薬を併用(D)。 | 8.0 | |
妊娠 | 挙児希望では適切な妊娠前スクリーニングの結果に基づきカウンセリング・情報提供。リスク評価は妊娠前数ヶ月間のSLE活動性・コントロール不良、腎症・高血圧症の存在、APS合併、抗リン脂質抗体陽性。 | 8.3 |
妊娠判明したときは産科・内科で共に評価。流産、子宮内胎児死亡、胎児発育不全、妊娠高血圧症候群、HELLP(hemolysis、elevated liver enzymes、low platelets)症候群、前期破水など妊娠合併症と血栓症リスクが高い。APS合併例、抗リン脂質抗体陽性例では「APS合併妊娠のガイドライン」を参照。抗SSA抗体、抗SSB抗体陽性例は妊娠18週頃から超音波検査で胎児不整脈管理を行い、新生児ループス発症にも留意。 | 8.3 | |
妊娠高血圧腎症とSLE増悪の鑑別は難しいが、経過と各種所見を参考に総合診断する。治療・管理は産科・内科で連携し、双方の病態の治療とモニタリングを継続、適切な時期での分娩を検討。 | 8.2 | |
妊娠計画時にMMF、CY、MTX、ミゾリビンは中止し他剤へ変更(B)。妊娠中の薬物の中心はステロイド、HCQを必要に応じ使用(B)。不十分例はカルシニューリン阻害薬(TAC、CyA)、AZPを考慮(C)。妊娠中の中等~重度再燃時はmPSL pulseやIVIGも考慮。妊娠中・後期ならCYも考慮(D)。授乳中はMMF、CY、MTXは避ける(D)。 | 8.1 | |
モニタリング | 疾患活動性指標、既存病変の推移、新規病変の確認、血清検査を定期的に行い疾患活動性と障害度をモニタリング。 | 8.4 |
SLEは多彩な臓器障害を示し、総合指標と各臓器についての臨床的寛解を評価する。 | 8.4 | |
感染症やステロイド副作用など治療薬剤の合併症も考慮する。 | 8.4 | |
薬 | HCQ:皮膚症状(A)、関節症状(B)、腎症(C)を改善させる可能性あり、それらでは考慮。再発抑制に有用で新規臓器病変抑制や生命予後改善が示唆され全患者で考慮(C)。長期使用で網膜症の可能性あり定期的に眼科診察(C)。 | 8.2 |
IVCY:Class III/IV寛解導入(A)。NPSLE(C)。その他重症病態にも検討(C~D)。CY総投与量増加は重篤合併症誘発の可能性があり注意(B)。 | 8.5 | |
MMF:Class III/IV寛解導入(A)、維持(B)、Class V寛解導入(C)、維持(C)。腎炎以外にも治療抵抗例やステロイド減量困難例に考慮(D)。催奇形性あり挙児可能女性に投与時は避妊指導(B)。 | 8.3 | |
カルシニューリン阻害剤:Class III/IV/V寛解導入、維持(C)。治療抵抗性血球減少やステロイド減量困難で考慮(C)。 | 8.2 | |
RTX:NPSLEなど難治性病態を改善する可能性がありリスクベネフィット勘案して考慮(C)。 | 8.1 | |
ベリムマブ:標準治療でも中等度以上の疾患活動性で追加(A)。しかし、NPSLEや重症ループス腎炎での効果や合併症については十分な検討がない。ステロイド減量を意図して寛解維持療法としてステロイドに併用(D)。 | 8.1 | |
小児 | 小児SLEは円板状皮疹、光線過敏症、関節炎、漿膜炎の頻度低いが成人例と差異は少ない。成人より重篤な可能性もあり、実際に臓器機能予後や生命予後は不良である。「小児SLE診療の手引き」参照。 | 8.1 |
SLE治療は寛解又は低疾患活動性と再燃予防を目標とする。HCQは5mg/kg理想体重をこえない量で全てのSLE患者に推奨され、慢性期ではステロイドを7.5mg以下に減量し、可能なら中止する。免疫抑制剤(MTX、AZA、MMF)併用でステロイドを減量中止が促進される。活動性が持続し腎外病変が再燃する場合はベリムマブ追加を考慮する。リツキシマブは臓器を脅かす難治性病態で考慮してもよい。本改訂では皮膚、神経精神、血液や腎障害など各臓器病変への推奨や、抗リン脂質抗体、感染症、心血管疾患リスクと予防的戦略も考慮されている。(本邦では未承認の薬剤に関してもここでは原著に従って記載した。)(証拠レベル1a~5/推奨グレード A~D)、同意レベル(SD)
1.1 SLEの治療では、可能な限り少ないステロイド量で維持し、すべての臓器で寛解または低疾患活動性(2b / B)、および再燃予防(2b / B)を目指すべきだ。10.0(0) |
1.2 SLEの再燃では、臓器障害の重症度に応じて投与中の薬(ステロイド、免疫調節薬)の増量、他剤への切り替え、追加によって治療することができる(2b / C)。9.95(0.22) |
低疾患活動性とはSLEDAI scoreが4以下(プレドニゾン7.5mg以下か忍容性ある免疫抑制剤の投与があっても良い)であれば障害進行や再燃予防が寛解と同率である。治療では寛解を目指すべきだが、困難な場合は全ての臓器で低疾患活動性になるよう目指す。
ループス腎炎では半年から1年以内に少なくとも部分寛解(尿蛋白は50%以上の減少でネフローゼを脱している、血清Crはベースと比べて10%以下の増加)を目指す。完全寛解(一日尿蛋白は0.5g未満かつ血清Crはベースと比べて10%以下の増加)には1年から2年の治療を要する事がある。腎病変の治療反応性では一日尿蛋白が0.8g以下への減量が尿潜血の残存より重要である。尿蛋白が多い場合や長期罹病では治療に反応しにくく期間を要する。
再燃予防は重要だが再燃の明らかな定義はない。殆どの専門家は治療変更を伴う測定可能な疾患活動性の上昇であると考えている。疾患経過中に再燃はよく見られ、臓器障害や結果の悪化に至る。再燃のリスク因子は若年発症、HCQ未使用、疾患活動性や血清マーカー異常(抗DNA抗体や低補体)の持続などがある。服薬遵守、頻回なモニター、治療最適化などは再燃リスクを減少できる。
2.1 HCQ |
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2.1.1 禁忌でない限り、5mg / kg 理想体重を超えない用量で(3b / C)、SLEのすべての患者にHCQが推奨される(1b / A)。9.65(1.11) |
2.1.2 網膜毒性の危険因子がない場合でも眼科スクリーニング(視野検査および/またはスペクトルドメイン - 光コヒーレンストモグラフィー)は、開始時、5年後、以後は毎年実施されるべきである(2b/B)。9.75(0.70) |
HCQにはSLEにおける多数の有益性の証拠がある。服薬不良がよくあり血中濃度測定が服薬評価に使用できる。長期使用では網膜毒性が懸念され、20年の持続投与により網膜異常の発生率は10%以上になる。主なリスク因子は治療期間(5年毎にOR 4.71)、投与量(毎日100mg投与でOR 3.34)、CKD(OR 8.56)、もともと網膜や黄斑に病変がある場合などである。5mg/kg理想体重での使用であれば網膜症のリスクは非常に低いという証拠があり毎日の投与量はこれを越えないようにする。しかし臨床試験のHCQの有効性は6.5mg/kgで確立しておりこれより低用量での有用性を確認する必要はある。長期の寛解状態では投与量を減量しても良いかもしれないが臨床試験はない。他の抗マラリア薬であるキナクリンは皮膚病変とHCQ網膜症が存在する場合には考慮される。
2.2 ステロイド |
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2.2.1 ステロイドは、臓器病変の種類および重症度に応じた投与量および投与経路で使用することができる(2b/C)。 9.95(0.22) |
2.2.2 メチルプレドニゾロンパルス(通常250~1000mg/日、1~3日間)は即効性があり、経口ステロイド開始量をより低用量にできる(3b/C)。9.85(0.36) |
2.2.3 慢性維持療法では、ステロイドは7.5 mg /日(プレドニゾン換算)未満に最少化し(1b/B)、可能であれば中止する。9.65(0.65) |
2.2.4 免疫調節薬の早期開始は、ステロイドの漸減/中止を促進する可能性がある(2b/B)。9.90(0.30) |
ステロイドは速やかな症状の寛解をもたらしうるが、長期使用で不可逆的臓器障害の副作用があり、中長期目標として7.5mg/日以下に減量あるいは中止するべきだ。7.5mg以上を連用し続けると副作用リスクは有意に上昇するが、7.5mg以下でも有害であるとする臨床試験もある。メチルプレドニゾロンパルス(250~1000mg 3日間)は経口ステロイド開始量を減らし減量を早められる。早期の免疫抑制剤追加はステロイド減量を早め最終的には中止できる。ステロイドパルスはループス腎炎や神経精神SLEのような急性の臓器を脅かす病態に対して感染症除外後にしばしば用いられる。
2.3 免疫抑制療法 |
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2.3.1 HCQに反応しない(単独またはステロイドと併用)、またはステロイドを長期使用時の許容量以下に減量できない場合、メトトレキサート(1b/B)、アザチオプリン(2b/C)またはミコフェノール酸(2a/B)のような免疫調節剤/免疫抑制剤を考慮するべきだ。9.85(0.48) |
2.3.2 免疫調節剤/免疫抑制剤は、臓器を脅かす疾患の場合は初期治療に含めることができる(2b/C)。9.85(0.48) |
