大阪大学大学院医学系研究科
呼吸器・免疫内科学
Department of Respiratory Medicine and Clinical Immunology, Graduate School of Medicine, The University of Osaka
通常大量のグルココルチコイド(GC;プレドニゾロン換算0.75~1mg/kg)から開始し2-4週間維持後、2-3週間隔で10%づつ(もしくは週5~10mg程度)減量する。mPSLパルスも考慮される。早期からの免疫抑制剤メトトレキサート(保険適用外)、シクロスポリン(保険適用外)、アザチオプリン、タクロリムス(多発性筋炎・皮膚筋炎に合併する間質性肺炎に適用)などの併用がGC減量を容易にする。また、治療開始早期から筋力回復リハビリを行う。
治療抵抗症例に対しては、大量免疫グロブリン静注療法を検討してよい。嚥下障害をきたすと筋炎沈静化後も障害が長く続くことがあり、免疫抑制薬の併用、グロブリン投与も含めた早期からの積極的治療を検討する。
悪性腫瘍合併リスクを評価してスクリーニングし、見つかった場合は可能なら先に腫瘍の治療を行なう。心筋障害や間質性肺炎を合併する場合はGCと免疫抑制剤の併用治療を行う。
筋症状に乏しい皮膚筋炎のCADMは抗MDA5抗体陽性で急速進行性の重篤な間質性肺炎を合併することがあり、早期に大量GC、タクロリムス、シクロホスファミドパルス(IVCY)を含む強力な免疫抑制療法を行う。場合によっては血漿交換やJAK阻害剤(TOF)も考慮する。特に抗MDA5抗体高力価とフェリチン高値の場合は予後不良で、救命には元気なうちに治療に慣れた施設への早急な紹介が望ましい。
治療に大量のGCを使用することにより筋量の減少が見られることがある(ステロイドミオパチー)。CK値が正常化、あるいは安定しているにもかかわらず筋力の回復が遅れる、あるいは筋力低下が進行する場合、ステロイドミオパチーの合併に気をつける。長時間作用性のフッ化ステロイドでおこしやすい。この機序による筋力低下はステロイド減量によって徐々に回復する。
厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業自己免疫疾患に関する調査研究班
括弧内は(推奨度、同意度)
| 第一選択薬グルココルチコイド(GC) |
|---|
| 第一選択薬はGC(1,8.9)。PSL換算で0.75~1mg/kg/日で開始(1,8.7)、小児DMでは2mg/kg/日で開始(2,7.9)。3分割内服が一般的。若年性DMではGCとMTX、またはGCとCyA(MTXより副作用がやや多い)を初期から併用する。寛解導入でmPSLパルス(30mg/kg、最大1000mg/日、3日間)を考慮する(2,8.7)。mPSLパルス1コース追加でGC早期漸減に有用の報告がある。GC初期量2~4週後に週に5~10mgの減量を行う。 |
| GC治療でいったん萎縮した筋量が回復することが期待され、一部の症例ではGC中止が可能である。GCの有効性は高齢、間質性肺炎、悪性腫瘍合併、免疫介在性壊死性ミオパチーなどで乏しいことがある。 |
| 免疫抑制剤 |
| GC抵抗性の筋炎、小児筋炎に対して免疫抑制剤を併用する(1,8.8)。また、早期からGC単独ではなくMTX、AZA、TAC、CyA、MMFのどれかの免疫抑制剤を併用する(2,8.8)。GCの早期減量には免疫抑制剤を併用する(1,8.7)。 |
| GC以外に用いる免疫抑制剤はAZA(NUDT15確認、分1~2、50~100mg/日)、MTX(週一日、7.5~15mg)、TAC(分2、トラフ濃度5~10ng/mL)、CyA(分2、トラフ濃度100~150ng/mL)、MMF(分2、500~2000mg/日)、CPA(比較的少ない)である。本邦ではAZA、MTX(保険適応外)、TAC(PM/DMに合併する間質性肺炎に承認)、CyA(保険適応外)がよく使用される |
| 治療抵抗性や再燃時 |
| 治療抵抗性の筋炎の治療に大量免疫グロブリン静注療法を追加する(2,8.7)。 |
| 筋炎再燃時にはGCの増量(0.5~1.0mg/kg)、または免疫抑制剤、大量免疫グロブリン静注療法、生物製剤(RTX、アバタセプト、トシリズマブ、TNF阻害剤)の追加や併用が行われている。TNF阻害剤には薬剤性筋炎の報告があり妥当性は未確定。抗MDA5抗体陽性の間質性肺炎では血漿交換の併用で予後改善の報告がある。 |
