免疫疾患の解説一覧

筋無症候性皮膚筋炎 Amyopathic dermatomyositis

概念

皮膚筋炎の中には、皮膚症状はあるが筋症状のないamyopathic dermatomyositis(ADM)や筋症状の軽度なhypomyopathic dermatomyositis(HDM)が存在し、合わせて筋無症候性皮膚筋炎clinically amyopathic dermatomyositis(CADM)と呼ぶ。しばしば乾性咳嗽や進行性の呼吸困難感などを伴う急速進行性間質性肺炎を合併し、初期での積極的治療が遅れると予後不良になり注意喚起されてきた。CADM患者から同定された抗CADM140抗体の抗原としてウイルス2本鎖RNAを認識するMDA5(melanoma differentiation-associated gene 5)が同定され、現在は抗MDA5抗体として測定される。CADMの遺伝子解析からはWDFY4の変異との関与(OR=3.87)が報告されている。WDFY4は自然免疫受容体と相互作用しNF-kBへの信号を増強することより、自然免疫系の亢進がCADMの病態の基礎にあると考えられている。

診断

皮膚病変としてGottron徴候、手指の関節の屈側部にみられる逆Gottron徴候、爪周囲の発赤が見られることがある。乾性咳嗽とともに呼吸困難が進行していく。皮膚筋炎を疑う皮膚症状をみた場合は、筋炎の評価とともに抗MDA5抗体検査提出と胸部CTによる肺病変の精査を急ぐべきである。下葉優位の胸膜に沿ったスリガラス状陰影や浸潤影、あるいは局在する斑状スリガラス状陰影が見られるが、小葉内網状影はみられない。線維化の増悪とともに浸潤影は収縮し、拡張した気管支透亮像が明瞭化するfibrosing organizing pneumoniaパターンの間質性肺炎を呈することがある。

治療

症状が軽微であっても胸部CTで急速進行性間質性肺炎が示唆される場合は、専門施設で早期から強力な治療を行う事が救命につながる。専門施設での治療経験では、初期から高用量ステロイド(1mg/kg)とタクロリムス(保険適応)あるいはシクロスポリンをやや高めの血中濃度に設定(タクロリムスでC12=5-10ng/ml。シクロスポリンでトラフ=150ng/ml前後、C2=800前後)して併用する。さらに早期でのシクロフォスファミドパルスの追加も考慮する。血漿交換を追加する専門施設もある。治療反応例では抗MDA5抗体110±30 unit、一方治療反応なしでは357±208unitと抗MDA5抗体高力価や、治療後も抗体が低下しない例では予後不良になりやすい。また、フェリチンが活動性と相関し1600ng/ml以上では予後不良であったとの報告がある。進行した状態からの治療開始であったり人工呼吸器を要するまで悪化すると予後は厳しい。


2018/July