2.3.3 シクロホスファミドは、臓器や生命を脅かす重篤なSLEや他の免疫抑制剤に反応しない場合の救援療法として使用することができる(2b/C)。9.90(0.30) |
免疫抑制剤の開始はより速やかなステロイドの減量や再燃予防に寄与する。薬剤選択は主病変、年齢、妊娠可能性、安全性、コストなどによる。多くの経験と比較的安全であることからステロイドとHCQあるいはHCQ単独で不十分な場合はMTXやAZAを考慮するべきだ。既報ではMTXに証拠が多いが、AZAは妊娠を考えるとき考慮される。MMFはループス腎炎や非腎ループス(神経精神ループスは除く)に有効性がある。最近の無作為化試験ではEnteric-coated mycophenolate sodium(EC-MPS)は寛解達成率と再燃減少でAZAより優性であった。しかし、催奇形性(妊娠の少なくとも6週間前より中止)やMTXやAZAと比べて高額であることなどから生殖可能年齢の女性に非腎臓以外の病状での使用は一般的推奨とはなりにくい。CYCはループス腎炎や心肺病変、神経精神病変などの重要臓器を脅かす病態で考慮される。また、難治性の非重要臓器症状に救援治療として考慮される。生殖毒性から生殖年齢の女性や男性には注意しながら使用する。GnRHアナログの併用はCYCに関連する卵巣予備能の枯渇を軽減するため閉経前SLE患者で推奨される。CYC治療前に卵巣凍結保存の可能性についての情報が提供され、悪性腫瘍や感染症などの他のリスクも考慮する必要がある。
2.4 生物製剤 |
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2.4.1 標準治療(HCQとステロイドに免疫抑制薬の併用または非併用)に対する反応が不十分でステロイド減量ができない、あるいは頻繁に再燃し疾患活動性が残る場合はベリムマブ追加を考慮するべきだ(1a/A)。9.20(0.81) |
2.4.2 臓器を脅かす疾患で、難治性あるいは標準的免疫抑制剤に不耐性/禁忌である場合はリツキシマブを検討できる(2b/C)。9.85(0.48) |
SLEにおけるB細胞標的薬の効果を裏付ける証拠がある。ベリムマブは治療効果が不十分(進行中の疾患活動性または再燃の頻発)な場合やステロイドを許容レベル(最大7.5mg)に漸減できない場合は第一選択(通常、HCQとステロイドに免疫抑制剤併用を伴うまたは伴わない)として腎外病変において考慮されるべきである。持続的活動性のある患者はベリムマブの恩恵を受ける可能性がある。より高い疾患活動性(SLEDAI> 10)、ステロイド投与量> 7.5 mg /日、血清学的活性(低いC3/C4、抗dsDNA抗体高力価)、皮膚病変、筋骨格病変、血清学的異常を示す患者が最も反応しやすい。
RTXは無作為化比較試験の否定的結果により、他の免疫抑制剤および/またはベリムマブ抵抗性あるいはこれらに禁忌のある重度の腎臓または腎臓外病変(主に血球障害および神経精神ループス)患者にオフラベルで適応外使用されているのが現状である。SLEおよびITPの両方でRTXが有効性を示しており、重症の自己免疫性血小板減少症および溶血性貧血の場合は除き、原則として複数の免疫抑制剤が不十分であったのちにRTXを考慮する必要がある。ループス腎炎では、RTXは通常、第一選択薬(CYC、MMF)の失敗や再発例に考慮される。最近、LUNAR試験の事後解析により、ループス腎炎におけるRTX治療後の完全B細胞枯渇が78週での高い完全奏効率に関連していることが示された。
3.1 皮膚病変 |
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3.1.1 SLEの皮膚病変の第一選択薬は外用薬(ステロイド、カルシニューリン阻害薬)(2b/B)、抗マラリア薬(HCQ、キナクリン)(1a/A)、および/または経口ステロイド薬が含まれる(4/C)。10.0(0) |
3.1.2 無反応の場合、または高用量ステロイドが必要な場合は、メトトレキサート(3a/B)、レチノイド(4/C)、ダプソン(4/C)、またはミコフェノール酸(4/C)を加えることができる。9.85(0.48) |
皮膚ループスの研究から多くの証拠がある。広域スペクトルの日焼け止めによる紫外線からの保護と禁煙が強く推奨される。非定型や難治例では診断的皮膚生検を検討する必要がある。皮膚病変の第一選択薬は全身性ステロイドの有無にかかわらず局所用薬剤(ステロイドおよび/またはカルシニューリン阻害薬)および抗マラリア薬である。HCQは複数の有益な効果とおそらく網膜毒性が低いためにクロロキンよりも優れた抗マラリア薬である。効果不十分または中毒性網膜症の場合は、キナクリン(メパクリン)を追加または変更で使用できる。キナクリンは現在世界中のいくつかの国で使用できないが、使用可能であれば有用な代替品である。キナクリンの網膜毒性をより新しい高感度スクリーニング技術(視野または光干渉断層撮影)で調べた研究はない。しかし現在の知識では網膜症はキナクリンの副作用と考えられていない。
かなりの患者(約40%)は第一選択薬に反応しない。このような場合はMTXを追加することができる。他の薬剤ではレチノイド、ダプソンおよびMMFまたはEC-ミコフェノール酸がある。ベリムマブやRTXはSLEの粘膜皮膚病変に有効性を示しているが、研究では皮膚病変の検証された活動スコアが含まれていない。 RTXは慢性皮膚ループスでは効力が劣る可能性がある。サリドマイドはさまざまな種類の皮膚病変に効果があるが、妊娠中の厳格な禁忌、不可逆的な多発ニューロパチーのリスク、および薬剤中止による頻繁な再発のため、以前の複数の薬剤で失敗した患者の救援療法としてのみ考慮されるべきだ。皮膚ループスのさまざまなサブタイプの治療アルゴリズムはヨーロッパ皮膚科医グループによる公表がある。
3.2 神経精神病変 |
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3.2.1 神経精神病変がSLEによることの判断が不可欠で、画像診断、脳脊髄液検査、危険因子(SLE発症に関連した症状の種類と時期、患者年齢、非神経性ループスの活動性、抗リン脂質抗体の存在)の検討および他疾患の除外などで診断される(2b/C)。9.65(0.85) |
3.2.2 SLE関連神経精神疾患の治療は、炎症過程を反映していると考えられる症状にはステロイド/免疫抑制薬(1b/A)、およびアテローム血栓性/ 抗リン脂質抗体関連を反映していると考えられる症状には抗血小板/抗凝固剤が含まれる(2b/C)。9.85(0.48) |
神経精神症状がSLE由来と考えるには、しばしば包括的な集学的アプローチで類似病変(感染症、悪性腫瘍など)の除外を必要とし、リスク因子(症状の種類と時期、神経病変以外の疾患活動性、画像異常および脳脊髄液検査、抗リン脂質抗体陽性)や、他疾患を支持する交絡因子を考慮する。
治療は機序が炎症性か塞栓性/血栓性/虚血性かで異なる。前者ではステロイドや免疫抑制剤が考慮され、抗リン脂質抗体が存在する場合は抗凝固や抗血栓療法が好ましい。両機序の区別は臨床診療では容易ではなく、両機序が共存するかもしれない。こうした患者では免疫抑制剤と抗凝固剤抗血栓療法の両方を考慮する。脳血管疾患を伴うSLE患者は、急性期の一般集団と同様に管理されるべきである。免疫抑制療法はNPSLE以外の疾患の抑制に加えて、抗リン脂質抗体や他のアテローム性動脈硬化のリスク因子のない場合や、再発性脳血管イベントにおいて考慮されるかもしれない。画像検査や脳脊髄液検査は免疫抑制剤の使用に根拠を与える。対症療法は症状の種類に応じて適応される(精神病に対する抗精神病薬、不安障害に対する抗不安薬など)。
3.3 血液病変 |
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3.3.1 血小板減少の急性期には高用量ステロイド(メチルプレドニゾロンパルスを含む)(4/C)および/または免疫グロブリン大量点滴が含まれる(4/C)。9.95(0.22) |
3.3.2 維持療法にはミコフェノール酸(2b/C)、アザチオプリン(2b/C)またはシクロスポリン(4/C)のような免疫抑制剤を使用することができる。 9.75(0.62) |
3.3.3 難治性ではリツキシマブ(3a/C)またはシクロホスファミド(4/C)で治療することができる。9.65(0.73) |
SLE患者において抗炎症/免疫抑制治療を頻繁に必要とする血液異常として、血小板減少症および自己免疫性溶血性貧血(AIHA)がある。著しい血小板減少症(血小板数が30 000/mm3未満)の第一選択薬は、中等度/高用量のステロイドとステロイド減量のための免疫抑制剤(AZA、MMFまたはCyAである。CyAは骨髄毒性が最も低い。)の併用である。メチルプレドニゾロンパルスによる初期治療(1~3日)が推奨される。高用量ステロイドに対する反応が不十分な場合や、ステロイド関連の感染症合併症を避けるために、急性期には免疫グロブリン大量療法が考慮される。血小板減少症の治療は通常長時間を要し、しばしばステロイド漸減中の再発がある。ステロイド抵抗性(血小板数> 50 000/mm3に達しない)または再発では、RTXもITPでの有効性を考慮して検討すべきだ。CYCも検討される。トロンボポイエチンアゴニストまたは脾摘は最終選択肢として留保すべきだ。
SLEではAIHAは血小板減少症よりもはるかに少ない。治療はステロイド、免疫抑制剤およびRTXの使用に関しては同じ原則に従う。自己免疫性白血球減少症はSLEで一般的だがめったに治療を必要としない。白血球減少症の他の原因(特に薬物性)を除外するために慎重な検査が必要である。