| 合併症の治療 |
| 間質性肺疾患にGC大量療法や免疫抑制剤を投与する際、HBV、HCV、結核などのスクリーニング、ニューモシスティス肺炎などの日和見感染症対策を行う(1,8.9)。PCL20mgを超える量で1ヶ月以上使用する場合、ST合剤1錠/日、または2錠を週3回投与が推奨される。免疫抑制が強い場合はサイトメガロウイルス感染症検索を考慮。各種ワクチン接種も推奨される。 |
| 治療開始早期からのリハビリは筋力回復、日常生活動作の改善に有効で、活動期でも安全であり実施する(1,8.7)。慢性期のリハビリは炎症の悪化を伴わず、筋力回復に有効性ある可能性がある(1,8.7) |
| 治療抵抗性の嚥下障害に大量免疫グロブリン静注療法を提案する(2,8.3)。 |
| 間質性肺疾患に対して、GCを基本とし、早期から各種免疫抑制剤(CyA、TAC、AZA、CPA、MMF)の併用を推奨する(1,8.9)。難治性間質性肺疾患に対して血漿交換の併用を提案(2,8.0)。 |
| 心筋障害の合併では高用量GCに免疫抑制剤を含む治療を提案(2,8.5)。 |
| 皮膚症状のみに対しては経過観察やGC外用による局所治療を行う(2,8.1)。著しい皮膚症状にはHCQ、MTX、MMF、CyA、あるいはTAC、IVIG、あるいはダプソンによる全身治療を行う(2,8.5)。 |
| DMの石灰沈着に対して、炎症の完全な制御が基本で、各種抗炎症剤に加え、免疫グロブリン療法、ジルチアゼム塩酸塩、水酸化アルミニウム、ビスホスホネート、プロベネシド、チオ硫酸ナトリウムの投与や外科的治療を提案(2,8.1)。 |
| 悪性腫瘍合併では筋炎の治療を待てる場合は悪性腫瘍の治療をまず試みる(2,8.5)。 |
| システマティックレビュー(推奨度、証拠レベル、同意度)(上記と一部重複あり) |
| 成人のPM/DM治療 |
| GCは内服およびパルスとともに筋炎の筋症状の治療として推奨(1,D,9.0)。 |
| GCとMTXの併用はGC単独と比べ筋症状の治療として推奨(1,D,8.5)。 |
| GCとAZAの併用はGC早期減量効果を可能にする(1,C,8.3)。 |
| DMに対してはGCとAZAの併用よりGCとCyAの併用は早く寛解を達成できる(2,D,8.1)。 |
| RTXはGCや免疫抑制剤に抵抗性の症例に対して有用として提案する(2,B,8.1)。 |
| アバタセプトはGCや免疫抑制剤に抵抗性の症例に対して有用として提案、ただし本邦の治療実態を考慮する(2,C,7.9)。 |
| DMに対してエタネルセプトはGCの早期減量と寛解維持の延長効果があり提案、ただし本邦の治療実態を考慮する(2,B,7.7)。 |
| PM/DMの筋症状に対してインフリキシマブは有用な治療としない(3,C,8.2)。 |
| GC抵抗性の筋炎の治療に大量免疫グロブリン静注療法追加を提案する(2,B,8.7)。 |
| 間質性肺疾患治療 |
| 成人の筋炎に合併する間質性肺疾患はGCを基本とし、早期から免疫抑制剤(CyA,TAC,AZA,CPA)を併用する(1,C,8.9)。 |
| 抗MDA5抗体陽性例では診断早期からGCと複数の免疫抑制剤(TACとCPA)を併用する(2,C,8.6)。 |
| 抗MDA5抗体陽性例ではGCと免疫抑制剤併用に抵抗性に対して、血漿交換併用を提案する(2,C,8.0)。 |
| 抗MDA5抗体陽性例では診断早期からGCとJAK阻害剤(TOF)併用を提案、ただし本邦の治療実態を考慮する(2,C,7.6)。 |
| 抗MDA5抗体陽性例ではGCと免疫抑制剤併用に抵抗性に対して、JAK阻害剤(TOF)併用を提案、ただし本邦の治療実態を考慮する(2,C,8.0)。 |
| 小児のPM/DM治療 |
| 小児のDMの寛解導入としてGCとMTX併用を推奨(1,B,8.8)。 |
| MTX不耐もしくは不応の場合、GCとCyA併用を推奨(1,B,8.6)。 |
| 重症例や難治例ではGCとCPA静注(IVCY)の併用を推奨(1,C,8.2)。 |
| 難治例ではRTXの使用を提案(2,C,8.0)。 |
GC(グルココルチコイド)、MTX(メトトレキサート)、AZA(アザチオプリン)、CyA(シクロスポリン)、TAC(タクロリムス)、MMF(ミコフェノール酸モフェチル)、CPA(シクロホスファミド)