3.4 腎臓病変 |
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3.4.1 腎病変の兆候の早期認識と腎病変がある場合の診断的腎生検は、最適な結果を確実にするために不可欠である(2b/B)。9.95(0.22) |
3.4.2 効果対副作用比が最もよいため、ミコフェノール酸(1a/A)または低用量シクロホスファミド静脈内投与(2a/B)が初期(導入)治療として推奨される。9.85(0.36) |
3.4.3 腎不全のリスクが高い患者(糸球体濾過率の低下、線維性半月体またはフィブリノイド壊死、または尿細管萎縮や間質線維化の組織学的所見)では、同様のレジメンが考えられるかもしれないが、高用量シクロホスファミド静注も使用できる(1b/A)。9.45(0.80) |
3.4.4 維持療法には、ミコフェノール酸(1a/A)またはアザチオプリン(1a/A)を使用するべきだ。 9.75(0.62) |
3.4.5 安定した/改善された腎機能があるが不完全な腎臓病変(少なくとも1年以上の免疫抑制治療後に持続性タンパク尿> 0.8~1 g /日)では、再度の生検で慢性腎病変と活動腎病変を区別することができる(4 / C)。9.85(0.48) |
3.4.6 コントロールされていない高血圧症や腎生検での高い慢性度指数がなく、および/またはGFR低下がない場合において、重度のネフローゼ症候群(2b/C)や不完全な腎反応(4/C)では、ミコフェノール酸は低用量カルシニューリン阻害薬と併用されることがある。9.50(0.81) |
腎病変リスクが高い患者(男性、若年発症、抗C1q抗体陽性を含む血清学的活動性)は、腎病変の早期徴候を得るため用心深くモニタリングする(少なくとも3ヶ月ごと)。腎生検で診断を確定した後、治療は初期導入期とそれに続くより長期の維持期からなる。MMFとCYCは寛解導入に最適な免疫抑制剤である。低用量のCYC(Euro-Lupusレジメ)は、同等の有効性と生殖毒性リスクが低いため高用量CYCより好まれる。末期腎臓病への進行の危険性と関連する重症ループス腎炎(糸球体濾過率低下、線維性半月体の存在、またはフィブリノイド壊死、尿細管萎縮/間質性線維症)ではMMFあるいは高用量CYCの使用を支持する。尿蛋白の早期の低下(6ヵ月で1 g /日以下、または12ヵ月で0.8 g /日以下)は長期での好ましい腎臓転帰の予測因子である。維持療法としてMMFまたはAZAが使用され、MMFでは再発が少ない。維持療法の治療薬選択は導入期に使用される薬剤と、年齢、人種、妊娠希望などの患者の特性によって異なる。難治性や再発例では、RTXが考慮されることがある。
2012年のループス腎炎に対するEULAR推奨に従い、増殖性ループス腎炎を単独で、または「マルチターゲット療法」(タクロリムスとMMFの併用)でのカルシニューリン阻害剤に関していくつかの研究がある。主にアジア人で行われたもので追跡調査は短く、多民族集団による長期間研究による裏付けが必要である。現在のところ、カルシニューリン阻害剤は3~6ヶ月の標準治療にもかかわらず、主に膜性ループス腎炎、ポドサイトパシー、または難治性ネフローゼ症候群を伴う増殖性疾患における寛解導入療法や維持療法の第二選択薬として考えられている。カルシニューリン阻害剤は単独またはMMFとの併用で使用することができる。小規模な観察研究ではカルシニューリン阻害剤とMMFの組み合わせが標準治療抵抗例に有効であることが示されている。血清Crとカルシニューリン阻害剤の血中濃度をモニターし慢性的な薬物毒性を避ける。
4.1 抗リン脂質症候群 |
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4.1.1 すべてのSLE患者は診断時に抗リン脂質抗体がスクリーニングされるべきだ(1a/A)。 10.0(0) |
4.1.2 高リスク抗リン脂質抗体プロファイル(持続的に中等度/高力価または複数検査が陽性)を示すSLE患者は、特に他のアテローム性動脈硬化性/血栓性因子が存在する場合は、出血リスクとのバランスを考慮した後に、抗血小板薬による一次予防を受けることができる(2a/C)。9.45(0.80) |
4.1.3 二次予防(血栓症、妊娠合併症/喪失)については、治療アプローチは原発性抗リン脂質抗体症候群と同じでなければならない(1b/B)。10.0(0) |
抗リン脂質抗体の存在は、血栓症および産科的合併症、ならびに障害の増加に関連する。抗リン脂質抗体キャリアにおける最近のメタ解析は、SLEを有する抗リン脂質抗体キャリアのサブグループにおける血栓症に対し一次予防の低用量アスピリンの保護的役割を支持している。しかし、出血リスクの観点から、何らかの抗リン脂質抗体を有するSLE患者に適用されるべきか、高リスクのプロファイル(3倍で抗リン脂質抗体陽性、LAC陽性、高力価抗カルジオリピン抗体)を有するSLE患者のみに適用されるべきか明らかでない。抗リン脂質抗体を持つSLE患者は、血栓症の危険性が高い期間(妊娠中または術後)に低分子量ヘパリンなどの追加の抗凝固療法を受けることもあるが、この問題に取り組んだ研究はない。
SLE-APS患者を対象とした研究はこれまでに行われておらず、SLEによる二次性APSを除いた研究が行われており、現在の証拠ではSLEによる二次性APSの治療は原発性APSの治療とは異なるべきではない。APSにおいてリバロキサバンとワルファリンを抗リン脂質抗体トリプル陽性(約21%の患者がSLE-APSを有する)で比較した最近の無作為化非盲検試験は、リバロキサバン群で多くの血栓塞栓症が生じたために早期終了してしまった。SLE-APS患者では二次予防のための新規経口抗凝固薬の使用は避ける。しかし、それらはリスクバランスを考え、ワルファリン使用時のPT-INR制御困難例や、選択された患者(低リスクの抗リン脂質抗体プロファイル、動脈血栓症の既往歴なし)においてワルファリンの代替薬として役立つ可能性がある。
4.2 感染症 |
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4.2.1 SLE患者は、加齢/虚弱性(-/D)、糖尿病(-/D)、腎障害(2b/B)、免疫抑制剤/生物製剤療法(1b-2b/B-C)、およびステロイドの使用(1a/A)など、感染症の一般的および疾患関連の危険因子について評価されるべきである。9.85(0.65) |
4.2.2 一般的な予防策(予防接種を含む)および感染症/敗血症の早期発見および治療が推奨される(-/D)。9.90(0.44) |
SLEの感染症リスクは、疾患の要因と治療の要因の両方に関連する。高用量ステロイド療法、CYC、MMF、RTXはすべて感染症リスクと関連するが、高疾患活動性、重度の白血球減少および腎病変(ネフローゼ症候群±低ガンマグロブリン血症)も独立して感染症に関与する。感染予防は一次予防と早期診断治療の両方に焦点を当て積極的に行うべきだ。SLE患者は、自己免疫性リウマチ性疾患患者の予防接種に関するEULAR推奨に従って予防接種を受けるべきである。季節性インフルエンザおよび肺炎球菌(PCV13とPPSV23の両方)に対する予防接種は、できれば疾患安定期に強く考慮されるべきだ。帯状疱疹ワクチン接種は現在、一般の人々に利用可能だが、SLEでの研究は行われていない。敗血症の迅速診断と治療は不可欠で、この目的のためにクイックSOFA([収縮期血圧≦100 mm Hg、呼吸数≧22 /分、Glasgow coma scale <15の精神状態の変化]:感染早期で2項目以上陽性は死亡リスク増加または集中治療室での長期滞在と関連)などのスコアリングは予後不良の患者を特定できる。
4.3 心血管疾患(CVD) |
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4.3.1 SLE患者は一般的なCVDリスク因子の評価(1b/B-C)とともに、疾患活動性の持続(1b/B)、長い疾患期間(1b/A)、中/高力価抗リン脂質抗体(1b/A)、腎臓病変(1b/B)(特に持続的タンパク尿および/またはGFR <60 mL/min)およびステロイド長期使用(1b/B)などのSLE関連のCVDリスク因子について定期的な評価を受けるべきである。9.85(0.65) |
4.3.2 個々の心血管リスクプロファイルに基づいて、SLE患者は一般集団と同様に低用量アスピリン(2b/D)および/または脂質低下薬(2b/D)などのCVD予防戦略の候補となるだろう。9.85(0.48) |
SLEは、持続的な疾患活動性、ループス腎炎、抗リン脂質抗体の存在、およびステロイド使用など、一般的および疾患関連の両方の危険因子によりCVDの独立した危険因子である。頸動脈プラーク、頸動脈内膜中膜厚(cIMT)および冠状動脈石灰化などのアテローム性動脈硬化症の代用検査は、SLEにおける無症状CVDを同定するために頻繁に使用される。低用量アスピリンは、SLEにおける偶発的CVDのリスクを減らす可能性があるため一次予防として考慮される(1つの後ろ向き研究でHR 0.24)。しかし、最近の糖尿病と高齢者での大規模試験では大出血の危険性によってCVD一次予防のアスピリンの利点が相殺されておりこの点も考慮する必要がある。スタチンの有効性はランダム化比較試験でcIMTがCVDの代用マーカーとして使用され、スタチンはプラセボを上回る明らかな利益を示すことはできていない。スタチンの日常使用はすべての患者には推奨されないが、脂質レベルと他の一般的なリスク因子に基づいて考慮されるべきだ。Systematic Coronary Risk Evaluation(SCORE)を使用して10年間のCVDリスクの計算が推奨されるが、SLE患者では実際のリスクが過小評価されている。
Ⅰ型: 微小メサンギウムループス腎炎 | |
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光学顕微鏡では糸球体は正常であるが、蛍光抗体法ではメサンギウムに免疫沈着物が観察される。 | |
Ⅱ型: メサンギウム増殖性ループス腎炎 | |
光学顕微鏡でメサンギウム細胞増殖(程度は問わない)もしくはメサンギウムに限局した基質の拡大が認められ、メサンギウムに免疫沈着物が認められる。蛍光抗体法あるいは電子顕微鏡において孤立性の上皮下ないし内皮下沈着物がわずかに認められる場合もあるが、光学顕微鏡では認められない。 | |
Ⅲ型: 巣状ループス腎炎 | |
活動性または非活動性、分節性または全節性、管内性または管外性、の巣状糸球体腎炎。病変は全糸球体の50%未満。典型例では巣状の内皮下免疫沈着物が認められ、メサンギウム変化は伴っても伴わなくてもよい。 | |
Ⅲ(A) | Active, 活動性病変(=巣状増殖性ループス腎炎) |
Ⅲ(A/C) | Active/Chronic, 活動性および慢性病変(=巣状増殖性および硬化性ループス腎炎) |
Ⅲ(C) | Chronic, 糸球体瘢痕を伴う慢性非活動性病変(=巣状硬化性ループス腎炎) |
Ⅳ型: びまん性ループス腎炎 | |
活動性または非活動性、分節性または全節性、管内性または管外性のびまん性糸球体腎炎。病変は全糸球体の50%以上。典型例ではびまん性の内皮下免疫沈着物が認められ、メサンギウム変化は伴っても伴わなくてもよい。病変を有する糸球体の50%以上が分節性病変を示すびまん性分節性ループス腎炎(Ⅳ-S)と、病変を有する糸球体の50%以上が全節性病変を示すびまん性全節性ループス腎炎(Ⅳ-G)とに分けられる。 | |
Ⅳ-S(A) | Sで活動性病変(=びまん性分節性増殖性ループス腎炎) |
Ⅳ-G(A) | Gで活動性病変(=びまん性全節性増殖性ループス腎炎) |
Ⅳ-S(A/C) | Sで活動性および慢性病変(=びまん性分節性増殖性および硬化性ループス腎炎) |
Ⅳ-G(A/C) | Gで活動性および慢性病変(=びまん性全節性増殖性および硬化性ループス腎炎) |
Ⅳ-S(C) | Sで糸球体瘢痕を伴う慢性非活動性病変(=びまん性分節性硬化性ループス腎炎) |
Ⅳ-G(C) | Gで糸球体瘢痕を伴う慢性非活動性病変(=びまん性全節性硬化性ループス腎炎) |
Ⅴ型: 膜性ループス腎炎 | |
光学顕微鏡により、あるいは蛍光抗体法ないし電子顕微鏡により、全節性または分節性の上皮下免疫沈着物、もしくはその形態学的遺残が認められる。メサンギウム変化は伴う場合と伴わない場合がある。Ⅴ型ループス腎炎はⅢ型もしくはⅣ型と複合する場合があり、その場合には両者を併記した診断名とする。Ⅴ型ループス腎炎は進行した硬化性病変を示す場合がある。 | |
Ⅵ型: 進行した硬化性ループス腎炎 | |
糸球体の90%以上が全節性硬化を示し、残存腎機能は認められない。 |
推奨度 | |
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level A | 複数のRCTあるいはメタ解析 |
level B | 一つのRCTあるいは非RCT |
level C | 総意、専門家の意見、case報告 |
ACRのSLE分類基準を満たし、持続的尿蛋白>0.5g/dayまたは3+以上、and/or 細胞性円柱(RBC、hemoglobin、granular、tubular、mixed)で定義する。持続的尿蛋白量は随時尿で蛋白/クレアチニン比>0.5でもよい。腎炎の活動性尿所見(非感染症下で>5 RBC/hpf 又は >5 WBC/hpf、又は赤血球円柱か白血球円柱を認める)でもよい。腎生検で、ループス腎炎に矛盾しない免疫複合体による糸球体腎炎を認める場合は確実。
活動性の証拠のある未治療のすべてのループス腎炎患者は、糸球体病変がISN/RPS2003年分類で分類できるよう、強い禁忌がない限り腎生検の実施を推奨する (level C)。このとき、Activity、chronicity、尿細管病変や血管病変も評価できる。特に以下のような場合は腎生検が望まれる。
ISN/RPSの組織分類に基づいて治療が推奨される。
組織分類 | |
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Class Ⅰ | 一般的に免疫抑制療法は必要ない |
Class Ⅱ | |
Class Ⅲ | 大量ステロイドと免疫抑制療法による強力な治療 |
Class Ⅳ | |
Class Ⅴ | 中等量ステロイドと免疫抑制療法 |
Class Ⅵ | 治療に対する反応は乏しい可能性、腎移植の適応を考慮 |
内容 | 推奨度 |
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腎炎を伴う全てのSLE患者にはhydroxychloroquine(HCQ)を推奨する。ループスの再燃が少ないという報告、腎障害が少ないという報告に基づく。(日本では未承認) | level C |
一日尿蛋白0.5g以上のすべてのループス腎炎患者にはACE阻害剤かARBの投与を行うべきである。これらの薬剤は非糖尿病性腎症において尿蛋白を約30%減少させ、血清クレアチニン値が2倍になる時期や末期腎障害への進展を遅らせる。妊娠には禁忌。 | level A |
血圧130/80mmHg以下を目標に治療することを推奨する。こうした目標が腎機能障害進展を遅らせうる。 | level A |
LDL-C>100mg/dlの患者に対してはスタチン製剤を推奨する。GFR<60ml/min、SLE自体が動脈硬化の危険因子である。 | level C |
活動性腎炎、腎炎既往がある場合、妊娠へのリスクについての相談が勧められる。 | level C |
内容 | 推奨度 |
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ステロイド投与とともに、経口MMF(2-3g/day)またはCYC点滴投与を推奨する。MMFとCYCの治療効果は同等と報告されている。MMFによる長期研究はCYCほど豊富ではないが、MMF 3g/日×6ヶ月間、MMFを減量後さらに3年間維持療法で投与する方法で良好な結果が得られている。 MMFは日本では未承認。 |
level A |
MMFは、アジア人は比較的少量のMMFでも効果がある可能性がある。通常3g/日のところアジア人では2g/日投与することでも効果があったとする報告がある。 | level C |
low-dose CYC 点滴(2週に一度500mg点滴を計6回)後、経口azathioprine(AZA)または経口MMFで維持療法 | level B |
high-dose CYC 点滴(月に一度500-1000mg/m2点滴を計6回)後、AZAまたはMMFで維持療法 | level A |
ステロイドパルス(methylprednisolone 500-1000mg/day 3回)と免疫抑制療法の併用は推奨する。その後は、内服ステロイド(0.5-1mg/kg/day)を投与し、必要最少量まで漸減する。ステロイドパルス療法を寛解導入に使用することは主に専門家の意見である。 | level C |
AZAを寛解導入のため第一選択薬として使用することは推奨しない。AZAはCYCよりも寛解導入効果が弱い、再燃が多いという報告がある。 | 推奨なし |
3ヶ月の時点で明らかな悪化の証拠(尿蛋白量や血清クレアチニン値の50%以上の上昇)がない限り、ステロイド用量の変更は除いて、CYCやMMFによる寛解導入療法を6ヶ月間は変えないことを推奨する。CYCかMMFの治療8週間後に尿蛋白量が25%以上改善しC3やC4が正常化した例ではその後の腎炎は良好な経過をたどりやすく、治療6ヶ月後に血清クレアチニン値が低下し一日尿蛋白1g未満であれば良好な長期予後が予測された。MMFかCYCの治療後6ヶ月で重症ループス腎炎の約50%が改善し、12-24ヶ月では65-80%が改善している。 | level A |
MMFの推奨投与量は臨床状況による。細胞性半月体を認めないClassIII/IV、腎生検が出来ない場合でも尿蛋白はあるが血清クレアチニンが安定していればMMF 2-3g/日でもよいと思われる。細胞性半月体を認めるClassIII/IV、尿蛋白があり最近の血清クレアチニン値が上昇している場合はMMF 3g/日が望ましい。
欧州のデータではlow-dose CYCもhigh-dose CYCも効果は同等で、10年の観察での、ループス腎炎の再燃率、末期腎障害率、血清クレアチニン値が2倍になる率も差を認めなかった。重篤な感染症はlow-dose CYCで少なかったため、欧州白人に対してはlow-dose CYCを推奨する。
妊娠希望患者ではCYCよりもMMFが望ましい。CYC点滴は不可逆的な不妊症をおこしうる。CYC点滴で治療された女性が無月経となる率は年齢と関係し、25歳未満で12%、30歳未満で27%、31歳以上では62%であった。MMFには催奇形性があり、MMF使用前には妊娠していないことを確認し、妊娠の6週前には投薬を中止するべきだ。
内容 | 推奨度 |
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ステロイドパルス療法の併用での、CYCかMMFによる寛解導入療法。さらに高用量の経口ステロイド(1mg/kg/日)の併用を推奨する | level C |
組織所見で、半月体を認める場合には半月体形成性腎炎と考える。半月体を認めると予後不良である。
内容 | 推奨度 |
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Class V病変のみで、ネフローゼ患者にはプレドニン(0.5mg/kg/日)とMMF (2-3g/日)の投与を推奨する。 | level A |
MMF2-3g/日とプレドニン(平均27mg/日)6ヶ月間投与は、CYC点滴とステロイド併用と同等の効果だった。6ヶ月の時点でのネフローゼは0-30%であった。他の治療法の報告は推奨にはならなかった。例えば、3群での治療比較の研究で、プレドニン単独(40mg/日から12ヶ月後までに10mg/日まで減量)、プレドニンとCYC点滴(500-1000mg/m2、2ヶ月毎に6回投与)、プレドニンとcyclosporine(5mg/kg)では、寛解率は、プレドニン単独27%、CYC 60%、cyclosporine 83%。一年以降ではCYCがcyclosporineよりも再燃が少なかった。
内容 | 推奨度 |
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維持療法にはAZAかMMFを推奨する。 | level A |
維持療法にはAZAかMMFを推奨する(level A)。ふたつの前向きの試験で寛解導入後の維持療法について検討されている。欧米など複数国で行われた大規模試験で、high-dose CYCかMMFの6ヵ月の投与で寛解導後、AZA 2mg/kg/日または、MMF 2g/日で維持療法を行った。プレドニン投与は10mg以下。3年間の観察期間で、MMFはAZAよりも有意に治療失敗(死亡、末期腎障害、血清クレアチニンの倍増、再燃)が少なく、重篤な副作用はAZAで多かった。ヨーロッパの小規模の研究では、low-dose CYCで寛解導入療法後、維持療法はAZA 2mg/kg/日かMMF 2g/日で行ったところ、4年間の観察期間で、死亡、末期腎障害、血清クレアチニン倍増、再燃といった項目で差を認めなかった。AZA、MMFの減量や中止に関しては特に提案はない。
ステロイド+(MMF or CYC)による6ヶ月の治療が奏功しなかった場合、ステロイドパルス療法(3日間)併用とともに、CYCをMMFへ、またはMMFをCYCへ変更を推奨する(level C)。ループス腎炎が6ヶ月の寛解導入療法後も改善しない、あるいは増悪の場合、CYCとMMFの両者とも奏功しない場合などはrituximab使用の投与もある(level C)。Calcineurin阻害剤の使用に関しては合意に至らなかったが、寛解導入療法や難治性病態での有効性の証拠がある。rituximabに関しての前向き試験ではMMF+ステロイドに、rituximab追加とプラセボ追加の間で1年後に差はなかった。cyclosporineやtacrolimusに関しては前向き研究がある。ある研究では、6ヶ月の治療でtacrolimusはhigh-dose CYC点滴と寛解率で等しかった。他の4年間の前向き研究では、腎炎再燃予防の維持療法としてcyclosporineはAZAと同等だった。
3ヶ月のステロイド+(CYC or MMF)による寛解導入療法でも腎炎が増悪する場合は他の治療法への変更を推奨する(level C)。MMF+Calcineurin阻害剤、MMT+rituximabが試験中で、寛解導入療法が奏功しなかった患者に対しては考慮されるが、まだ強い証拠はない。Belimumab(anti-BLyS/BAFF)はSLE治療薬としてFDAに承認されているがループス腎炎に関しては試験されていない。活動性のあるSLE(SLEDAI6点以上、高度活動性腎炎は除く)でステロイド+免疫抑制剤に、belimumab(10mg/kg/月)追加が検討された。52週の時点でbelimumab投与群はプラセボと比べ高い改善率を認めた。ループス腎炎の評価はされていないが、14-18%で一日尿蛋白2g以上であった。事後解析では53週で尿蛋白と腎炎再燃の減少傾向がbelimumab群であった。治療にもかかわらず血清学的に陽性の活動性SLEに対してbelimumab使用をFDAは承認している。
SLEの腎組織には血管炎、小動脈狭窄を伴うフィブリノイド壊死(Bland vasculopathy)、血栓性微小血管症、腎静脈血栓症などの血管性病変が生じうる。一般的に血管炎の治療はこれまで述べたループス腎炎の治療と同様である。
Bland vasculopathyは高血圧とよく関連するが、SLEか高血圧かどちらが先か明らかでない。血栓性微小血管症は血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と関連しうる。血栓性微小血管症に対しては原則として血漿交換療法を推奨する(level C)。
妊婦のループス腎炎の管理に関しては複数のアプローチを推奨する(level C)。過去にループス腎炎はあったが現在活動性の証拠がない場合は腎炎の治療は必要ない。軽度活動性の場合はHCQで治療してもよい、妊娠中のSLEの活動性が減少するだろう。活動性のループス腎炎があり、明らかな腎外病変の活動性がある場合は活動性を抑える量のステロイドを投与し、必要ならAZAを追加してもよい。高用量ステロイドは高血圧や糖尿病などの妊娠合併症のリスクを増加させる。MMF、CYC、MTXは催奇形性があり避けるべきだ。AZAはMicromedexでカテゴリーDに分類されるが、横断研究にて胎児異常のリスクは低いとされるが、妊婦でのAZA投与量は2mg/kgを超えるべきではない。持続的に活動性があり半月体を伴うClass III or IVのループス腎炎が疑われる場合、28週以降なら胎児の生存のため出産の考慮が推奨される。
SLEに神経、精神障害を伴う病態の呼称に関してはcentral nervous system lupus(中枢神経ループス)、Lupus cerebritis(ループス脳炎)、CNS vasculitis(中枢神経血管炎)、Neurolupus(神経ループス)などの呼称があるが、神経と精神障害を含み、必ずしも炎症を伴わないこともありneuropsychiatric SLE(NPSLE、神経精神SLE)の一般名称が1999年に提唱され、19症状を分類した。
SLEの5%以上で脳血管障害やけいれんが見られるが、重度の認知障害、大うつ病、末梢神経障害などは稀である。NPSLEの既往や抗リン脂質抗体の存在はNPSLEのリスクを5倍以上に上げる。鑑別として2次性精神神経障害としてのステロイド精神病、その他の薬剤によるもの、腎障害による尿毒症、糖尿病性神経障害、心因反応、あるいは感染症などの鑑別が必要であり、場合によっては精神科、神経内科などの専門医の意見も求める。
中枢神経系 |
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無菌性髄膜炎(Aseptic meningitis) 脳血管障害(Cerebrovascular disease) 脱髄症候群(Demyelinating syndrome) 頭痛(Headache) 運動障害(舞踏病)(Movement disorder) 脊髄症(Myelopathy) 発作性疾患(Seizure disorders) 急性錯乱状態(Acute confusional state) 不安障害(Anxiety disorder) 認知障害(Cognitive dysfunction) 気分障害(Mood disorder) 精神病(統合失調症様精神症状)(Psychosis) |
末梢神経系 |
急性炎症性脱髄性多発神経根炎(ギランバレー症候群)(Acute inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy) 自律神経障害(Autonomic disorder) 単・多発単神経炎(Mononeuropathy, single/multiplex) 重症筋無力症(Myasthenia gravis) 脳神経障害(Neuropathy, cranial) 神経叢障害(Plexopathy) 多発神経炎(Polyneuropathy) |
感染症を鑑別するために重要。細菌性、結核性、クリプトコッカス髄膜炎などの鑑別、単純ヘルペス、JCウイルスのPCRを行う。髄液の軽度異常は40-50%でみられるがNPSLEに特異的ではない。また、無菌性髄膜炎、血管炎、横断性脊髄炎などを除いて一般髄液検査では正常を示すことが多い。しかし、髄液中の抗DNA抗体、IgGオリゴクローナルバンド、免疫複合体、IL-6高値、IgG index上昇など、髄液でのB細胞の活性化を示唆するマーカーがみられ、あるいは、髄液中の抗ニューロナル抗体、血清中での抗リボゾーマルP抗体 (MBLで測定可)などの自己抗体検出がNPSLEの診断の補助となる。抗DNA抗体の一部がNR2グルタミン酸受容体(NMDA)を認識して神経細胞を障害し、抑うつとの関連が指摘されており興味深い。
MRIは有効な画像検査で、活動期NPSLEに対する感度は57%。しばしば神経精神症状のない病変をとらえることもある。85名のNPSLEでのMRI画像の報告では、正常(34%)、前頭葉や頭頂葉の白質での点状のT2強調での高信号病変(60%)、灰白質から白質での多発梗塞像(21%)、その他に体積減少(43%)、出血(5%)、コントラスト増強(9%)、diffusion 異常(18%)であった。FLAIRや、diffusion weighted image (DWI)での高信号領域は塞栓症、微小血管障害、炎症性血管炎などの存在を示唆する。MRIが正常の場合でもmagnetisation transfer imaging、SPECT、PET-CTや他の画像検査で情報が得られることがある。
発作性疾患の鑑別に重要。脳症ではびまん性徐波、痙攣や局所神経症状では局所での異常波形が出現しうる。しかし、無症状のSLE患者でも異常波形がみられることがあり、神経精神SLEに対する診断特異性は劣る。
推奨度 | |
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A | 無作為比較試験など強い証拠に基づく |
B | 無作為でない試験など |
C | ケーススタディなど |
D | 専門家の意見 |
NPSLEは、SLEの診断以前や経過後にも生じるが、50~60%は診断後1年未満で、SLEの活動性が存在する時におきやすい(B)。脳血管障害やけいれんが5~15%、重度の認知障害や大うつ、急性錯乱、末梢神経障害は1~5%、精神病、脊髄炎、舞踏病、脳神経障害、無菌性髄膜炎は1%未満である(B)。リスク因子は、SLEの一般的活動性、NPSLE(特に認知障害とけいれん)の既往、抗リン脂質抗体などである(B)。
神経障害、精神障害のタイプよって、腰椎穿刺、脊髄液検査(主に感染症の鑑別のため)、脳波、認知機能の神経精神学的評価、神経伝導試験、MRI画像検査などを実施する(D)。脳、脊髄のMRI検査は通常検査(T1、T2、FLAIR)、DWI、ガドリニウム造影T1を行う(A)。
ステロイドや免疫抑制剤(アザチオプリン、シクロフォスファミド)は、症状(急性錯乱状態、無菌性髄膜炎、脊髄炎、脳神経障害、末梢神経障害、精神病)がSLEと関連する免疫異常や炎症過程に起因するときに適応がある(A)。抗血小板薬、抗凝固療法は、血栓症による脳血管障害などの症状が、抗リン脂質抗体に関連するとき適応がある(B)。抗けいれん薬や抗うつ薬などの対症療法、悪化要因(感染症、高血圧、代謝異常)に対する治療を行う(D)。SLE患者で抗リン脂質抗体が持続陽性、中~高力価のときは予防として抗血小板薬を考慮する(D)。
動脈硬化性/血栓性/塞栓性の脳血管障害はSLEでよく見られる。脳出血は稀で、血管炎による脳血管障害はさらに稀。従って免疫抑制剤の適応は少ない。抗リン脂質抗体症候群の基準を満たす場合、再梗塞の予防に長期にわたる抗凝固療法がなされるべき(C)。SLEの活動性が高い状態以外の脳血管障害のリスク因子として、中~高力価の抗リン脂質抗体、心臓弁膜症、高血圧、高齢が挙げられる。MRI、MRA、CT血管造影などで診断する。
軽~中等度の認知障害はSLEではよく見られる。重度の認知障害は一般的ではないため専門家とともに神経精神学的評価を行うべき(B)。心理的学習支援により認知障害の進行を予防できる(C)。
単発性のけいれんはSLEに一般的にみられ、疾患の活動性と関連する。しかし、けいれん再発は一般集団のリスクと変わらない(B)。MRIや脳波で脳の構造的障害、炎症、代謝疾患を鑑別する必要がある(D)。けいれん後のMRIや脳波で異常がなければ、単発性のけいれんに対する抗てんかん薬の中止を考慮するが、再発性の場合は長期使用を考慮する(D)。疾患活動性がない殆どのSLEでは免疫抑制療法はけいれんの再発予防に対して適応はない(D)。抗リン脂質抗体陽性のSLEでは抗凝固療法を考慮する(D)。
運動障害がみられる場合は対症療法(ドーパミン拮抗剤)に加えて、抗リン脂質抗体陽性では抗血小板剤を考慮する(D)。SLEの疾患活動性が高く、血栓症が見られる重篤なSLEの場合はステロイド、免疫抑制剤、抗凝固療法を考慮する(D)。
SLE以外の疾患、特に感染症を鑑別するために脊髄液検査やMRI検査を行うべき(D)。重篤な場合はステロイドや免疫抑制剤の使用を考慮する(D)。
SLEのみに起因する大うつ病が見られることは比較的稀で、ステロイドに起因する精神病も生じうる(D)。血清検査や脳画像検査が大うつ病の診断に有効であるとういう強い証拠はない(D)。SLEに関連した精神病、とくに疾患活動性があるときにはステロイドや免疫抑制剤を考慮する(D)。
SLEに伴う精神病は妄想、幻覚が特徴的。ステロイド精神病は1mg/kg以上の高用量の使用の場合で10%に現れるが症状は精神病より気分障害が多い。血清抗リボゾーマルP抗体陽性と精神病との関連(感度25%、特異度75%)が報告されている。SLEの活動性があるとき、治療はステロイドと免疫抑制剤(シクロフォスファミドで導入、アザチオプリンで維持)の併用で60~80%有効。2~4週で改善することが多い。難治例にリツキシマブが著効した報告がある。
診断はガドリニウム造影MRIと脊髄液検査で行う(D)。高用量ステロイドとシクロフォスファミド点滴を速やかに行う(A)。再発予防のための維持療法では弱い免疫抑制剤を考慮する(D)。
SLEにともなう脊髄症は急速に生じる横断性脊髄炎として現れるが、虚血性の脊髄症も生じうる。灰白質(下位運動ニューロン)障害症状(弛緩、反射低下)、白質(上位運動ニューロン)障害症状(痙縮、反射亢進)が現れる。白質障害は視神経脊髄炎と関連することが多い。抗アクアポリン抗体陽性であれば視神経脊髄炎の診断の補助となる。横断性脊髄炎の脊髄液は強い炎症所見を呈し、感染症に類似するため抗生剤/抗ウイルス剤の使用を併用しながら、MRIによる確定を待たずに早期に高用量ステロイドを開始することがある。感染症が否定されればステロイドを継続する。ステロイド点滴+シクロフォスファミド点滴も早期に投与されれば有効である。
両側で生じやすく、眼科的評価(眼底鏡、蛍光血管造影)、MRI、視覚誘発電位測定などで診断する(D)。視神経炎と虚血性の視神経障害を鑑別する必要がある。虚血性障害は特に抗リン脂質抗体陽性例で片側性に生じやすい(D)。ステロイド単独、又は免疫抑制剤と併用療法を行うべき(A)。
脳神経障害では内耳神経(VIII)、動眼神経(III)、滑車神経(IV)、外転神経(VI)が障害されることが多く、他に三叉神経(V)、顔面神経(VII)も稀に侵される。脳幹梗塞、髄膜炎の鑑別が必要。
末梢神経障害はしばしば他の神経精神症状とともに生じ、筋電図や神経伝導検査にて診断する(D)。重篤な場合はステロイドと免疫抑制剤の併用による治療を考慮する(A)。あるいは免疫グロブリン大量点滴、血漿交換、リツキシマブなどの使用報告もある。
蛋白漏出性胃腸症は血清蛋白質が消化管から漏出し、著しい低アルブミン血症をきたす疾患で、漏出する病変部位は胃から大腸まで存在しうる。漏出する機構としてはびらんや潰瘍に伴う消化管粘膜の損傷、消化管粘膜の透過性亢進、リンパ管閉塞によるリンパ液の漏出などが考えられている。尿中への蛋白漏出や蛋白摂取不足、重症肝臓疾患による蛋白合成低下などを鑑別除外してから蛋白漏出性胃腸症を疑う。
鑑別疾患としては、悪性リンパ腫、Whipple病(Tropheryma whipplei感染症)、腹部結核、サルコイドーシスなどの腸管リンパ管拡張症をきたす疾患、消化管アレルギー、アミロイドーシス、NSAIDs胃腸症、クローン病、潰瘍性大腸炎などの消化器疾患、三尖弁閉鎖不全症、心房中隔欠損症、収縮性心外膜炎などにより静脈圧上昇を伴う心不全がある。頻度は高くないがSLEに伴う蛋白漏出性胃腸症がある。また、抗リン脂質抗体症候群から門脈血栓症をきたし腸管浮腫から蛋白漏出性胃腸症に進展した報告もある。
SLEに伴う蛋白漏出性胃腸症は、下痢や吐気、体重減少、倦怠感、発熱とともに消化管からの蛋白漏出により浮腫、腹水、胸水、心嚢液貯留などの症状がみられ、血清中ではアルブミン低下以外にガンマグロブリン、フィブリノーゲン、α1アンチトリプシンなどの血清蛋白の低下をきたし栄養低下状態となる。補体低下が見られることがある。腸管からリポ蛋白が漏出すると低コレステロールとなるが、リポ蛋白が漏れない場合は腎臓でのネフローゼ症候群と同様に肝臓でのコレステロール合成が高まり高コレステロールとなる。
消化管粘膜生検では炎症細胞浸潤と腸絨毛の萎縮、粘膜下の浮腫が見られるが血管炎の所見はない。99mTc-ラベルヒト血清アルブミンシンチで消化管での漏出部位を確認する。放射線を用いない方法としてα1アンチトリプシン(α1AT)の腸管クリアランスを測定することでも蛋白漏出を証明できる。α1ATは消化酵素で分解されず、アルブミンと分子量が近い。α1ATクリアランスは「糞便中α1AT濃度mg/g x 一日糞便量g/day/血清α1AT濃度mg/ml」で表される。コントロールでは10ml/day以下であるが蛋白漏出性胃腸症では16.5-218ml/dayと報告されている。
1970年から2001年のSLEに伴う蛋白漏出性胃腸症の症例をまとめた報告では、ステロイドで加療された30例のうち21例はステロイド単独、7例はcyclophosphamide併用、2例はazathioprine併用であった。いずれも治療に反応している。2001年以降のSLEに伴う蛋白漏出性胃腸症48例をまとめた香港の報告では平均年齢41歳、男女比 1対8.6とされている。死亡は1例だった。消化管粘膜は非びらん性の発赤とともに、63%で消化管粘膜固有層に炎症細胞の浸潤を認めている。貧血(96%)、白血球数低下(40%)、リンパ球数低下(35%)、CRP上昇(63%)、C3低下(94%)などの検査値異常頻度が報告されている。99mTc-ラベルヒト血清アルブミンシンチによるアルブミン漏出部位は、小腸(23%)、回腸末端/盲腸(33%)、上行結腸(23%)であった。寛解導入療法として63%がステロイドとazathioprine併用で行なわれ、その他 MMF、cyclophosphamide、tacrolimus、MTXなども使用されている。維持療法は69%がステロイドとazathioprine併用で行なわれた。蛋白尿の存在、過去の免疫抑制剤使用歴がある場合では導入治療の強化が必要となっている。蛋白漏出性胃腸症がSLEの初発症状だった例が44%あり、この場合は導入治療に対する反応性が良いようであった。
分子量の違いから、クリアランス比にして、TransferinはIgGよりも5倍以上、腎排泄され易い(Tf; α分画、IgG; γ分画)。
Selectivity Index (SI) = Clearance (IgG) / Clearance (Transferin)
= { Urinary (IgG) x UV / Serum (IgG) } / { U (Tf) x UV / S (Tf) }
= { U (IgG) / Serum (IgG) } / { U (Tf) / S (Tf) }
とすれば、SIは、1:5よりひらく、すなわち、SI≦0.2が高選択性(正常)である。
SI>0.2は、尿蛋白の選択性の低下を示唆する。
中枢神経系での炎症性蛋白(免疫グロブリン)増加の指標。
IgG index = ( CNS-IgG / CNS-Alb ) / ( serum-IgG / serum-Alb )
と、アルブミン濃度との相対的比較をすれば、IgGのCNS局所での増加(CNS-IgG)は、IgG indexの増加として反映される。
正常は、<0.6であるが、>0.8で中枢神経系でのIgG増加が示唆される。
SLEの活動性によると判断されるものが対象で、薬剤、感染症、不可逆性のもの(骨壊死、皮膚硬化など)は対象としない。
各カテゴリーは、A(重症)~E(既往なし)に評価される(評価の基準は文献参照)。
総スコアは、カテゴリーA:9点、B:3、C:1、D:0、E:0、として合計する。
項目 | 定義 | |
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1 | 発熱 | 体温>37.5℃ |
2 | 体重減少 | 1ヶ月で>5%の体重減少。Lupusによるもので意図的なダイエットや合併症によるものでない。 |
3 | リンパ節腫脹/脾腫 | リンパ節腫脹:直径>1cmのリンパ節を触知 |
4 | 易疲労/全身倦怠/脱力 | 日常の活動が制限される重度のもの。日内変動する傾向がある。 |
5 | 食欲低下/嘔気/嘔吐 | Lupus関連(薬物副作用、感染症などによるものは除く。 |
項目 | 定義 | |
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6 | 斑状丘疹状皮疹-重症、活動性 | 体表面積の>2/9。瘢痕性又は身体障害をきたすもの |
7 | 斑状丘疹状皮疹-軽症 | 体表面積の<2/9。瘢痕性でない/身体障害がない |
8 | 活動性円板状皮疹-全身性、広汎性 | 体表面積の>2/9 |
9 | 活動性円板状皮疹-局所性 | 体表面積の<2/9、深在性狼創を含む |
10 | 脱毛-重症、活動性 | 頭皮の炎症を伴った異常なびまん性脱毛 |
11 | 脱毛-軽症 | 限局性、比較的活動性は少ない、頭皮の炎症がほとんどない |
12 | 皮下脂肪織炎 | 体温>広汎な有痛性紅斑性皮下結節、重層の円板状皮膚病変を伴う |
13 | 血管浮腫(咽頭浮腫) | 生命をおびやかす(喘鳴、舌あるいは口唇を高度におかす |
14 | 広汎な粘膜潰瘍 | 重層、深達性、日常生活に支障をきたすもの |
15 | 小粘膜潰瘍 | アフタ性潰瘍が1つ以上(有痛または無痛性) |
16 | 頬部紅斑 | |
17 | 皮下結節 | |
18 | 凍瘡様皮疹 | |
19 | 爪周囲紅斑 | |
20 | 手指の腫脹 | 損傷の場合は記録しない |
21 | 手指に限局する皮膚硬化 | 損傷の場合は記録しない |
22 | 皮下石灰化 | 損傷の場合は記録しない |
23 | 毛細血管拡張 | 損傷の場合は記録しない |
項目 | 定義 | |
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24 | 意識レベルの低下 | 薬剤、感染症、合併症によるものは除く |
25 | 急性精神症状、せん妄、又は錯乱状態 | 妄想、幻覚、思考錯乱、明らかな非論理的思考、奇妙あるいは緊張性行動を特徴とする現実認識の重度の障害(薬物乱用、原発性精神障害に起因するものは除く) |
26 | けいれん大発作 | 他覚的に認めるもの |
27 | 脳卒中/脳虚血症状 | 急性lupus炎症に起因するもの(動脈硬化、血栓塞栓、低血糖、血管奇形、腫瘍、膿瘍を除く) |
28 | 無菌性髄膜炎 | 急性/亜急性の発現、頭痛、neck stiffness、発熱、髄膜刺激症状、脳脊髄液異常(蛋白上昇、リンパ球優位) |
29 | 多発性単神経炎 | 炎症による複数の神経炎 |
30 | 上行性又は横断性脊髄炎 | 急速に進行する不全対麻痺、四肢不全麻痺、又は感覚レベル低下(髄内/髄外の占拠性病変によるものを除く |
31 | 末梢または脳神経障害 | 急性の対称性の末梢又は中枢性の感覚及び/又は運動障害 |
32 | 視神経乳頭浮腫/綿花状白斑 | |
33 | 舞踏病 | 薬剤性によるものを除く |
34 | 小脳性運動失調 | 他の中枢神経症状とは別のもの、脳幹梗塞によらない。通常、亜急性に出現 |
35 | 重度の持続性頭痛 | 3日以上の持続的頭痛で非麻薬性鎮痛薬では寛解しない(頭蓋内の占拠性病変、及び中枢神経系への感染によるものは除く |
36 | 器質性うつ病 | Lupusに起因。身体症状を伴い、抗うつ剤治療を要する重度のうつ状態 |
37 | 偽脳腫瘍を含む器質性脳症候群 | 代謝異常、精神病または薬物に起因しない見当識障害、記憶障害その他の知的機能の障害。臨床症状が短期に発現し、日内変動する傾向がある。a)集中力及び周囲への関心持続の低下を伴う意識混濁、b)①認知障害:誤解、錯覚又は幻覚、②会話錯乱、③不眠又は日中眠気、④精神運動活動の亢進又は低下、c)失見当識及び記名力低下 |
38 | たまにみられる偏頭痛 | Lupusに起因する再発性の頭痛(通常4-72時間持続) |
項目 | 定義 | |
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39 | 筋炎 | 以下の少なくとも3項目に該当: ・近位筋の筋力低下 ・筋由来酵素の上昇(CPK) ・筋生検陽性所見 ・筋電図異常所見 |
40 | 機能障害を伴う重度の多関節炎 | 2つ以上の活動性関節炎、関節可動域の低下 |
41 | 関節炎 | 1つ以上の活動性関節炎(圧痛、熱感、腫脹)で、可動域の低下を伴わない |
42 | 腱炎 | 運動負荷によるものでない |
43 | 軽度の慢性筋炎 | 上記39の基準の2又は3項目に該当または亜急性の炎症 |
44 | 関節痛 | 炎症所見を伴わない |
45 | 筋痛 | 筋力低下やCPKの上昇を伴わない |
46 | 腱拘縮および固定性変形 | 損傷(damage)の場合は記載しない |
47 | 無菌性骨壊死 | 損傷(damage)の場合は記載しない |
項目 | 定義 | |
---|---|---|
48 | 胸膜/心膜痛 | 呼吸により悪化する限局性の胸痛、圧痛なし |
49 | 呼吸困難 | 労作時呼吸困難 |
50 | 心不全 | Lupus心筋炎、心内膜または弁の非感染性炎症による心不全 |
51 | 心膜/胸膜摩擦音 | |
52 | 心嚢液または胸水貯留 | |
53 | 軽度または間欠性の胸痛 | 非特異的 |
54 | 進行性胸部X線変化(肺) | Lupusによるもの |
55 | 進行性胸部X線変化(心) | Lupusによるもの |
56 | 心膜炎または心筋炎の心電図所見 | |
57 | 不整脈、発熱を伴わない、>100/minの頻脈を含む | Lupusによるもの |
58 | >20%の肺機能低下 | |
59 | 炎症性肺疾患の細胞組織学的所見 | Lupusによるもの |
項目 | 定義 | |
---|---|---|
60 | 皮膚血管炎、潰瘍を含む | 広汎な壊疽及び/または潰瘍形成 |
61 | 血管炎による重度の急性腹症 | 小腸または大腸、胆嚢などにおける画像診断及び/又は生検による診断 |
62 | 再発性血栓塞栓症(脳卒中を除く) | |
63 | レイノー現象 | |
64 | 網状皮斑(Livedo reticularis) | |
65 | 浅部静脈炎 | |
66 | 軽度皮膚血管炎 | 爪周囲や指端の血管炎、紫斑、潰瘍、皮下梗塞、白血球破砕/過敏性血管炎など |
67 | 血栓塞栓症(脳卒中を除く)、初発 |
項目 | 定義 | |
---|---|---|
68 | 収縮期血圧 | |
69 | 拡張期血圧 | |
70 | 悪性高血圧 | |
71 | 尿蛋白定性 | |
72 | 1日尿蛋白 | |
73 | >1g/日の尿蛋白の新たな出現 | |
74 | ネフローゼ症候群 | 尿蛋白>3.5g/day、低アルブミン |
75 | クレアチニン | |
76 | クレアチニンクリアランス | |
77 | 活動性尿沈さ | 膿尿(>5WBC/HPF)、血尿(>5RBC/HPF)、または赤血球円柱 |
78 | 活動性腎炎の組織学所見(3ヶ月以内) | WHO分類による活動性腎炎の所見、硬化性病変のみでは活動性腎炎の所見とみなさない |
項目 | 定義 | |
---|---|---|
79 | ヘモグロビン | Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘 |
80 | 白血球数 | Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘 |
81 | 好中球数 | Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘 |
82 | リンパ球数 | Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘 |
83 | 血小板数 | Lupusに関連のない異常値の場合、その源信を指摘 |
84 | 溶血を示す検査所見 | クームス試験陽性および溶血の所見(ビリルビン上昇、または網状赤血球数上昇、又はハプトグロビン減少) |
85 | クームス試験陽性 | クームス試験陽性のみで溶血の所見なし |
86 | ループス抗凝固因子を示す検査所見 | ループス抗凝固因子、抗カルジオリピン抗体、又は他の抗リン脂質抗体が陽性 |
Weight | Descriptor |
---|---|
Definition | |
8 | Seizure(痙攣) |
Recent onset. Exclude metabolic, infectious or drug cause | |
8 | Psychosis(精神症状) |
Altered ability to function in normal activity due to severe disturbance in the perception of reality. Include hallucinations, incoherence, marked loose associations, impoverished thought content, marked illogical thinking, bizarre, disorganized, or catatonic behavior. Excluded uremia and drug causes. | |
8 | Organic Brain Syndrome(器質的脳障害) |
Altered mental function with impaired orientation, memory or other intelligent function, with rapid onset fluctuating clinical features. Include clouding of consciousness with reduced capacity to focus, and inability to sustain attention to environment, plus at least two of the following: perceptual disturbance, incoherent speech, insomnia or daytime drowsiness, or increased psychomotor activity. Exclude metabolic, infectious or drug causes. | |
8 | Visual Disturbance(視力障害) |
Retinal changes of SLE. Include cytoid bodies, retinal hemorrhages, serious exodate or hemorrhages in the choroids, or optic neuritis. Exclude hypertension, infection, or drug causes. | |
8 | Cranial Nerve Disorder(脳神経障害) |
New onset of sensory or motor neuropathy involving cranial nerves. | |
8 | Lupus Headache(ループス頭痛) |
Severe persistant headache: may be migrainous, but must be nonresponsive to narcotic analgesia. | |
8 | CVA(脳血管障害) |
New onset of cerebrovascular accident(s). Exclude arteriosclerosis. | |
8 | Vasculitis(血管炎) |
Ulceration, gangrene, tender finger nodules, periungual, infarction, splinter hemorrhages, or biopsy or angiogram proof of vasculitis | |
4 | Arthritis(関節炎) |
More than 2 joints with pain and signs of inflammation(i.e. tenderness, swelling, or effusion). | |
4 | Myositis(筋炎) |
Proximal muscle aching/weakness, associated with elevated creatine phosphokinase / aldolase or electromyogram changes or a biopsy showing myositis. | |
4 | Urinary Casts(尿円柱) |
Heme-granular or red blood cell casts. | |
4 | Hematuria(血尿) |
>5 red blood cells/high power field. Exclude stone, infection or other cause. | |
4 | Proteinuria(蛋白尿) |
>0.5gm/24hours. New onset or recent increase of more than 0.5gm/24 hours. | |
4 | Pyuria(膿尿) |
>5 white blood cells/high power field. Exclude infection. | |
2 | New Rash(新たな皮疹) |
New onset or recurrence of inflammatory type rash. | |
2 | Alopecia(脱毛) |
New onset or recurrence of abnormal, patchy or diffuse loss of hair. | |
2 | Mucosal Ulcers(粘膜潰瘍) |
New onset or recurrence of oral or nasal ulcerations | |
2 | Pleurisy(胸膜炎) |
Pleuritic chest pain with rub or effusion, or pleural thickening. | |
2 | Pericarditis(心膜炎) |
Pericardial pain with at least 1 of the following: rub, effusion, or electrocardiogram confirmation. | |
2 | Low complement(低補体血症) |
Decrease in CH50, C3, or C4 below the lower limit of normal for testing laboratory. | |
2 | Increased DNA binding(抗DNA抗体上昇) |
>25% binding by Farr assay or above normal range for testing laboratory. | |
1 | Fever(発熱) |
>38℃, Exclude infectious cause | |
1 | Thrombocytopenia(血小板減少) |
<100,000 platelets/mm3. | |
1 | Leukopenia(白血球減少) |
<3,000 WBC/mm3. Exclude drug causes. |